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HOLLOW KNIGHT考察きじ(あごぶろぐ)

ドーモ、あごるんです。
今回はHOLLOW KNIGHT(ホロウナイト)のストーリー考察をしていく。
完全にストーリー・ゲーム内要素のネタバレをやるので未プレイ者は注意されたし。
この記事では

・物語の時系列
・登場人物
・それぞれの謎

について取り扱っていく。
物語の時系列は過去から現在までを。
登場人物はストーリーへ深く関わっている者に絞って書く。
それぞれの謎は……それぞれの謎だ。自分が気になった部分について書いていく。一部のキャラクターの詳細はここに記述することになるだろう。

・物語の時系列

古き光ラディアンスの時代

古き光と呼ばれる、ハロウネストの文明が興るよりもさらに昔に存在した光の神。ラディアンスは蛾の一族(先見者の祖先)を生み、蛾の一族はラディアンスを崇め敬い時を過ごしていた。

ウィルムの誕生とハロウネストの建国

巨大な古代種であるウィルムが誕生。ラディアンスと同じく強大な光の力を持つウィルムに様々な種のムシが心酔し、ウィルムを崇めるようになる。かつてラディアンスから生み出された蛾の一族もウィルムの元へつき、そのことを切っ掛けとしてハロウネストが建国された。蛾の一族は自らを生み出したラディアンスのことを忘れ去り、ハロウネストのムシ達はやがて自らの文明が起源だと主張するようになった。

この時から忘れられた光であるラディアンスはハロウネストのムシたちの夢に干渉し、密かに真実を告げるようになる。

永続性の研究とその失敗

ハロウネストの王ウィルムは自らの王国の永続性を保ちたいがためにムシたちの夢へと干渉するラディアンスの力に目を付け、教師モノホンらと共に研究を始める。ラディアンスの光には生命に不死を与える性質があり、ムシと光を結合することで不老不死を生み出すことが研究の目的だった。しかしその試みは失敗に終わり、ラディアンスの光を浴びたムシは意思を失い、本能でのみ生きる存在になることが判明した。この研究を境にラディアンスの光はムシからムシへと感染し、ハロウネストの文明を脅かす疫病となる。

純粋な器の誕生とラディアンスの封印

ウィルムは凋落を始めたハロウネストを救うためにラディアンスの封印を決意する。その手段を求めるために二つの研究に着手し、ソウルと影についてソウルの師と共に探求し始めた。しかしソウルの師が研究材料であるソウルの力に溺れ、正気を失ってしまったことでソウルの研究を放棄し、影の研究を中心にし始める。ウィルムは影の研究を公にはせず王国の外れのアビスにて夥しいほどの犠牲を払いながらラディアンスを封印するための方法を探し続けた。やがて生まれたのがホロウナイトである。ホロウナイトは死の影を封じ込めた器であり、ラディアンスの持つ光を中和することが可能だった。

ラディアンスの封印は黒卵の神殿にて行われた。ラディアンスをホロウナイトがその内に封じ、さらに監視者ルリエン、獣者ヘラー、教師モノホンの三人が夢見の守護者となり、眠り続けることでラディアンスの封印をより強固にした。ホロウナイトと夢見の守護者の犠牲を悼んで王は四人の像を涙の都へと造った。しかし封印も時すでに遅く、ハロウネストの文明は衰退しつつあった。

ウィルムの失踪とハロウネストの終わり

ラディアンスによる惨劇が起きたことで王国への立ち入りは禁止され、都への門も封鎖された。かつて文明を謳歌していたムシたちは感染により生きた屍となり各地を彷徨くようになり、ハロウネストという地下王国は一つの終わりを迎えようとしていた。生き残ったムシたちは賢王だったウィルムを信仰し全ての献身を捧げることで救いを求めたが、ある日ウィルムは何も言わずに姿を消してしまう。多くのムシが王の救いを求めながらも死に行き、やがて歩く屍たちの一部となった。

やがて滅んだハロウネストにはかつて栄えた都にあると言われる宝を求めて探検家や盗賊、冒険者が侵入するようになった。しかし危険に溢れる地下王国から富を手にして戻ってきた者は少なく、ほんの一握りしかいなかった。

それから長い月日が経ったある時、黒卵の神殿から奇妙な気配が地下へと流れ出した。ラディアンスを封印していたホロウナイトは感染し、封印を抑えきれなくなりつつあった。
古の光が再び地下を満たそうとしていた。

小さな騎士の帰還

ある日、風鳴りの崖から王の道を通って一人の小さなムシが現れる。小さなムシは寂れ果てたダートマウスから井戸を通り、やがて穴の中へと姿を消していった。

・登場人物


・ラディアンス

古の光でありハロウネストの地の創造主。巨大な蛾のような姿をしており、眩い光を放っている。かつてハロウネスト以前の文明はラディアンスを信仰するものであり、各地にその彫像や遺物(神秘の卵など)が遺っている。
かつて自然や蛾の一族を生んだが蒼白なる王ウィルムが誕生したことでやがて忘れ去られ、やがてムシたちの夢にのみ囁くようになった。蛾の一族が夢見の力を持っているのはおそらくラディアンスが由来であると思われる。ラディアンスは忘れ去られたこと、利用されたことへの怒りを感じており封印の中で常に力と怒りを蓄え続けていた。

・ウィルム

蒼白なる者と呼ばれる古代種にしてハロウネストの王。元は巨大なワームのようなムシであり脱皮(死)を繰り返して他のムシと同じような大きさとなった。脱ぎ捨てた殻は未だ王国の外れに灰となって降り注いでいる。
-バードーン-
「あのような古の者にとって死とは更なる変化である」

眩いばかりの光を放つ賢王として様々なムシの一族を束ね、地下王国ハロウネストを建国した。無限に等しいソウルを持つ強大な存在であり、多くの臣民から慕われながら巨大な文明を作り上げた。各地を開拓してスタグの駅で繋げ都を造り、ムシたちから全幅の信頼を置かれる善王と見られていた。
しかしハロウネストの永続性を求めるがあまりラディアンスの光に手を出し、それが発端となって後に王国を滅ぼす疫病が広まり始める。
多大な犠牲を払い生み出したホロウナイトと夢見の守護者を以てラディアンスの封印を行ったが、後に来る破滅を予見していたようでもある。

最終的には自らが座す宮殿ごと強固な夢の世界の中へと転移し、ハロウネストから姿を消した。その肉体は玉座にて朽ち果てている。

・ホロウナイト

ウィルムによる影の研究によって生み出された者。ラディアンスを封じ込める純粋な器、その完成品としてアビスにて生まれた。王の記憶の中にはホロウナイトと共に宮殿で過ごしている一幕があり、周囲には王の子だと通されていた可能性も高い。やがて成長した後に夢見の守護者によって黒卵の神殿へと封印された。その犠牲を悼んで涙の都の噴水にはホロウナイトと夢見の守護者の記念碑が建てられている。しかしその出生の秘密からかそれ以外にホロウナイトについて語る言葉は見つからない。
-レム-
…謎の騎士よ、おまえは何者だ? 
おまえの泉のほかに…なぜ誰もおまえについて語らない?


純粋な器として見出されてラディアンスと共に封印されたが、同時にラディアンスによって汚されてしまい感染に歯止めを掛けられなくなっていた。器が純粋であったために汚染され、その犠牲はやがて無意味なものになりつつあった。

・小さな騎士(主人公)

器の失敗作であり、かつてアビスに打ち捨てられた過去がある。経緯は不明だがアビスから抜け出て、ラディアンスの封印が解かれつつあったハロウネストに現れた。ウィルムの死骸から王の印を手に入れ、自らの運命を受け入れることで虚無の器として完成した。ホーネットの協力の元でラディアンスが封印された夢の世界に赴き、自らの力の源泉であるアビスの影、そしてホロウナイトと共にラディアンスを討ち滅ぼした。その姿は影となり消え、後には割れた仮面だけが残された。

・ホーネット

王であるウィルムと獣者ヘラーの間に生まれた娘。
強い心と力を持ち夢見の術を使うことができる。王の印を守護する役目を担っており、主人公を初めて見た時は力の足りない器がホロウナイトと封印をすげ替えた場合を危惧して実力行使で止めようとしていた。後に主人公が王の印を手に入れたことで実力を認め、ラディアンスとの戦いの際は夢の世界へ導くために助力している。ラディアンスが滅びた後は黒卵の神殿にて目を覚ました。

母であるヘラーのことは慕っていた様子であり、主人公がヘラーを殺害したことを結果的に見過ごしてしまった時には悲しみを露わにしていた。

・白いレディ

女王の庭に住まう者であり、おそらくは女王その人。過去の過ちから自らを拘束しておりその場を動こうとはしない。ただし身体から伸びている根から世界の状況を細かく知り得ているようであり、封印の器であるホロウナイトが弱まりつつあること、そして主人公が為すべきことの知恵を授けた。

・夢見の守護者

監視者ルリエン、獣者ヘラー、教師モノホンの三人。ホロウナイトの封印をさらに強めるため、黒卵の神殿を夢見術で封じていた。ハロウネストの永続性を守るために封印を解こうとする主人公を二度妨害したが最終的にはその肉体の眠る場所を突き止められ、夢の世界の中で消え去った。

三人の中で教師モノホンだけは主人公が封印を解くことを望んでおり、クィレルを遣わせてその助力をしている。

→監視者ルリエン
ハロウネストを尖塔から監視する役目を担っていた。
描写は少ないが王に心酔していた節がある。

→獣者ヘラー
獣と呼ばれるクモの一族の女王であり、本来はハロウネストと敵対していた。王であるウィルムと契約を交わし、多大な犠牲と引き換えに王の子であるホーネットを産んでいる。ホーネットへの愛情は強く、自らが永遠の眠りについてまでラディアンスを封じたのも彼女のためである。

→教師モノホン
かつて王国の書庫にてラディアンスや夢の研究を行っていた。夢見の守護者の一人としてラディアンスの封印に力を貸しつつも、後に封印が破られることを予見しており、その際に主人公へと力を貸すためにクィレルに使命を与えていた。

・ヴェスパ

ハロウネストに存在するハイブ(ハチの種族)の女王。主人公の存在をはじめとしてウィルムが行おうとしていた実験についても知識を持っている。ハロウネストと敵対こそしていないがウィルムの試みには否定的であり、あらゆるものに滅びが訪れることを受け入れなければならないと悟っている。
主人公が為そうとすることに必要な知恵も持っており、女王(白いレディ)との関連性があるのかもしれない。


・様々な謎

ここでは自分が気になった幾つかの謎についてピックアッポしてそれなりに書く。登場人物の欄に書いていない一部のキャラクターについてもここで取り扱う。

→ラディアンスのささやき

ゲーム内でのラディアンスの存在は真ED時のラストバトルにしか登場せず、一言も喋ることはないのでどのような意思を持っていたか? ということが明確にはされていない。しかし、一部のモノローグや登場人物の言葉からラディアンスの意思が読み取れる記述があるので突き詰めて考えていく。

-白いレディ-
早まって器を破壊すれば、歳月によってつちかわれた怒りや力とともに、病が解き放たれることとなるでしょう。

-カタツムリの霊媒師-
あれも哀れな生き物よ… おまえの存在に大いに恐怖したであろう。
かつてはあれも大人しかったのだが、この洞穴に満ちている悪しき空気によって、古の怒りを吹き込まれてしまったのだ。

白いレディやカタツムリの霊媒師はラディアンスの疫病に対して「歳月によってつちかわれた怒り」「古の怒り」と表現しており、ラディアンスが持つ明確な感情についてを言語化している。これが本当ならばラディアンスは忘れ去られたこと、あるいは利用されたことへの復讐心を持っていることになる。さらに自分が重要だと思ったのは水晶山の採掘をしているNPCマイラ。このムシは出会った時は大人しいが徐々に様子が変わっていき、最終的には会話ができないほどに正気を失って襲ってくる。その直前の会話が特に興味深い。

-マイラ-
ああ、折れた釘とともに騎士を埋め、愛らしく蒼白のレディを埋め、
すりきれたガウンを着た司祭を埋め、かがやく王冠をかぶった物乞いを埋めよううう!

マイラが元々歌っていた歌詞は「ああ、青白くやせた母を埋め、固く目をとじた父を埋め、ふたり一組で姉妹を埋め、それが終わったら、わたしも埋めよう!」というもの。マイラはこの歌を徐々に忘れていき、正気を失う寸前では先ほどのように歌っている。この歌詞に登場する人物を当てはめるなら、折れた釘と騎士(ホロウナイト)、愛らしく蒼白のレディ(白いレディ)、すりきれたガウンを着た司祭(ソウルの師)、かがやく王冠をかぶった物乞い(ウィルム)となる。マイラは水晶の光の影響で正気を失っていると思われるが、水晶にはラディアンスの光が宿っているという描写も存在する。これについては後述する。

「かがやく王冠をかぶった物乞い」がウィルムのことを指すとすると、ラディアンスは強い怒りの感情をウィルムに向けていることになる。「物乞い」という言葉はウィルムがラディアンスの不死性のみを求めようとした結果のことだと思われ、ラディアンスが忘れられたことのみではなく利用されかけたことへの怒りを抱いていることが窺える。

→夢と侵略

-バードーン-
我は心を開かれることを好まぬ。それは不安を生む。それは侵略である。
-狩猟者-
もっとも暗い時代には夢の中にそうした思考がよく入りこんだものだ。偽りの希望とわかっていても、それは心の中で魅力的な光を放つものなのだ。

一部のNPCは夢見の釘を使われることへの拒絶感を露わにするが、これはラディアンスが夢に現れてささやいたことで数多のムシを操ったことが理由に挙げられるだろう。ゲーム内でも夢によってささやかれたことで幾つかのムシが正気を失い、それは結果としてラディアンスへと利する結果に繋がっている。ここでは例を幾つか挙げておく。

-夢見の戦士 ゼロ(戦闘前)-
おれの夢の中で、おれの釘はあの病を切り裂く。だがおれは、王にその切っ先を向けたのだ。

-夢見の戦士 ゼロ(戦闘後)-
そうか…そういうことだったのか。王に歯向かう者たちは、その武器を取った時点で破滅しているのだ。
おれは裏切り者などではなく…単なる愚か者だ。

夢見の戦士ゼロは夢の中で病を断っている。しかし、結果として王へと反逆の意思を示したことでゼロは処刑された。これについてゼロは主人公との戦闘後に正気に戻り、何かを悟っている。「その武器を取った時点で破滅しているのだ」「裏切り者などではなく…単なる愚か者だ」この言葉からするとゼロをはじめとする戦士たちは釘を手にとったこと、そして夢を見たことで王へと歯向かった。これは夢見の釘を手にしたが、その夢の力を得たことでラディアンスに干渉され支配されてしまった、ということだと自分は考えている。ラディアンスがウィルムを殺すための尖兵として利用されたのだ。結果的に反逆者によってウィルムが殺害されることはなかったが、複数の死者が出たのは間違いないだろう。

-ソウルの圧政者-
わたしは夢の中で見出した。王国を救済する方法を。疫病を食い止める方法を…答えはわれわれの身体を動かすソウルの中にあった。だが王は…なぜだ!? 彼はわたしがおこなったすべてに反対した…

ウィルムはラディアンスを封じる方法を二つ考えたがソウルの研究は取りやめた。これをソウルの師は非難するが、死後の彼の言葉からするとソウルの師は「夢の中」で王国を救済する方法を思いついている。つまり、既にラディアンスの手の上である可能性が非常に高かった。故にソウルの研究でラディアンスを封じることは出来ないという結論にウィルムは至ったのではないだろうか。ちなみにソウルの師についての狩猟者の一言はそれを裏付けるような内容になっている。

-狩猟者-
ハロウネストのムシたちは自らの身体から汚染を消し去ろうと、ありとあらゆる策略や祈りを駆使したが、どれもうまく行かなかった。あるいはあの汚染はやつらの内部から生み出されたもので、逃げることなど不可能だったのかもしれん。

ラディアンスによって夢の中からソウルを弄られたことで支配されるなら、ソウルを究めることは対抗手段としては逆効果でしかない。実際、ソウルの師はウィルムの助けにはならず死ぬまで発狂したままだった。

-メナシ(戦闘後)-
あなたを恐れてごめんなさい。あなたはいつだって、わたしたちのことを守っていた。わたしたちにあなたが見えないときでさえ。わたしたちを連れていって。光に悩まされない場所に。夢のない場所に…お願い…

主人公との戦闘前は「暗闇から怪物がやってきた」と言っているメナシだが、戦闘後は正気に戻り主人公へ謝罪している。この言葉からするとメナシ達は光(夢)に囚われており、倒されるまで解放されることはないようだ。他の夢見の戦士がこう……ゴーブとかなので詳細は分からないが、夢見の戦士というのはラディアンスに利用されて夢の中に閉じ込められている各地の勇士の霊なのかもしれない。戦闘後に正気に戻るのは夢から解放されたためだろう。

→疫病

古代の病、汚染、疫病……これは全てラディアンスの光のこと。
ハロウネストの死体を復活させている力の正体である。
感染するとまず深い眠りに落ち、精神が崩壊した状態で目覚める。
それから身体の変形が始まる。屍の体内にはオレンジ色の霧が満ちている。
(感染している敵を倒すとオレンジ色のエフェクトが噴き出す)
汚染は生物から生物へと感染し、力と勇猛さを与えると同時に自由意志を奪う。疫病は生命の血を汚染したことで光輝の種が生まれ、それを媒介にして広まっているようでもある。

狩猟者の主観だと汚染は「ずいぶん前」にハロウネストを襲った。
他の記述では狩猟者は奇妙な空気が漂ってきていると言い、それは「何年もの間」にもなる。つまり一度目の汚染はハロウネストが栄華を極めた頃、ウィルムの研究を発端としている。二度目はハロウネストが滅びてからかなりの時間が経過した後。封印が解け始めたことでの汚染のことである。
-ホーネット-
この古びた王国で… 恐ろしいものが目を覚ました。
空気の匂いでわかるのよ。

また、水晶にも似たような力が込められており水晶の影響で蘇ったムシも存在する。
-狩猟者-
あの山にある水晶には不可思議な力が秘められている。あれは暗闇の中で輝き、その輝きは燃えるような熱を含む。また水晶は歌う。

水晶の歌については上述したマイラが歌っており、明らかにラディアンスの意思を含んでいる。これらの関連性から水晶の光はラディアンスのものと同様、あるいはラディアンスの光が結晶化したものと思われる。さらに水晶山の真上、ハロウネストの頂にはラディアンスの彫像が並んでいる。

→王と創造主の地

-王の道の石碑2-
高貴な者よ、これはそなただけに伝える言葉。
これより先、そなたは王と創造主の地に入る。
その敷居を越え、我らの法に従うがいい。
そして目撃者となるのだ。
最後にして唯ひとつの文明、永遠なる王国、”ハロウネスト”の。

王の道にある石碑の一つにこの記述がある。王と創造主の地、という言葉。王を創造主より先に持ってきており、この石碑の主が創造主より王を尊んでいることが理由にあるのではないだろうか。これは普通に考えれば王=ウィルム、創造主=ラディアンスとなる。勿論、ハロウネストの文明の前にラディアンスがあることを考えればこの言葉は正しいのだろう。ではウィルムがハロウネストの地にもたらしたものは何なのか? 

ゲーム開始時にモノホンの詩が流れるが、これには興味深い記述がある。
「蒼白なる眼差しで、あなたは教え、我らを変え、その野生を抑え込んだ。
あなたはムシや獣たちに、彼らが夢にも見なかった世界を与えたのだ」

蒼白なる眼差しはウィルムのこと。ウィルムは教え、ムシや獣たちの野生を抑え込んだ。つまり、ウィルムが現れるまでムシと獣に大きな知性はなかったということになる。少なくともハロウネストの地の中ではラディアンスが生命を作り、次に現れたウィルムが知性を与えたのだ。まるで神話のようでやや信じがたいかもしれないが裏付ける情報もある。

-風鳴りの崖石碑-
高貴な者よ、これはそなただけに伝える言葉。この荒廃した地の広がりに終わりはない。この虚無の中を移動しようと試みる愚か者は、その代償を払い、この王国がもたらす貴重な精神を放棄することとなるだろう。

これは風鳴りの崖にある石碑である。主人公に対しての警告のようだがそもそも荒野の向こうには移動できない。ここでは「貴重な精神」を放棄するとある。つまりウィルムの与えた知性はハロウネストの中にのみ宿る。ただし、他の場所からやってきた生き物がいることを考えると他の場所には他の神、あるいは王がいる可能性もある。あくまで生命と知性の関係はこのハロウネストの地だけで考えると混乱せずに済むだろう。

狩猟者の情報からもわかる通り、ハロウネストのムシたちは元々自らの爪や装甲を頼りに戦い、狩りをしていた。しかし知性を得て文化を手にし、戦わずに生きる方法を与えられたことで脆弱な種族へと退化していっている。知性を持ちながら爪を失っていないカマキリ族などがいることから考えれば知性を与えられたかどうかで退化するわけではないとわかるが、知性は切っ掛けの一つではあるに違いない。

これは教師モノホンのいる場所の資料。ここには「王の光」と「古の光」について記述されている。王の光は「すべて-考える」、古の光は「エッセンス-夢-妨げる-成長」。これはそれぞれの光にある性質についての研究だろう。古の光についてはその通り、成長を止める不死性について。王の光は全てを考えること……つまり知性そのもの。ラディアンスがもたらしたのが生命の光であり、その光から生き物は生まれた。ウィルムはそれらの生き物に知性を与える光を持っていた。故に生まれ落ちた者たちはウィルムの光についていき、ラディアンスは忘れ去られた。この「光」というのは強き存在が生まれながらに持つ権能であり、ムシが光へ引き寄せられる習性と掛けているのだろう。

→白いレディの過ち

-白いレディ-
わたしは自分で、自分を拘束することを望んだのです。わたしはかつて恥ずべきおこないをしました。そしてこの拘束は、それを二度と繰り返さないようにするためです。

白いレディはかつて恥ずべき行いをしたと言い、それには自らを繁殖させたいという欲求が関係していると言う。それは一体どういうことなのか。自分はこれにラディアンスが関係していると踏んでおり、まずは白いレディが何者なのかということから考えていく。まず白いレディはムシではなく植物に見え、「根」と言っていることからもその可能性が高い。そして上述した通り元々のハロウネストに確かな知性がなかったとすると、そこには本能しかない。自然が持つ本能は当然、繁殖である。これに関しては緑の民が残した石碑を参照しておく。

-緑の道石碑-
偉大なる精神は夢見た緑に従い、この洞穴を作り上げた。
あらゆる茂みに、あらゆるつる草に、我らはウヌの精神を見ることができる。緑の子供たちは、夢の中からこの地に歩き出た。

ウヌというのは巨大ナメクジのような生き物であり、一度しか登場しないが遥か昔から生きており緑の民に信仰されていたのだろう。緑の道を生み出したのはウヌということだが、そのウヌはまず「夢見た」ことで洞穴を作り出した。さらに緑の子供たちは、「夢の中」からこの地に歩き出た。夢はラディアンスの本領であり、ウヌを始めとした緑の民は夢に影響されて緑を増やして生きていたことから影響下にあったことは間違いない。ただし、後に緑の民はハロウネストと対立することになる。

蒼白なる者はウィルムのこと。ウィルムは緑の道の先、つまり女王の庭を自らのものだと主張している。これに緑の民は不満げであり、ウィルムは夢を共有しないと言っている。つまりウィルムは自然を増やし続けることには反対的であり、ある種高圧的に一部の場所を開拓した。実際、緑の道には人工的な部分が少ないが女王の庭はスタグの駅が通り、公的な女王の静養所となっている。さて、ここからは想像が多くを占めるので話半分でいい。白いレディは元は緑の民だったがウィルムによる知性を受けたことで繁栄に狂う自らの本能を恥じるようになり、自然を広げ続けることをやめたのではないだろうか。それを切っ掛けにしてウィルムとの関係が生まれ、二人の婚姻が切っ掛けで緑の民も緑へメスを入れて開拓していくことへの批判ができなくなっていった……と考えることもできる。

白いレディは女王になった後、夢や汚染からラディアンスの影響について知りさらに自らの欲求をおぞましい本能だと忌避するようになった、と考えると辻褄は合う。また、緑の民の中でも高位と見える白いレディがウィルムに付いたことで緑の民の影響力は減っていった。これはささやきの根からの推測ではあるが。

-緑の道のささやきの根-
…緑の民は失われた…
…道は荒れ…
…夢は忘れ去られた…

-コケの預言者-
オオオ、輝く者よ、われらは祝福された。そなたの光がわれらに触れる。そなたの温かさがわれらを満たす。
光は命であり、輝き。純粋で、すばらしきもの。
その光をさえぎることは、自然を抑圧すること。
自然は歪みを抑圧し、われらを病でつつむ。光を祝福し、結合を果たすのだ! オオオ…

一部の緑の民の末裔はラディアンスの光に感染しながらもそれを受け入れている。生命として自然に近ければ近いほど元々の本能に拠っているのかもしれない。ラディアンスによる祝福が正しかったかどうかはそれぞれの生物の判断に委ねられているが、悪しき怒りを蔓延させることが目的となった現代のラディアンスが歪み切っていることはこの言葉から分かる。その輝きが「病」だと知りながら逃れられない生物もハロウネストの中にはいるからだ。

・獣(クモの一族)とは?

獣者ヘラーを女王とする暗闇の巣に棲むクモの一族。これらは獣とも呼ばれる。クモはそもそもムシではなく、ムシの捕食者である。そういった意味で獣と呼ばれているのかもしれない。かつて獣たちはハロウネストのムシたちと対立していたが、やがて手を結んだ。

-クィレル 暗闇の巣にて-
ここら一帯が非常に危険な場所であることに疑いはない。
そしてこの巣の奥には村があり、その住民はハロウネストの王を受け入れなかった者たちだという。

なぜハロウネストの王を受け入れなかったのか? この理由は恐らくシンプル。獣たちは元々ムシを捕食する側であり、手を取り合う必要がないのだ。ムシたちの下につく理由がなく、知性を得たとしても戦いをやめる理由はなかった。だが、最終的には獣者ヘラーはウィルムの元で夢見の守護者となり、ヘラーとウィルムは一度きりの契約を交わしている。態度を変えた理由は一つ。ハロウネストではラディアンスによる疫病が発生し、獣の一族にも害が及んだからに他ならない。
-助産師-
わたしの種族は心の病におかされてしまった。
知恵を持つ多くの種族が犠牲になったのよ。

-レム 放浪者の日誌5を売却時-
またしても放浪者の日誌か? こいつは伝統的な石板型だな。文字がはっきりと残っている。その凋落がはじまったころ、この都は石板をやめて、クモの糸で作った紙を用いるようになったのだ。

ハロウネストの凋落の理由はラディアンスの疫病。そして疫病が流行ったタイミングとクモの糸を用い始めたタイミングは合致している。獣たちは精神を蝕む疫病から逃れるためにウィルムの叡智を求め、両者の関係が始まった。更に隠されてはいたものの暗闇の巣にはスタグの駅が通っている。

・獣者ヘラーとウィルムの契約

-助産師-
この上にある村は、悲しい生き物の住み処になってるの。悲劇的な取引がおこなわれ、彼女と彼女の民は大きな犠牲をはらった。でも彼女自身はそれを後悔していないようね。
-獣者ヘラー-
…ひなのために…子のために……妥当な取引はなされた……
すべてをささげ……彼女のために…

獣たちの女王であるヘラーはかつて拒絶したウィルムへと取引を願った。その内容は悲劇的とされ、ヘラーとその民が大きな犠牲を払っている。そして取引の結果としてウィルムとヘラーの娘であるホーネットが生まれた。
-白いレディ-
王が取引の一環としてあの情事をおこなったことを、わたしは恨んでいません。むしろ、その結果生まれたあの子に対しては愛情すら覚えたほど。

取引の対価がホーネット、つまりウィルムとの娘であることは確実。これはムシの王であるウィルムをヘラーが愛していた、ということではなく優れた血を遺すためのヘラー自身の判断だと思われる。古代種であるウィルムは無限のソウルを持つとされ、実際に生まれてきたホーネットは強大な力と心を持っている。しかもカワイイ。では、ヘラー側が払った大きな犠牲とは? これはヘラーの民が払ったという所に焦点を合わせれば見えてくるように思う。獣たちとウィルムが手を組んだのは王国の凋落が始まった後、つまりウィルムは既にラディアンスを封ずるために奔走していた。それに関係しているとすれば、ウィルムの研究に関係しているとしか思えない。

ソウルの研究にも大量の犠牲を出したが影の研究を行ったことでアビスに降り積もった影、そして壊れた器の数は数えきれないほどだった。これらがヘラーの民の成れの果てだったとしたら? ヘラーは大量の犠牲を払い、アビスの研究に貢献した。この結果完成したのがホロウナイトであり、夢見の術を持っていたヘラーはそのまま夢見の守護者として眠りにつくことになる。ヘラーは自らの娘であるホーネット、そして後に生きるクモの民たちを守るために大量の犠牲と、自らに永遠の眠りを強いた。これが答えではないだろうか。

・カマキリの一族と造反者の出現

-クィレル 胞子の森にて-
だが彼らは決して狂暴なだけの存在ではない。この空気に含まれる病は弱い獣の心をくもらせるが…彼らはそれに抗っている。彼らは自らの知性と誇りを維持している。そしてその過激な伝統もな。

カマキリの一族は誇りを重んじ、精神の強さを以て疫病へと抵抗し続けている。ハロウネストとカマキリは反目しあっていたが停戦協定を結んでおり、その内容は「獣の侵入を防ぐ」ことである。ハロウネストが既に滅びた今もカマキリの一族はそれを守り続けている。その証拠に暗闇の巣とカマキリの里の境には獣たちの死骸がうず高く積まれている。

カマキリたちは現在も文明を維持しながら生き続けており、主人公が長に勝つと全員がその力を認めて礼儀を払ってくれる。ちなみに汚染されてもおらず、倒してもオレンジ色の霧が噴き出さない。しかし、カマキリの一族からは過去に造反者が出ており、一部のカマキリは造反者の長へ付いて里から出ていった。この者たちは汚染を自ら受け入れることでさらに強大な力を得ようとした。造反者の長はかつてカマキリ族の長の一人であり、姉妹たちと敵対して退位させられている。ちなみにカマキリの長の座は一つ壊されており、かつての名残が窺える。造反者たちは後にハロウネストへの対抗勢力となったが、これについては後に記述する。

ちなみに夢見の戦士の一人である長老フーはカマキリの里へと感染を持ち込んだ本人かもしれず、その際にあった出来事について語っている。
-長老フー(戦闘前)-
この下に潜むあのムシたちもそうだ。
あれもかつてはおまえのように誇り高き存在だったが、いまでは単なる怪物と化してしまった。

-長老フー(戦闘後)-
思考が…晴れた。われわれは…眠っていたのか?
ああ…思い出した。あの誇り高き長たち…かれらはほんとうに怪物だったのか? かれらの眼を覚えている…明るくてはっきりしていた。ならばなぜわたしはかれらを恐れたのだ? あの村に狂気が存在したとすれば、それをもたらしたのはこのわたしだ。わたしが追放されたのも当然のことだ。
わたしが攻撃したとき、かれらは当然ながら…当然ながらわたしを殺した…

長老フーは疫病に感染した者の世話をするために各地を回っており、その間に感染したものと思われる。おそらくは自らの感染に気づかないままカマキリの一族の住処を訪れ、狂気に囚われて攻撃し、返り討ちにあって死んだ。その際の記憶は曖昧であり、戦士として倒された後に正気を取り戻している。カマキリの一族とは言っていないが、誇り高い長たちという言葉や胞子の森で死んでいることからカマキリの里に訪れたのは間違いないだろう。フーの言葉から分かるのはラディアンスの光を浴びた者は感染していない者を敵視するようになるということだ。そして感染したフーがカマキリの里を訪れたことで造反者の長や他のカマキリへと疫病が伝染していった可能性も高い。

・ハロウネストの五騎士とその戦い

-レム ハロウネストの紋章を売却した時1-
ハロウネストの紋章か? そいつは興味深い。王国にいた五体の偉大な騎士については知っているか? 彼らはハロウネスト中で敬われており、王国の年代史の中でもしばしば言及されている。個々ではなく、ひとつの集団としてな。個々の名前や外見などは、歴史から消された状態だ。
-シオ-
おれのお気に入りはいつだって”力の”ヘゲモルだった。ものすごくでかくて、しかしその身体に似合わず話し方はおどろくほど穏やかだった。もちろんほかの騎士だってそれぞれに大したもんだったがな。”烈火の”ドライヤ、”優しき”イズマ、”神秘の”ゼ=メール、それと…残りの1体もな。

ハロウネストには伝説的な五人の騎士が存在し、王国を守護していたという。ただしレムの言葉からすると長い歴史の中で既に姿を消しており、滅び去ったハロウネストの中で五騎士を知る者は限りなく少ない。彼らはどこに行ったのか? あるいは何があって死んだのか? 一人ずつ書いていく。

ちなみに五騎士の姿は明らかにされていないが、純白の騎士との戦いで純白の騎士を囲んでいる四人の戦士の姿形から特定できるようになっている。

→"力の"ヘゲモル

ヘゲモルは見た目だけで言うと偽りの騎士という忘れられた交差路で最初に戦う巨体のボスの姿だ。あの大鎧は実のところヘゲモル本人の装備であり、中に入っていたマゴットという最弱の種族が動かしていた。マゴットはヘゲモルの寝込みを襲って彼を殺害し、鎧を盗んだ。その際のマゴットは感染によって正気を失っていたことが狩猟者の言葉から分かる。

→"烈火の"ドライヤ

ドライヤは女王の庭、白いレディが住んでいた建物の前で朽ちている純白の騎士だ。ドライヤの前には造反者のカマキリたちの死骸が連なっており、白いレディを守るために戦って散ったことがわかる。

→"優しき"イズマ

イズマは王家の水路の奥、イズマの森で朽ちている。イズマの森に繋がる場所にはオグリムの似顔絵が描かれた看板があり、夢の釘を当てた時の言葉もオグリムへの言葉となっている。両者は親しかったようだ。
-イズマ-
…オグリム…時間がない…

→"神秘の"ゼ=メール

ゼ=メールは繊細な花イベントの依頼者である灰色の哀悼者その人だ。ゼ=メールには愛する者がいたがそれは造反者の長の子であり、造反者と敵対しているゼ=メールは墓に参ることすら望めなかった。そのためにゼ=メールは主人公へと花を託している。ゼ=メールは花を手向けた後に満足し、この世を去った。このことからゼ=メールは既に死亡していたという可能性は高い。

→"純白の"オグリム

王家の水路を根城にしているフンコロ騎士の真の名であり、五騎士の唯一の生き残りである。オグリムはイズマの眠る森へ繋がるバルブを守護しているのか侵入者を撃退し続けていた。後に夢に囚われるが主人公が夢の世界で五度倒すことで覚醒し、かつての栄光について主人公へ語り聞かせる。その後は主人公の像をフンで造り、姿を消した。

これまでの記述を見れば分かる通り、オグリムと灰色の哀悼者以外はそもそも主人公と会話すらしないので影が薄い。また五騎士が生きていた時代からかなり時が経っているようであり五騎士についての情報自体がまず少ない。では五騎士は一体、衰退していくハロウネストの中で何をしていたのか? それは僅かな情報をかき集めることでようやく想像の余地が生まれる。

-マイラ-
ああ、折れた釘とともに騎士を埋め、愛らしく蒼白のレディを埋め、
すりきれたガウンを着た司祭を埋め、かがやく王冠をかぶった物乞いを埋めよううう!

これはマイラの替え歌だが同時にラディアンスの意思でもある。そして実のところ、ラディアンスは静かに目的を達成していっている。
折れた釘と騎士、つまりホロウナイトはラディアンスの汚染でやがて限界を迎える。すりきれたガウンを着た司祭、ソウルの師はソウルに呑まれてウィルムの信頼を失っている。こうしたラディアンスの敵意が的確に感染した者に伝わる場合、疫病が形となって標的を狙うことは夢見の戦士ゼロの部分で判明している。ウィルム本人も部下などを用いて命を狙われた以上、白いレディも勿論狙われて当然だ。そして白いレディを守って死亡したドライヤがその証左となる。造反者のカマキリたちは感染し、ラディアンスの意思を埋め込まれている。それこそがカマキリたちが女王の庭へと移り住んだ理由であり、それ故に五騎士の一部は造反者と激しい戦いを繰り広げたのではないだろうか。

ゼ=メールの愛していた者も造反者の子である。造反者の子が感染していたのか、あるいは感染に抗う一匹のカマキリだったが何かを理由に殺され、その死体が造反者たちが暮らす女王の庭へと埋められていたのかは分からないがここにも大きな確執がある。五騎士のうち二人が造反者との因縁を持つ以上、全くの無関係ではないだろう。少なくともドライヤとゼ=メールの二人は造反者のカマキリと戦う使命を持っていたのだ。

またヘゲモルは感染したマゴットによって殺害されている。マゴットは最弱のムシとしてハロウネストで奴隷のようにこき使われており、その恨みもあっただろうが感染しているという事実を踏まえるとラディアンスによる五騎士の殺害のため、マゴットは意思を支配されていた可能性がないとは言えない。これについてはやや迂遠なので断言まではしないが。
イズマとオグリムについては詳細なことはわからないが、イズマはオグリムへと「時間がない」と言っている、あるいは伝える必要があった。王家の水路の奥、イズマの森で死んでいたことをラディアンスを繋げる材料はないが、イズマとオグリムは逼迫した状況下にあったことは確かだ。語る情報が少ない故にこれまで自分が書いたことは憶測ばかりだが、五騎士は王国の激動の中、間違いなくラディアンスの陣営と戦ったことで姿を消していった。これは間違いないだろう。

・クィレルの使命

-クィレル-
拙者はずっとこの土地に惹かれていた。驚きと恐怖にみちた、様々な物語を耳にしていたのでな。そしてついに我慢ができなくなり、おのれの目で確かめることにしたというわけだ。

主人公と各地で会うことになる放浪者クィレルは探索と謎に興味を惹かれて地下へ降りたと言っていたが、実際は教師モノホンの封印を解くという使命を持ち、かつての記憶を無くしながらも霧の谷へと向かっていた。クィレルの言葉遣い「拙者」「そなた」は滅び去る前の古い時代のものだ。クィレルは各地でかつての記憶を少しずつではあるが取り戻している。しかし、なぜ彼が記憶を失くしていたのか? それは判明していないが一つ仮説はある。

-老いたムシ-
気をつけるがいい。あそこは不快な空気で満ちている。生き物は正気を失い、放浪者はその記憶を盗まれる。夢なんて本当は見ないほうがよいのかもしれん…
-クィレル 涙の都にて-
拙者もまた、この場所にひきつけられてやってきた。だが今こうしてここに座って眼下の都を見下ろしながら、下におりることをためらう自分がいる。拙者をひきとめているのは恐怖か、それとも別のなにかなのか?

そもそもゲーム内で生きた「放浪者」を見ることは少ない。これが当てはまるのは精々、クィレルかスライくらいのものだろう。生きて放浪する者は記憶を盗まれる。さらに使命を持つクィレル自身は下へと導かれつつも抵抗感を覚えている。これもまたラディアンスの存在に因るところだと見るのが自然だ。ラディアンスがクィレルを妨害していた……と考えるよりは知性を持つ存在全てを害そうとしていた、と考えるとより深く納得できるかもしれない。

クィレルはモノホンの顔を仮面として身につけ、やがて主人公が封印を解くための手助けをした。クィレルによれば主人公と同時に霧の谷に到着したのは偶然ではなく、モノホンによる導きがあったという。だとしたら、それは主人公に対しても言えることかもしれない。アビスから脱出してハロウネストへ戻ってきた主人公を陰ながら導いていたのがモノホンだとすると、幾つか辻褄が合うこともある。主人公に関しては謎が多いので確証はないが、少なくとも封印を解こうとする者の出現を予見していなければクィレルが使命を与えられることもなかったはずだからだ。あるいは、予見をしたのはウィルム自身なのかもしれない。

・ホーネットの役割

-ホーネット-
あなたが誰で、なにをしようとしているのかもわかっている。でもそれを許すわけにはいかないわ。

ゲーム内で初めて登場したホーネットは緑の道で主人公と出会った。この時のホーネットは強く主人公を敵視しており、理由は主人公が器の一つだからだろう。ホーネットは元よりホロウナイトによる封印が始まるより前に生まれ、実験のことを知り得ていた。ゲーム序盤の主人公を見て、勝手に動き出した器が封印を破り、ホロウナイトと自らを置き換えようとしているのだと判断したのではないだろうか。封印の置き換えは失敗する可能性があり、その場合はラディアンスがそのまま解き放たれてしまう。特にホロウナイトよりも弱い器なら現状を維持することもできない。その危惧がホーネットを主人公と敵対させた。だが何度かの邂逅のうちにホーネットは主人公を認め、王の印を手にすることを認めた。

-ホーネット-
その自信があるならばやりなさい、ハロウネストの亡霊よ! 先に進み、身体にあの印を刻み、王を名乗るがいいわ。
-助産師-
あなたには関係を示唆する明るい印がついているわね。つまりあなたは彼女に会ったということ? 印を守護するあの、”性を持った子”に?

助産師の言葉、そして王国の外れでの戦いの後の行動から見るにホーネットは王の印を守護する役目を持っていたのだろう。王の印はアビスへの鍵であり、恐らくはそれ以上の意味合いを持つ。ウィルムの娘であるホーネットが所持しても意味のない物であり、主人公にこそ与えられた何か意味があるのだろう。とはいえここでは深く掘り下げはしない。

ホーネットの母であるヘラーは夢見の守護者であり、クモの一族は元から夢に関する力を持っていた。ホーネットもその力(あるいは技術)を受け継いでおり、ホロウナイトとの戦いで仮面を割って主人公を夢の世界へと導いている。また、クモの糸を戦闘にも活用している。ここからは想像でしかないが自分はホーネットが蜂の女王であるヴェスパと何かの関係があったのでは? と考えている。これは本当に安直な発想だが「ホーネット」という名前からだ。また、ヘラーと過ごした時間が少ないということはホーネットを育てた誰かがいる、ということ。助産師はホーネットと疎遠になったと言っているので育ったのは暗闇の巣ではない。白いレディ……に関してもやや他人事のように話しているので、これは意外と本当にヴェスパがハイブで育てたという説も推している。

・ムシたちの寿命

-レム-
ワシの店はすばらしいだろう? ワシは決してここを不法占拠しとるわけじゃないぞ。ワシが来たとき、この場所はもぬけの殻で、塔の所有権を主張する者は誰も生きていなかったのだ。

-エミリシア-
わたしの昔の知り合いには会ったかしら? 外にいる連中のことよ。思考もなにも失って、ただ身体を引きずって歩いてる。わたしはこうしてまだ生きながらえて、かれらの哀れな様をながめているというわけ。

実のところ、ハロウネストのムシたちの寿命というのはよくわからない。ダートマウスに暮らす老いたムシがハロウネストが廃墟となって久しいと話すその一方でエミリシアやホーネットは当時から生き続け、見た目からは老いた様子も見せない。また五騎士に関しては過去の伝説となっていてハロウネストが滅亡してから知っている者は限りなく少ないという。にも関わらず五騎士を見たことのあるシオが未だ生き続けており、どころか五騎士本人であるオグリムも当たり前のように生きている。これは一体どういうことなのか? 二つほど説を挙げてみる。

1.ハロウネストの永続性
ハロウネストには度々、「永続性」という言葉が出てくる。ウィルムはムシたちに不老不死を与えようとして実験を行った。全てのものがいつか滅びるという理を超越しようとしたのだ。この永続性による恩恵がハロウネストにはあり、かつての文明を生きていたムシたちは知らないままにその恩恵を授かっている故に老いることがない……筋道としてはおかしくないが、ラディアンスの光から不死性だけを抜き出すことができなかったからこそ実験は失敗したはずだ。なのでこの説は恐らく間違いだろう。

2.種族ごとに寿命に大きな開きがある
自分の本命はこっちだ。ダートマウスの老いたムシやレムが明らかに戦闘もできなそうな物腰なのに対し、生き残っている者はピンピンしている。つまりムシの中にも種族として短命か長命かどうかの違いがあり、その差でしかない。ムシとしての強さやソウルが影響するのかとも考えたがエミリシアがただの貴族であることからすると彼女の種族そのものが長命なのだろう。

また、ムシたちの時間感覚は恐らくその寿命で大きく違う。狩猟者はハロウネストが滅びる前の出来事を「ずいぶん前」などと曖昧な言い方をしている。ただしその一方では「何年か前から」と我々と同じような年の感覚も持ち出している。一般的な年数としてハロウネストの出来事を割り出すのはまず難しいだろう。これらの事柄から分かることは一部の種族に関しては不老にほど近い性質を持っていたということだ。まず王であるウィルムからして恐ろしい年代に渡って生きており、死すら変化でしかないと語られている。とはいえ老いるムシがいた以上、不老不死をハロウネストの全ての民へと与えたかったという理由は分からなくはない。

・ソウルとカタツムリの一族

-クィレル 水晶山にて-
水晶には、ある種の力が含まれているという。
とはいえ、かつて都の民がつかさどったソウルほど強力ではなく、命を落とす危険もずっと少ないようだが。

ソウルとはつまり生き物の魂のことだ。古代種であるウィルムは無限に近いソウルを持っており、それほどではなくともムシたちは誰もがソウルを持っていた。その力は確かに強大だったが、夢に干渉してささやくラディアンスの影響によってソウルの道を追い求めた者たちは発狂し、命と姿をなくした。ちなみにソウルの聖域の資料にはこんなものがある。

-ソウルの聖域資料1 記録:アバ-
その精神は依然として我らの足かせとなる。いかにしてその拘束より離脱できるのか? 純粋なるフォーカスを得ることなど可能なのか?

これが何のことなのかはわからないが「精神」がウィルムの光によってもたらされたものであるなら、知性を捨てることでしか純粋なるフォーカスを得られないことになる。つまるところ本末転倒を意味する。

-カタツムリの霊媒師-
オホ! 暗闇から忍び出てきたおまえは一体何者ぞ? なんと陰気な見た目よの! 奇妙でうつろな顔に、よく切れそうなその武器! おまえは重要ななにかにみちびかれ、ハロウネストの亡骸へとやってきた。それがなにかは訊くまい。おまえがここに来たのは、私の助けがほしいからか?

夢見術が蛾の一族やクモの一族に伝わっているようにカタツムリの一族はソウルを用いた魔法を伝承しており、ゲーム序盤で主人公に復讐の魂を伝授した。霊媒師からは他のカタツムリの話も聞くことができるが、それらは主人公が魔法を習得できる場所の近くに亡骸として残っているか、あるいはソウルの研究のための犠牲とされている。ソウルの師からは彼が使っていた「破壊のダイブ」の術を覚えるが、覚えた後に霊媒師の所へ行くと彼女の三番目の叔父の得意技だったことが判明する。その叔父をはじめとしてソウルの研究のために数多のカタツムリ族が犠牲となっているようだが、ソウルの研究自体はハロウネストに害しかもたらさなかった。夢見の釘を打つことで敵からソウルが大量に得られることといい、元々ソウルもラディアンスの領域に近かったということだろう。

・影の正体

-ジジ-
この土地はずいぶん暗くなってしまったわね。
残された思いで真っ黒に染まっている。空気すら暗くなった。
-狩猟者-
おれたちは誰もが死ぬときになんらかの痕跡を残し、それは世界の染みとなる。この王国では数え切れないほどの者が死んだ。この場所はいったいいつまでその重みに耐えられるのであろうな…

主人公をはじめとした器たちの中に入り込んだ存在であり、かつての命の残響。死の象徴的な概念であり元からアビスに澱のように溜まっていた。ハロウネストで無念の死を迎えた者たちの末路であり、かつての疫病、そしてホロウナイトを生み出すための非道な実験の中で多くの犠牲者が生まれ、それはアビスに吹き溜まる影の一部となった。これらは非常に攻撃的な性質を持っている。ソウルとの関連性は深いようであり、主人公の魔法には主人公自身が持つ影の力が影響して変質させている。また、カタツムリ族のジジは主人公の影を魔法で呼び戻すことができる。

ラディアンスの持つ生命の光と相反する力を持っていることをウィルムは研究の中で突き止め、ソウルの研究を中止して影の研究へと移った。そして器の中に影を封じ込め、影と光を中和することでラディアンスを封印する方法を編み出した。その成功例がホロウナイトである。ホロウナイトによる封印自体は長い目で見れば失敗となったが、後に主人公がアビスの影を束ねて従えたことでラディアンスに対抗するだけの力を得ている。

アビスや古代の穴はほぼ暗くなっており、狩猟者やジジの言葉からすると影が多くなりすぎれば王国を呑み込む可能性もあったようだ。また、狩猟者の言葉からすると影たちは元から王国の最も暗い部分に潜んでいたようでもある。

・純粋な器と虚無の器

ホロウナイトの実験は純粋な器の完成という結果で終わった。それまでに出た夥しいほどの数の犠牲はアビスへと封じられ、アビスにも王の印による封印が掛けられた。しかしホロウナイトはラディアンスを完全に封じ込めることはできず、疫病は神殿から漏れ出ている。どうして純粋な器による封印は失敗したのか? これについても考えてみよう。
-白いレディ-
どうか器をうばってください。その力はあやまってとらえられ、けがされてしまった。しかしあなたはそのようなけがれとは無縁です。あなたなら、あれを自らに内包することができます。

白いレディはホロウナイトの封印が弱まりつつある理由を「汚された」からだと言い、汚れを防げなかったことを明言している。実際に神殿で戦うホロウナイトは深く感染し、痛ましくも自らに釘を突き刺してまで感染源を取り除こうとまでしているが果たせていない。なぜホロウナイトは感染し、主人公ならば内包できるのか? 二つの器にどういう違いがあるのか? 自分なりの答えはある。まず、両者の違いは成長の度合いだ。主人公は他の失敗作の器と同じ大きさをしているが、純粋な器であるホロウナイトは頭身が上がって完全に成長しきっている。これは狩猟者の書にも記述してある。

そして苦難の道で見ることができるらしい王の記憶ではホロウナイトとウィルムが並んで座っている。ホロウナイトの記念碑にある姿も成長しきっているし、つまりウィルムはホロウナイトが成長し終えるまで待っていたことになる。恐らくは器としての戦闘力が、あるいは封印の力が高まることを期待したのだろう。しかしラディアンスには通用しなかった。この場合、ホロウナイトが純粋な器だったこと、そして成長してしまったことが汚染を許した原因なのではないだろうか。ラディアンスの光は生命を司る。ホロウナイトはただの器ではなく、一つの精神を持つ生命となってしまった。それが大きな過ちだったのではないか。

打ち捨てられた器である主人公は成長することもなく、感情を露わにすることもない。その性質は影が持つ虚無そのもの。ラディアンスの生命に相反する力として相応しいのは決定的に空虚な者である主人公一人だった。

余談ではあるがウィルムとホロウナイトが穏やかに過ごしていたことや、本来ならば後ろ暗い背景を持つホロウナイトの記念碑を恐らくウィルムの命令で造り上げていることからウィルムはホロウナイトへの情があったのではないだろうか。封印のために生み出され、多くの者の犠牲の上に成り立つ騎士。ウィルムは自らの失敗を拭うために生み出した存在に情を懐いていた可能性が高い。また、ウィルムに対してのホロウナイトもそうだったのかもしれない。それがラディアンスの付け入る隙になったのならば皮肉としか言いようがないが……。

・ウィルムの行方

ハロウネストはウィルムが世界から消えたことで完全なる終わりを迎えた。各地には王に全てを捧げながら救われなかった亡骸が集まり、今でも夢の中でウィルムを求め続けている。ではウィルムはどこへ消えたのか? これについてはゲーム内に分かりやすい答えがある。

-レム 王の小像を売却した時3-
王宮の跡地を訪れたことはあるか? 都のさらに下、王国の底辺にある。当時はすばらしい場所だったのだろうが、今はなにも残っていない。奇妙なものだな。一帯には争った痕跡すらなく、まるですべてが一瞬にして消えてしまったかのようだ。

隠された駅の真隣にあるため王宮の跡地を訪れることは頻繁にあったと思うが、本当に何もない。ただ白い鎧を着た兵士が一体だけ死んでおり、エッセンスを相当数集めて夢見の釘のアップデートをしなければ夢の中を覗くこともできない。兵士の死体に夢見の釘を使えるようになることでようやく白い宮殿へと向かうことができる。ここは夢の世界であり、最奥には玉座に座ったまま朽ちているウィルムの姿がある。そしてウィルムの死体からソウルの欠片を手に入れ、白いレディの持つ欠片と組み合わせることが真EDの条件の一つでもある。ウィルムは夢の世界に強固な神殿を作り上げ、そこに転移した。一体何のために? これについてはまずウィルムの性質から語らなければならない。

-バードーン-
「あのような古の者にとって死とは更なる変化である」

かつて巨大なワームだったウィルムは脱皮を繰り返して変化していった。これはある意味の死であり、ウィルムのような古代種にとっては肉体が朽ちることにはもはや意味などないのだろう。では、夢の中のウィルムは抜け殻でしかないのか? これはある意味では正しい。

-仮面を作る者-
顔を変えるということは、他者の中に自らを隠すということ…それは強力な防壁ではあるが、悲しい結果もまた付随する。つまり元々の精神は破壊されるのだ。極めて意志が強ければ、隠された精神のかけらくらいは維持できるかもしれぬが。
-白いレディ-
わたしはあなたのような者に渡すため、ずっとこれを持っていました。これは半分ですが、ひとつになれば、大いなる力が授けられるでしょう。そしてあなたの歩む道には、大いなる力が必要です。

「隠された精神のかけら」という言葉は白いレディと宮殿のウィルムが持つチャームのかけらを見れば自ずと理解できるだろう。これらを組み合わせることで「王の魂」が完成する。つまりウィルムはわざと自らの精神を破壊し、そのかけらを二つに分けて隠したのだ。一つを白いレディ、そしてもう一つを強固な夢の結界の中へ。ウィルムは夢の世界に逃亡したのではなく、強力な夢見の使い手がラディアンスを打ち倒す助けとなるために大いなる力を残した。当然、精神はチャームの欠片となったのでもう戻ってくることはない。肉体の死は変化でしかないウィルムも、精神の死には抗えない。ラデイアンスを倒すための最後の策に全てを懸けてウィルムは死んだ。

そしてこの場合、一つの疑問が残る。仮面を作る者の言葉から考えると精神を破壊するためにウィルムが行ったのは「他者の中に自らを隠す」という方法だ。つまりウィルムは元の精神を放棄して、自らの顔を変えた。それによって精神を分割して世に残した。では誰の中に隠れたのか? これは色々と考えたがやはり主人公しかいない。主人公は「蒼白なる者」というウィルムに近い呼び名で呼ばれることもあり、また王の印を得た後はかつてのウィルムの面影を見せるようでもある。ウィルムと器では見た目もかなり違うので王の印を得ただけではウィルムを思わせる印象は与えられないだろう。ウィルムは精神を分裂させた後に打ち捨てられた器の中に影となって入り込んだ。それが、やがて主人公として動き出した。

-エミリシア-
ええ…そんな…まさか? ついに戻られたというの? いえ…そうじゃないわね…ごめんなさい。一瞬あなたを別の誰かと勘違いしてしまったわ。あなたから…王の威厳を感じたような気がして。わたしったらばかね。あなたのように薄汚れてかけずりまわっている者が、高貴な生まれのはずがないのに。

また仮面を作る者は主人公に対して「ウィルムはなんとも自分と異なる者を生み出したものよ」と言った。これは主人公の仮面の下を知っての言葉である。主人公の仮面の下は勿論、影しかない。ウィルムの顔は光り輝いていたが、ウィルムの残響が宿った主人公は闇そのものの中身をしている。その本質が正反対であることを指しているのではないだろうか。この言葉は主人公に対してのみ言っているようであり、ウィルムが主人公だけに特別に関わっていることを示唆しているように見える。これが他の器やホロウナイトのことも指しているのだとしたら「自分と異なる者たち」と複数形で話すはずだ。

-ホーネット-
物事を見抜く力には自信があったけれど、あなたのことは見くびっていたわ。でも今はその実体を理解した。あなたはこの王国の境の先をのぞいた者。あなたの力はふたつの虚無の中から生まれた。この王国の中心にたどり着けたことも驚きではない。

主人公の本質を知る者は少ないがホーネットはその中ではかなり分かりやすい言葉で話しかけてくる。その中で気になるのは二つ。
「王国の境の先をのぞいた者」「ふたつの虚無の中から生まれた」
一つずつ解読していく。

王国の境の先……というのは単純に考えれば風鳴りの崖の先に広がっている荒野のことだ。これは風鳴りの崖から主人公が現れたこととも辻褄が合う。では王国の境の先には何があるか? これはかなり上にも載せているが、風鳴りの崖の石碑が説明している。

-風鳴りの崖石碑-
高貴な者よ、これはそなただけに伝える言葉。この荒廃した地の広がりに終わりはない。この虚無の中を移動しようと試みる愚か者は、その代償を払い、この王国がもたらす貴重な精神を放棄することとなるだろう。

王国の先にはウィルムがもたらした精神が存在しない。その先は虚無だとある。つまり、ここに足を踏み入れることで王国がもたらす精神を放棄することになる。さらにこの石碑の記述の中には「虚無」とある。これはホーネットの言う「二つの虚無」と関係があると見て間違いないだろう。

つまり一つ目の虚無が王国の境の向こう、二つ目の虚無がアビスの影。
打ち捨てられた器にウィルムの影が宿り、王国の境の向こうで自らの精神を完全に失わせた。完全な虚無の器となるためには精神が不必要だからだ。精神を失った後に荒野から風鳴りの崖、そして王の道を通ってハロウネストへと帰還した。ホーネットは主人公をウィルムが残した最後の手段であることを知ったことで王の印を身につけることを認めた。主人公はその後に白いレディとウィルムの体に残っていたウィルムの砕けた魂を合わせ、王の魂を手に入れた。王の魂を手に入れてから装備して白いレディに話しかけると特別な台詞を話す。

-白いレディ- 
ああ! 砕けたソウルが再びひとつになったというのですね。なんという力、なんという決意、なんという献身! そなたは単なる器以上の存在だと? まるでわたしの愛したウィルムが目の前にいるようです。

決意と献身。そして単なる器を超えてかつてのウィルムが目の前にいるかのよう。つまりウィルムが王国のために全てをなげうち、自らの存在を無くしながらも一つの器となったことを言っているのだろう。ホーネットの言う「亡霊」という呼び名もウィルムの、と考えると確かに相応しい。ウィルムは他者に強いた犠牲を全て無駄にしたことを悔い、自らの全てで贖おうとした。

-ウィルム-
…大きすぎる代償はない…

・虚無の器

主人公は王の魂を手に入れてからアビスへと潜り、自らの起源と向き合った。その時に手に入れたのが「虚無の器」であり、白いレディの言葉からも主人公が達する最後の段階であることがわかる。純粋な器だったホロウナイトに対し、精神を持たないままウィルムを由来とする大きな魂を持った主人公。虚無の器となることが真EDを見るための条件であり、この状態にならなければラディアンスを倒すことはできない。では虚無の器とはどのような力を持っていたのか? これはチャームとしての「虚無の心」を見れば分かる。

「使用者は意のままに虚無を結合させることができる」というのがこのチャームの効果の全てだ。「結合」という言葉はラディアンスを想起させる。ラディアンスは自らの光を生物へ結合させることで支配していた。対する主人公は虚無を結合させることができる。そしてこのチャームを手に入れた後はアビスの影には攻撃されることはない。つまり、主人公は影を束ねられる存在となったのだ。この力があってようやく、ラディアンスに死を与えられる。要するに一つの影では足りず、ラディアンスという超大な光の神を消滅させるためには主人公が影の神となる必要があった。そのための虚無の心であり、主人公はラディアンスへ引導を渡すためにアビスで眠っていた無念の影たちを戦いへと呼び出した。影たちはラディアンスの消滅を見届けた後、やがて溶けるように姿を消していった。

ホロウナイト同様に疫病に感染していた壊れた器は夢の世界で再度打倒された後、会釈をするような動作をしている。この時に出るのは「聞く」ではなく「承諾」であり、光に囚われていた壊れた器を自らの虚無に結合させることを主人公は認めたのだろう。


さて、長くなったが考察は以上となる。DLCであるグリム、神を求む者に関しては少し調べてみたがどうも本筋に大きく関係しているようには見えない。あるいはまだこのゲームはストーリー的には完結していない可能性もある。とはいえ、ゲーム本編の謎に関しては粗方言及したのではないだろうか。他にも書いておくべきことが見つかったらまた追記することになるだろうが、とりあえずここまで。

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ドーモ! ドネートは常時受け付けています。 ドネートはときにおやつやお茶代に使われます。