株価が下落した時、個人投資家がとるべき行動

日経平均株価は9~10月にかけて上昇力を強めている。
上昇の背景要因としては複数挙げられそうだ。このうち、マスコミ等で報じられている、「悪材料は全て織り込んだ」「業績悪は、足元が最悪期で、この先改善するに違いない」「主要国の政府や中央銀行は、みな株価を上げたがっているから、もう株価は下がらない」といった主張は、これまでの株価上昇が唱えさせている理屈であり、危ういものだと考えている。

また、足元の株価上昇をもたらした一因として、「今でも進行している世界経済や企業収益の悪化を踏まえ、株価の先行きを慎重に考える向き」が多いからこそ、かえって短期投機筋の株価先物買いによる「煽り」が奏功し、買いを余儀なくされている投資家が多くなっている面も大きいだろう(筆者は強気を唱える人々や、その背景要因として挙げられる理屈を、非難しているわけではない。株価が大きく上昇するとの見解があってよいと思うし、どうしてそう予想するのかの理由を自由に述べてよいと考える。それぞれの主張は、尊重したい)。

つまり、足元の株価上昇はやはり「やり過ぎ」であり、いずれ(とは言っても、「いずれ」が正確にいつなのかはわからない)日経平均株価は反落し、実態に沿った下落基調に転じると予想している。

しかし、過去においてもそうだが、いかにやり過ぎであっても、株価の勢いがついてしまい、遅れて買いに入る投資家が増えて、株価が一方方向に動き続ける、という事態は否定できない。このため目先は、たとえば日経平均株価が2万3000円を一時的に大きく超えるような展開もありうるだろう。また足元の株価が吊り上ったことで、現実的には、これまで筆者が主張してきたような、年内に日経平均の安値1万6000円が実現するという展開は、極めて難しくなったと言える。

ただ、、一般のメディアでは、基盤となるスタンスが異なる多くの書き手が、不特定多数の読み手に発信するので、書き手も読み手も、そもそも期待するものがばらばらになってしまう。筆者の場合は、述べたように、現物保有中心の長期投資家に、毎週や毎月の株価変動の背景を理解していただいて、目先の株価の上下動にうろたえず辛抱強く、長期的に投資を継続して欲しい、という意図から書いている。

一部の識者の間では、現物のデイトレードやスイングトレードなど比較的短期の売買、あるいは信用取引やオプション、先物取引などの、短期的・投機的に儲けを狙う売買を、「悪」だという向きもある。

だが、筆者は全く悪いことだとは考えてはいない。「自己責任」という言葉はよく誤って使われていると懸念するが、筆者が考える「自己責任」という意味は、責任と自由は表裏一体であるから、投資において自分でよく考えて判断し、その損益は自分でしっかり引き受けて、誰のせいにもしないのであれば、どのような投資を行なっても(法律などに反する行為を行なうのでない限り)全くの自由だ、ということだ。

どんなに投機的な取引であろうと、そのメリットとデメリットを理解して、誰のせいにもしなければ、そうした投機的売買に対して他人から批判される筋合いは全くない。

さて、コラムの本題である市場展望を述べると、今週はFOMC(米連邦公開市場委員会、10月29~30日)や日銀の金融政策決定会合(30~31日)、アメリカの主要経済統計の発表(GDP、ISM製造業指数、週末の雇用統計)、国内企業の半期決算発表など、材料は数多い。

連銀内部の意見は割れているとは聞くが、ジェローム・パウエル議長は3度目の利下げに傾いているようだ。ただ利下げ観測は既に市場に織り込まれているだろう。日銀は、前回9月の会合時の声明文で、「経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく」と述べたため、追加緩和期待が生じている。

しかし、足元では、日銀が警戒を示すような、強い株安にも円高にもなっていない。国内経済についても、足元の消費増税の影響はまだはっきりとはみえず、判断する材料が不足している。このため追加緩和という「弾薬」は、今後の景気悪化や市場の急変に備えて温存されるだろう。

日本の企業決算については、マクロの輸出・生産統計や企業心理データなどから推察する限り、製造業中心に足元の業況はかなり悪いと懸念される。米ファクトセット社が集計した、東証1部全企業についてのアナリスト見通しの平均値では、この先12カ月間の1株当たり利益予想値の前年比は下方修正基調が続き、10月25日時点では マイナス9.4%と大幅な減益が見込まれている。

それでも、先週までのような「吊り上げ相場」が持続していると、企業決算の内容が悪くても、「悪いことは織り込み済みだ」「9月までの収益は悪いがその先は好転するに違いない」と唱えながら、日経平均が上値を伸ばすことは、否定できない。今週は、多くの材料により、上にも下にも株価の動きが荒くなると考え、日経平均株価は、2万2300~2万3200円と、やや広めのレンジと予想する。

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