文学全集

図書館で、よく、文学全集を借りて読む。
それがおれの趣味である。

その辺にある本や、人気のある本、賞をもらった本などではなく、ましてや漫画でもない。
文学全集が読みたい。

それはなぜか。評価が高いからだ。作品の質が保証されている。
物で言えば、ブランド品である。

「おいおい、『作品の質が高い』と言ったって、それはあくまで他の人の評価で、お前の評価ではないじゃないか」
と、この記事を読んで思う人もいるかもしれない。それはそうだ。

おれには、そもそも、好奇心というものがない。ほとんどのことに興味がないのだ。

だから、その辺にある本はもちろん、人気の本だろうが、賞をもらった本だろうが、おれの食指は動かない。
無理に、そういった本を手に取って、頁をめくったこともある。
しかし、何が面白いのかわからない。
真剣に、最初から最後まで、根気よく読めば、いい作品なのかもしれない。
だが、それだけの気力がない。
徒労に終わりそうに思えて、不安になる。

そもそも、
“面白い”という価値観が、自分の中に希薄である。
何も面白くない。
面白いと思うことが、この世には、ほとんどない…

それが、なぜ、文学全集には心を動かされるのか。
知りたいのだ。人間とは何なのか。
なぜ今、おれは、生きているのか。
おれは、自分が生きていることを持て余している。
何をしたらいいのかわからない。
自分が何をしたいのかすらもわからない。

誰かに、何かを、教わりたい。
おれの中の欲求は、それだけだ。

換言すれば、
“哲学的なことに興味がある”
と言えるかも知れない。

文学全集は、当然、自分にとって、すべての作品が当たりというわけではない。
中には、
“つまらない”
と思う作品もあるが、ただ、自分とは違った感覚で、
“この世から何かを掴もうとしている”
痕跡はうかがえる。
ただ、その姿勢が感じられるだけでも、おれは、少しでも、孤独が紛れる気がする。

だから、自分にとってはそれほどピンと来なかった作品でも、あまり、嫌ったり憎んだりせずに済む。
装丁が同じなのもいい。
1冊はハズレでも、他の巻は、読んで得るものがあるかもしれないと思える。

以上が、おれが文学全集を好きな理由です。

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