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旅先の豊かな記憶とともに、アートに出会う。<箱根ラリック美術館>【旅先案内人vol.13】

普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
noteではバックナンバーを掲載しています。ここからは【11月29日 配信 旅先案内人 vol.13】の内容をご覧ください。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f 等)

光を捉え世界のひみつを映し出す、ルネ・ラリックの作品。

<キラリと光る「ガラス」に心奪われる>

誰しも、一度はそんな経験があるのではないでしょうか。普段は、私たちの目では捉えられない「光」の情報を映し出してくれる“ガラス”や“ジュエリー”は、世界の美しさのひみつを覗き見できる、最良のアイテムかもしれません。

私たちの運営施設「箱根リトリート」からほど近い場所にある、「箱根ラリック美術館」。アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたって活躍した作家、ルネ・ラリックの作品を収蔵する美術館です。

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2020年の9月、箱根リトリートでは、美術館の展覧会の開催に合わせ、「ラリックの横顔」をコンセプトに、ラリックの作品を代表する香水瓶の数々、華やかなパリの時代背景と、ラリックが愛したものやバックグラウンドをコース料理やスイーツで表現するコラボ企画を実施しました。(※現在は提供を終了しています)

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香水瓶が、美術館の展示ケースを飛び出して、アートなスイーツに。近隣施設とコラボし、街へ訪れる方にアートを深く楽しんでいただくきっかけになってほしいという想いを込めた取り組みでした。

ホテルと美術館との異色のコラボを行うなど、新しい形で様々な角度から作品の紹介を行っている箱根ラリック美術館。箱根ラリック美術館の総支配人 田部光久さんと、学芸員の林田早代さんへのインタビューを通じて、美術館のはじまりや見所、ラリックの人間性に迫ります。

(※撮影時のみ、マスクを外しています)

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■美術の知識はほぼ0から。新しい美術館のカタチを探って。

「箱根ラリック美術館オープンにむけての概要図をみたとき、今までの考え方と違った、“新しい美術館像”があるなと感じたんです。18年前の当時、一般的な美術館というのは、少し敷居が高いというか・・・難しい専門知識などがないと入りづらい印象がありました。そんな中この場所は、箱根に訪れて、お散歩がてら来てみたら、ラリックの作品と出会えるようなしつらえで。入り口が極力入りやすいようになっていたんです。」

そう語ってくれたのは、2005年の箱根ラリック美術館開業の立ち上げからこの場所に携わり、現在も総支配人を務める田部光久さんです。新卒でゼネコンに入社し、財務本部・銀行交渉業務や関連事業の再構築などを担当していた田部さんは、前職の先輩の紹介で18年前に箱根ラリック美術館へ転職。「いちから何かを作りたい」と思っていた矢先の転機だったそうです。

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「美術館に関わったこともなければ、美術の知識も特別あるわけでもない。箱根の土地勘もなくて。全て手探りの状態からのスタートでした。だからこそ、ピュアな視点でこの場所を見れたのかもしれません。冒頭にお話したように、従来の美術館のイメージとは違った概要図を見たとき、私も携わりたい、と思いました。」

箱根ラリック美術館の魅力は、ラリックの作品展示だけではなく、その周辺の環境にも宿っています。敷地内には美しい庭園が広がり、クロード・モネの睡蓮をモデルとしたお庭は、まるで絵画の世界に迷い込んだよう。緑が溢れ、虫たちの声が優しく聞こえてくる場所です。その他にも、ラリックが内装を手掛けた「オリエント急行」のサロンカーでティータイムを楽しむこともできます。

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ラリックのことを知っている人はもちろんのこと、芸術に詳しくない人でも、気軽に訪れることができるのも、大きな魅力です。訪れた人の旅路に、そっとラリックの作品が寄り添い、豊かな時間を彩ってくれます。

■1mm単位でこだわられた展示。360度味わい尽くす。

普通、美術館というと絵画などの展示が多く、訪れた人は正面から作品を鑑賞します。しかし、ラリックの作品は、香水瓶をはじめとする『立体物』が多いため、360度ぐるりと回って作品を色々な角度から楽しめるのが特徴です。

「見せ方には、特に気を使っています。光の当たり方や作品の位置を、1mm単位で調整しているんです。ラリックの作品の素敵な部分、美しい部分を見て欲しいので、その作品が本当に綺麗に見える角度や位置を探っていきます。」

展覧会の展示のディレクション等も担当する、学芸員の林田さんはそう語ってくれました。

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「同じ作品でも、展示する空間によって、全く違う見え方をしてきます。他の美術館だと、ラリックの作品もやはり前から見ることを想定され、壁の前に並べて展示されていることも少なくありません。私たちの美術館では、作品を単独で置いてあるものも多く、展示ケースの周りを全方向から観賞できるんです。360度手を抜けないので、大変でもあります。」

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ひとつひとつが素敵に見えるように、こだわられた展示は、裏側の造形の美しさまで余すことなく見てほしい、そんな想いが込められています。上下左右色々な角度から、ラリックの精巧な技術を鑑賞するのが、箱根ラリック美術館の楽しみ方の流儀かもしれません。

■華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ。時代を読む力と信念。

ラリックの作品を知れば知るほど、その幅の広さに驚かされます。ジュエリー作家からガラス工芸家への転換、香水や、建築、オリエント急行の内装・・・。他にもジュエリーやガラスにとどまらず、シルクの織物、屏風、装飾のデザインなど、ジャンルの垣根を超えて作品を世に送り出しています。

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「ラリックの作品は、自分の作品で多くの人を幸せにしたいという想いに溢れていると感じます。だからこそ、ジャンルを越境して、しなやかに扱うものを変えながら、どうやったら時代にフィットして作品を届けることができるか?と考え、“届ける努力”を惜しまずにしていたのではないでしょうか。時代の先を読む力も、目を見張るものがあります。」

作品の幅の広さの裏側には、ラリックの信念と努力が隠されていることを林田さんが教えてくれました。ものづくりには、良いものを作っても、誰にも知られずに終わってしまうリスクもあります。過去の成功に安住することなく、クラフトマンシップと大衆性の両立を目指したラリックは、一度に多くの人に素敵なものを届けられる作品にシフトして行きました。そんなものづくりとその届け方についてのラリックのスタンスからは、軽やかに時代を駆け抜けたであろう姿を想像してしまいます。

■旅先の豊かな記憶とともに、ラリックに出会う。

自分の想いとものづくりを届ける努力を惜しまなかったラリックですが、箱根ラリック美術館も、そんな彼の信念を受け継いでいるように感じます。美術館の展示のみならず、食やデザートなどの体験を通じて・・・。様々な角度からラリックの作品を味わうことができます。

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旅先の豊かな記憶とともに、ラリックの作品に出会える場所へ。美しいジュエリーやガラスたちに心奪われる、そんな箱根の旅をお楽しみいただくのは、いかがでしょう。


<取材協力 箱根ラリック美術館>
HP/Instagram/Twitter
・開館時間:午前9時~午後5時(美術館入館は4時30分まで)
      2021年12月1日より、
      午前9時〜午後4時(最終入館は3時30分まで)
・休館日:無休(臨時休館の場合あり)
     2021年12月より、毎月第三木曜日休館(但し8月は除く)
・所在地:〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1
・TEL:0460-84-2255
・アクセス
公共交通機関:箱根登山バス「仙石案内所前」、小田急箱根高速バス「箱根仙石案内所」下車すぐ
車:東名御殿場I.C.より乙女峠経由、仙石原まで約20分
(箱根リトリートから車で5分、バスで13分)

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