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浅倉透の今ってどこ 【10個、光】思想全開メモ


時系列順に浅倉透のコミュを読み返して思考したことを逐一リアルタイムで書き込んでいきたい。

そういった試みのもと今回は筆者の思想全開で書き込んでいきます。

wingを読んだ次は【10個、光】を読み返します。



● 1こめ -明日宇宙人は存在するか

・いっぱい寝る
・映画とか見る
・ブラウス欲しい

透があげたのはどれも刹那的で、物質的欲求である。

一生のうちにやりたい10のこと」というお題に対して当然これらの回答は世間一般的に相応しくない。
この問いは”一生をかけて達成したいこと”という意味も含んだものだからである。
更に言うと、あなたの人生のテーマはなんですか?という究極的な問いに置き換えることができる。

透の回答は明らかに「産まれてから死ぬまで」という長い時間への視線を欠いている。

彼女が視線を向けているのはとにかく””である。

 それは何故か。

明日宇宙人が攻めてきて死ぬかもしれないから
透はそう答えた。
予測のできない未来なんて考えても仕方がない」ということである。

そもそも予測という行いは、事物の因果関係を捉えて為すものだ。
例えば、天気予報は気象データをもとに、過去のパターンや大気の動きなどの因果関係を分析して未来の天候を予測する。
降水確率0%と導かれたなら、当然出かけるために傘を用意する必要はない。

「〇〇だから〇〇」
全ての事象にはその原因がある。原因を持たない事象は存在しないことになっている。

宇宙人予報の確率は限りなく0なのだ。
であるにも関わらず浅倉透は「明日、宇宙人が攻めてくるかもしれない」と言う。

それは、浅倉透が「今をありのままに捉える視点」を持っているからである。
事象はただ事象として在り、形而を超えて超然的である。

形而上絵画のあり様と同じように、そういった感性の世界ではあらゆる存在が因果を無視して登場することができる。

故に宇宙人は存在するのだ。

そして、そういった先入観を持たない平等でフラットな”ありのまま”を見る視線は、間違いなく透を形作る個性であり、魅力の1つであるはずだ。


しかしまだ283に所属して日の浅い透を、プロデューサーはまだ理解しきれていない。

この1コミュ目では、2人の物事への視点の違いが描かれる。


プロデューサーは透に「一生のうちにやりたいこと」として、
アイスコーヒー作りたい」と答える。
続けて、
俺の分だけじゃなく、透の分のコーヒーも作りたい

しかしそれは透の様に言葉通りの意味ではなく、

透の力になれるようにこれからも頑張っていきたい
と、行動の背後にある理由を示しているのだ。


これを受けて透は、「プロデューサーが提示した視点の方が正しい」と、衝突させることなく「今やりたいことを大事にしなきゃ」という自身の意見を下げる。

もしかしたら、透は前述したような自身の個性や魅力について、「自分が他者と比べて足りていない部分」というような捉え方をこの時点ではしているのではないだろうか。

周囲の目からは捕食者に映る彼女だが、しかし透自身は周囲に溶けるミジンコであることを望んでいたのである。

そしてこの【10個、光】の後に展開されていくストーリーでは、ミジンコの群れから脱して捕食者として成長していく透の姿がある。


● 2こめ -光の捕食者

バスでのシーン。
住宅や降車ボタンは、夜でないと光っていることに気付けない。
昼間では太陽の巨大な光に紛れてしまうからである。

太陽とは、光の捕食者なのだ。

「…….火星だと思ってたんだ 太陽のこと、昔」

【国道沿いに、憶光年】一個、光



ここから展開されていくストーリーのなかで、プロデューサーは透の「」を認識し、やがてそれは巨大な太陽であったことに気づく。

2コミュ目では、プロデューサーの透に対する認識の出発点が描かれる。


●3こめ -女と男は”恋愛”か

事務所で映画を観る透。
セリフを覚えるくらいには繰り返し同じ映画を観たようだ。

ここから透の映画に対するスタンスが伺える。
透はストーリーを楽しむために映画を観るのではなく、アクションや爆発に代表されるような、画面から感じた印象を楽しむために観ている。

ストーリーとは、文脈の連なりである。
今をありのままに捉える視点」を持つ透がそういうスタンスに落ち着くのは自然である。


”女(君)によって何かに巻き込まれた”男の「君が止めなければ行かない理由はない」というセリフ。
推測ではあるが概ね、女は男と2人で生きていたい。男は女を守るために一人で戦わねばならない。といった具合のシーンだろう。

ここでの応答で、コミュの結末は変化する。

ここで「──ははっ」を選ぶと、プロデューサーは「親と観てるみたいだな」的な乙女心を無視した発言をする。

以後のやり取りでは、”透がプロデューサーに恋愛感情を抱いている”と大体は解釈できる場面ではある。

しかし前のwingの記事で述べた、「気持ちをかたちにして伝える方法をゆっくり探す」という透の成長について私は誠実な態度を取りたいのである。

つまり、、プロデューサーに抱く感情をwing直後のPSSRカードで「恋愛」という”言葉”に早くも押し込めてしまうのはなんだか勿体ない気がするわけで、
間違いなく透はプロデューサーに対して好意を抱いているのだとは私も思っているが、それを恋愛というだけでは取りこぼしてしまう大きな何かがある気がしてならないのだ。

なので敢えて少し違った解釈を提示したいと思う。

まず、ここでの透の欲求としては、「プロデューサーとキスシーンを一緒に見たいではないと私は考える。

なぜなら、上記の「──ははっ」を選ぶ選択肢では恐らく最終的にキスシーンが一緒に見れている。
だが明らかに透の欲求は満たされていない閉じ方をする。


欲求の正体は、「プロデューサーと今同じ気持ちでいたい」である。

それって好き同士でいたいってこと?それって恋愛では?

まあ待って欲しい。
まず恋愛とは、最終的にそれが成就する結末を望む在り方である。要はラストが決まったストーリーだ。

しかし、それは前述した透の映画に対するスタンスや、ひいては物事を捉える視点に反してないだろうか。
そもそもオープニング・イメージを務める「1こめ」にて、透は人生的な長期の願望は現時点無く、”とにかく今やりたいこと”の人であると提示されている。

したがってこれは「プロデューサーと今同じ気持ちでいたい」という欲求の背後を見て恋愛と捉えるのではなく、”今この瞬間ありのまま”同じ気持ちでいたいとして捉えるべきなのである。

そして、女は男と2人で生きていたい。男は女を守るために女を一人にして戦わねばならない。というモチーフ。

これ以上詳しく解釈を書くと話題がそれるので詳しくは該当記事で書くことにするが、またまた憶光年で例のセリフとともに繰り返されるモチーフである。

早く憶光年にたどり着きたい。


● 4こめ -899キロカロリーのがんばり

ファミレスでの一幕。
「さっぱりおろしハンバーグとカキフライ膳」を透はプロデューサーに”奢って”貰っている。

ここで注目したいのはここだ。
頑張る、努力することへの憧れ
この時点でのアイドルとしての透はこの時点で全くの無名であり、アイドルとして頑張れている実感が薄い。

食べさせてもらっている”という自認は、透の捕食者としての性質はまだ鳴りを潜めていることの表現である。

やがて透のコミュでは”人から貰ったものを遠慮なく食べる”場面が多く表現されるが、
したがってそれは、釣り合う頑張りをしていることを自覚している現れと言える。

ここでは食べる行為への意味付けが行われている。


● いつか -定義されない今


夕焼けの中、街が一望できる丘。

世界中、全部。
昼には隠れてしまう街明かり、星。 
夜には隠れてしまう太陽。

そんな時間の間にある夕焼けは、全部の光が混ざり合う。

全部が平等な風景は生物が堆肥して重なり合う干潟のような”ここ”なのだろう。

透が求めるものだ。

誰にも、言葉にも定義されない超然的で絶対的な今、この瞬間。

今”を”ここ”とするなら、それは時間的連続からも解き放たれた究極的な今である。

ジャングルジムの原体験が時を経てまた動き出したように、
定義されないのなら、また何度でもいつか今、この瞬間は訪れる。

プロデューサーは他の星に紛れたいっこの光を、今は見つけられていない。

それは火星か太陽か。憶光年を早く書きたい。

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