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ブロンズの観光客と授業参観

今日も仕事がない。

しかし、やることはある。授業参観だ。

セミリタイアして最も増えたのが子どもとの時間だ。朝は行ってらっしゃい、帰ってきたお帰りなさい、これが毎日言える。

サラリーマンはそうはいかない。

私が会社勤めの時は朝8時から夜8時の勤務時間だった。(土日も出社したから労基的には労働時間オーバーだが、役員にされたためセーフになってしまった!!ガッデム!)

子どもとの時間はかけがえのないものだ。まだ小学2年生。かわいい時期もあと少しと言ったところだろうか。甘え上手で、まだまだパパ大好きと言って抱きついてくる。私にとって大切な時間だ。年少期の時間を過ごせる価値は大きい。この時期にいっぱい遊んだ記憶は、大人になっても覚えているだろうから。

以前、親戚の結婚式に出席したことがあったが、「花嫁の手紙」でこんなことを言っているのを聞いた。

「お父さんはいつも仕事で家にいなかった。寂しかった。お父さんとの思い出はほとんどない。私に時間を使ってくれなかった。」

驚愕の内容だ。会場にいた全員が震え上がったに違いない。父親は穴があったら入りたかっただろう、やり場のない感情をニガ笑いでやり過ごしていた。そりゃそうだ。私も会社勤めの時は時間は全くなかったが、辞めたおかげで、その父親にならずに済みそうだ。

私の子どもは家でははっちゃけているが、外では人見知りで恥ずかしがり屋だ。去年も授業参観に行ったが、恥ずかしそうに1度だけ手をあげ、当てられると、か細い声で何やら答えていた。しかし今回はなぜか自信満々、発表するから見にきてと言ってきた。なんでも得意な授業なのだとか。成長するもんだ。父親は今でも人前で話すのは苦手だというのに。

家から小学校は歩いて20分程。あと1時間半ほどで授業参観だ。

4限目で時間は45分間。立ち見になるから、結構腰にくるし、所詮小学2年生の授業だ、それほど面白いわけではない。本来なら半分過ぎたところから参加したいところだが、娘の気合いに同調し、気合十分、15分前に到着した。

先生や知り合いの子どもの親に挨拶をし、いよいよだ。うちの子はどんな勇姿を見せてくれるのか。

ふと、授業が始まる前に目があった。あら、顔つきが固い。どうした、怖い映画でも見たのか?

これはと思ったら案の定、勇ましさは微塵も発揮されなかった。

一応、2回当たって発表していたから去年よりは成長している。褒めるほどではないが。(結局褒めたのだけども。)

終わりに

冬なのにそれほど寒くない快晴のいい天気だった。田舎だがその中では街中の方で、有名な観光スポットがある。そこを抜けて小学校まで歩くのだが、あれほどいた観光客がめっきりいなくなった。

先日大きな地震があり、この辺りは大丈夫だったが、数十キロ離れた辺りは悲惨な状態になってしまった。地震の影響で引っ越してきた子どももいる。大人も子どもも環境の変化に疲弊している。

被災して、家族が亡くなった人も何人かいるようで、その話題は腫れ物に触るようだ。学校でもそういったことは話さないようにする取り決めがあるらしい。

邪魔だと思っていた観光客もいざいなくなるととても寂しく感じる。街の方は地震の影響がほとんどなかったが、外から見ると危険な場所だと感じるのだろう。自分が逆の立場でもそうなる。観光が軌道に乗っていただけに、街の打撃は大きい。ちょっとしたカフェなど閉店するのではないか。ボランティアや寄付など自分たちにできることはしているが、以前の状態に戻るにはかなりの時間がかかるだろう。

今日は快晴。寒いが凛とした中に日の暖かさを感じる清々しい空気。

1日でも早くあのブロンズの観光客が戻ってくるといいなと、観光地の石畳を歩きながら思った授業参観の日だった。

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