【知財法務入門 基礎からわかる知財④ 知財と渉外① 総論編】

第1 知財と渉外

 知的財産の業務をしていると,密接に英語,渉外業務と関連することが多いと思います。私自身純粋な国内業務は40%程度で,国内クライアントから海外へ20% 海外クライアントから国内へ25%,海外から海外へが10%程度といったところです。

 といっても私自身入所までどこかに留学した経験はなく,海外の論文や裁判例を読んだレベルで,海外の友人が数人程度といったところでした。帰国子女というわけでもないといったところでした。

第2 「法律英語」と「技術用語」という一種の語学の存在

 このように日常英語はそれなりですが,他はからっきしというレベルでしたが,最近は本も多く,それを見ながら,OJTで会議の聞き取りや,挨拶程度,少しの発言程度はできるようになるといった感じです。最初はメールもすごく時間がかかりましたが,慣れると,勝手にタイプできるといったものでした。なれるのが早かった理由ははやはり大学,ロースクール時代訛らない程度に外国書購読の授業や,自発的にニュースサイトやリーガルニュースを英語で読んでいたというのが大きいかと思います。

 一般人の日常の日本語を読める人でも,「日本の法律用語」がわからないように,英語にも似た構造があり,「法律英語」という語学が存在するといったもいいと思います。そのため「日本の法律用語」→「法律英語」となんとなくリーガルマインドを用いてニュアンスを読み取ることができているというのが大きいかと思います。

 さらに私は大学時代に「Law and Economics」にはまっていたので,英米法の考え方や国際取引の考え方が,日本の大陸法の考え方との衝突を起こさずに,スッと入ってきたように思います。米国を中心に法がeconomicsの帰結とぶれないように整合性を保っていることが多く,ここら辺は官僚的,文言に忠実なドイツ法を基礎に英米法を混ぜてきた日本法学習者に少し違和感があったりするのですが,その違和感を大学時代に解消していたのが大きいかと思います。

 また知財だと理系の各専門分野の「用語」が登場しますので,ここでも「技術英語」「技術日本語」と語学の壁が立ちはだかることになります。ここもあまり違和感なく取り組めているのは,「economics」の仮説思考,理科系の考え方と似たものを援用しているからかと思います(日本では文系とくくられていますが,経済数学をしっかりしたものを読むと,自然科学のようだ・・・というぐらい数式,数学が登場します。)

 こういうバックグラウンドも相まって,慣れるのが早かったのかなと思っています。(あと単純に数学等に壁を持っていないという私の知的好奇心マインドも働いているかと思います。)

第3 知財の渉外業務

1 概観

 知財の業務と渉外の業務がmixしただけなので,そこまで特異性があるわけではありませんが,以上の①法律+②海外の法,英語+③技術用語,英語に④ビジネスマインド(経済・経営)というのが合わさっているので結構な専門性の壁を設けているのかなと感じています。

 といっても③という存在がやはり単なる渉外業務と異なるところかと思います。私が特許等をやる場合の担当は電子電気関連の分野(IOTやAIを含む)(たまに化学バイオ系をします)が多いです。③にも専門分野は分かれているというところにあるのかと思います。(弁理士の専門分野に対応するかと思います。)

2 英米法や米国,英国,欧州の裁判例の重要性

 日本国内知財も米国,欧州の裁判例が影響を与えるため,日ごろから米国,欧州の裁判例を読んでおく必要性が大きいでしょう。イノベーション国家の米国知財,EU圏内の知財は文化的,政策的背景もセットで理解しないとわかりにくいというところもあります。

3 法律英語

 法令の英語に加え,訴訟の英語も考えないといけません。「期日請書」といった慣行はあちらにありませんので「court report」とかを書く時結構迷ったりはします(笑)

4 条約,ハードローの性質をもつ国際的ガイドライン

 結構見落としがちなのですが,例えな遺伝子等の分野ではカルタヘナ法「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」といった条約がある場合が多く,このあたりも気を使うところです。

5 国際的なソフトロー・ガイドライン

 例えば,AIの分野においてはAI倫理を定めつつあり,業界内ガイドラインも重要な位置づけになったりしますし,実際このソフトローを梃にハードローや合理的な意思解釈が発せられる場合もあります。

6 国際私法,契約書

 たいていは契約書の中に準拠法があるので,基本的には第3国に落ち着くとは思いますが,たまに定めていないままといったこともあります(特にIOTの分野はい意図的に外す場合も見受けられます。)このため,この分野の解釈も少し補充しておく必要があるかと思います。

第4 小括

 今回は,総論的な部分としてお話しましたが,次回からは米国,欧州,中国(香港及び大陸法)あたりを解説していけたらとは思います。(不定期ですが笑)

 


 


 

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