【知財法務入門 基礎からわかる知財①】

第1 書いてみようと思ったこと

 不定期で書いていこうと思います。私が書いていいのか?と思いましたが,とりあえず書いてみます(笑)。結構独善的に書いていると経験はまだまだ少ないことを前提に,参考にしてみてください。

 第2 知財法務の分類

1 知財取引 2 知財DD 3 知財訴訟 4出願等(対特許庁)という風に業務が分類されるかと思います。特に1については一般の弁護士も契約書レビュー等で行うことが多いと思います。

2についてはM&Aをよく行う事務所,3はブティック事務所,4は弁理士がよく行う業務に分類されるのかと思います。

他の法分野と違う知財の特殊性としては

①「無体物」を対象とする解釈論(政策論も反映されやすい)

②出願が国際出願が原則なので,海外法制の解釈・裁判例,国際取引,英米法,英語を用いることが多い。(上記1,2,3において)

③出願実務は弁理士が主として行っているのでよくわからないことが多い。(上記3において)

④特許の場合「技術的用語」,すなわち「理系」の分野の知識が前提であるため,司法試験で問われない「高校数学」「大学数学」「化学」「物理」「生物」「地学」の知識を必要とする。(上記3,4において)

⑤クライアントはほぼ「企業」となることが多いので,「業界」の特殊性を色濃く反映し,IT等の発達,著作権商標の浸透により,ほぼ全業種で意識されていることから,インダストリーカットの実務へと変貌している。(上記1,2,3,4において)

⑥訴訟は一般民事と異なるところが多い。(上記3において)

といった点が特殊性として挙げられるとは思います。

ここに⑤を踏まえて「知財戦略」を構築し,プロジェクト化する業務もあります(このあたりはインハウスや企業内弁理士の人員が必要となることが多いため,企業によってはまちまちだと思います。)。

第3 知的財産法の種類

「特許法」,「実用新案法」(特許法の下位互換),「著作権法」,「商標法」「意匠法」「不正競争防止法」がメインとして挙げられると思われます。「特許」と「著作権」は司法試験の選択科目でもあります。「商標法」もかなり実務で使用します。「不正競争防止法」「意匠法」も使用することが多いと思います。

特許法は「アイデア」を,著作権は「表現」を保護します。商標法は「商品やサービスの目印」を保護します(例えば商品名を保護対象にすることはあります)。意匠法は「工業製品のデザイン」。「著作権」と「不正競争防止法」以外は特許庁を経由して権利を取得することになります。

 少し勘違いしやすいのは,特許庁は規制官庁というわけではないところが他の金融庁等の規制官庁とも異なるかと思います。

また,上記のように分類されますが,実際にこれが「著作権」の対象になるのか!といったこともありますので,対象物ごとに個々具体的な分析が必要になります。

出願段階,権利執行の段階いずれの相談においても「金銭」というコスト・「公開によるパクり」リスクをもって「独占権」(「禁止権」が通説です。他の国では「専用権」として作用しているところもあります。)を得てるという構造を踏まえたアドバイスが必要になります。そのため,特許等をとらずあえて自社の中で厳重に営業秘密として保管しておく(「不正競争防止法」の保護対象」)という手段もありえます。

 救済の手段は「差止め」「損害賠償」が多いと思います(ほかに廃棄や名誉回復等もあります)。日本では少額な損害賠償と批判は大きいですが(といっても億単位の訴訟は結構多いです),海外では懲罰的損害賠償の制度もあるので,海外でも一大業務分野の1つとして捉えられています。

第4 小括

 こうみると,結構めんどくさそうな分野にも見えますが,上記①-⑥の観点からすると弁護士の中では専門性が高い分野だと思います。次回からは「知財契約の留意点(英文契約含む)」「知財DDの留意点」「特許の明細書の読み方」「特許法の中の専門分野」「著作権の仕組みと業界独特の留意点」「商標」「各訴訟の特異性」「知財と労働」「知財と経済法」「知財と租税」「知財ファイナンス」「IOT,AI,ロボットと知財」等(今考えているのはこの辺です)に分けて,「不定期」に書いていこうと思います(笑)



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