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吸った 飲んだ 笑った

気絶してから1時間。
生まれてから5時間。早くも2人きりの初めての授乳の時間である。
そうは言いつつ、気絶してしまったもんだから、自分の部屋には戻れず、陣痛室に逆戻り。息子を連れてきてもらう。

まあ、寝てるよな。息子だって命懸けだもん、疲れたやろで、飲めずに抱っこで終わりかな。

……。
起きてるんかーい。

そう息子は目を爛々にしておっぱいを待っていたのである。授乳姿勢を取れば上手いこと吸うではないか。いやはや、赤ちゃんの力は凄い、そう感心する私をよそ目に、これが息子とのおっぱい大戦争の始まりであった。


結論から言って、息子は私の乳を3時間吸い続けた。

私も助産師の端くれ、母児同室して母乳栄養はできる限り頑張りたい。そう妊娠中は思っていた。
でも違った。産んだあとはアドレナリンの効果か、「こんなに可愛い我が子と一緒に過ごさないなんて、なんて勿体無い!自分から離すまで吸えばいいよ!」
なんて真剣に思った。産後ハイである。
しかし、人間寝ずには生きていけなかった。


同室3日目。3時間おっぱいを吸い続け、やっと寝た。やっと寝れる、もう寝るぞと思ったら、なんと息子、ベットに置いたら泣いたのである。
夜中3時。ナースコールを押してミルクを頼んだ。

頼む、ミルク御大神。なんとかしてくれ。

心の底から思った。
そしたら、ミルクではなく助産師さんが来てくれた。息子は新生児室に連行された。
入院して初めて、まとまった2時間を寝た。寝るって素晴らしいと思った。

しかし、その甲斐もあってか、私は授乳に関してトラブルらしいトラブルが一つも起こらなかった。
先輩助産師曰く、2日目3日目を超えると楽になるよと。そう、楽になった。息子はそれから1時間ほど吸うと寝るようになったのである。
それに自分の乳を一生懸命に吸う息子の愛しさと言ったらなかった。

私は絶対的な母乳信者ではない。
同室だってすすめる事はあっても、強制したことは一度もない。
でも、母乳が赤ちゃんにとっていいことが多いのは勉強してきて分かっている。
直接吸えない赤ちゃんもいれば、赤ちゃんのために泣きながらおっぱいを搾って、赤ちゃんに届けているママ達がいるのを知っている。
見てきた、関わってきた、寄り添ってきた。それだけは自信を持って言える。
だからこそ、自分が出来る息子にとって良いことをしたかったのだ。それしか出来なかっただけだけど。

かくして、おっぱい大戦争は平和的解決でとりあえず終結した。


たぶん。

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