家を買おうと思っているあなたに、不動産に「掘り出し物」など無い理由を完璧に説明します

お客様「なかなかいい物件ってないですねぇ。またなんか掘り出し物があったら教えてくださいよ!」

営業「そんなのがあったら私が買いますよ!わはは!」

お客様「わはは!」

こんにちは。元不動産屋さんの田村です。不動産売買営業の現場でよく見られる上の会話。営業が言っている「私が買います」は、冗談のようでほんとうです。

最近、私のまわりの25〜30歳ぐらいの若手の結婚が続いております。めでたいです。たまに乾杯のときにコップを強く当てすぎる方もいらっしゃいますが。


結婚、という行事が終われば大体の日本人は「家も持ちたいなぁ」と考えます。しかし、実際に物件を見始めると、これがなかなか帯に短し襷に長し。「これ!」っていうのが見つかりません。

そんななか、よく出てくる会話が冒頭のような「掘り出し物あったら言ってねー」というものです。**いくら探しても予算内では満足できるものがでてこない→割安物件(掘り出し物)がでてきたら教えてよ! **です。

しかし、不動産に掘り出し物は100%ありません。いや厳密に言うと、無いことは無いのですが、あなたが購入できる確率は限りなくゼロに近いです。なぜなのか、順を追って書きます。


1.掘り出し物(割安物件)はどうやって生まれるのか。

たとえば、周辺の相場から見て4000万円ぐらいの物件が、たまに3000万円ぐらいの値で取引されたりすることがあります。もちろんここでは事故物件などの特殊要素は除く、モノ自体にはまったく問題のない物件のことを言っています。

これは「売主の事情」によります。安くてもいいから早く売って現金に変えたいケースです。私も何度か取引に携わったことがあるのですが、もっとも多かったのが「離婚物件」です。

離婚協議を進めるなか、夫婦いずれか、もしくはいずれかの親族が金銭での解決を求めるケースがあります。そして、所有している不動産を財産として分割するには、早期に現金化する必要があります。

ここでこの夫妻は本来4000万円ぐらいの所有物件を、悠長に不動産屋さんに行って査定してもらって、ネットに載せて、チラシを撒いて、とやってる時間をかけたくありません。とっとと分け前をそれぞれ手にして協議を成立させたいのです。

そこで、速攻売れる「3000万円」とかで買い手を探すのです。

離婚協議を例に出しましたが、他にも所有者の死亡による財産分与のケースなどもあります。所有者が死亡し相続人が早期に現金を入手したいようなケースでも、同様の現象が発生します。

つまりいずれのケースでも、「一刻も早く不動産を現金にしたい売主」が掘り出しモノの発生源となるのです。


2.掘り出しモノは誰が買っているのか

このようにして生まれる掘り出しモノですが、一般の方が購入されるケースはほぼありません。どころか、存在すら知らされることもありません。

では、だれがこのようなおいしい物件を手にするのか。はい簡単。開発業者や不動産業者です。

業者さんたちは常に商品としての不動産を「仕入れ」物件として探しています。これ別に不動産業界だけじゃないですよね。安く買って高く売る。ごくノーマルなビジネスです。できるだけ安く仕入れて売れるように手を加え、利益を乗せた価格で購入してくれる一般のお客さんを探します。

掘り出し物が出るという情報は、最初その売主から相談された不動産業者や売主の財産を管理する金融機関が持っています。そこから直接買ってくれそうな業者に情報を知らされます。

情報を知らされた開発業者や不動産業者は、購入金額・登記などの手続きに要する費用・メンテナンス費用・売却可能な相場などから総合的に判断し、短時間で購入するか否かを判断します。購入すると決まれば、早ければ一週間ほどで決済(資金を売主に支払い、登記手続きに入る)を完了することもあります。


3.不動産業者じゃないあなたになぜその情報は届かないのか

あなたに、すっごく仲の良い不動産の営業さんがいたとしましょう。その営業さんがあなたにピッタリの掘り出しモノ物件の情報を掴んだとしましょう。それでも、その営業さんは掘り出しモノ物件の情報をあなたに知らせることは、まず無いと思ってください。

あなたはおそらく、今用意できる自己資金と、年収や月々支払可能な金額をもとに算出した購入可能な価格帯を、その営業さんに伝えているはずです。

しかし、いざ掘り出しモノがでたと聞いたあなたはどんな動きをするか考えてみてください。

情報入手

つぎの週末に物件を見に行く

本当に購入するか考える。家族会議を開く。

(時には親に相談したりする)

購入することを決断し銀行にローンの審査を受ける

ローンの審査が良ければ手付金を支払い購入契約を締結する

(審査の結果が悪ければここで終わり)

ローンの実行・残高の支払い・物件の引き渡しが行われる

一般の方が物件を購入するとき、だいたいこんな流れになります。状況によってはなかなか物件を実際に見ることができなかったり、見ても決断までに時間がかかったりします。

物件を見てその場で決断したとしても残金の支払いまでにどんなに短くても2週間ぐらい、通常1ヶ月ぐらいの時間が必要となります。

それが業者になると

情報入手

その日に物件を見て権利関係などの状態に問題なければ1日か2日で購入決定。

現金があれば早ければその週内、金融機関から融資が必要な場合でも翌週には代金支払。

となります。一般の方と違って商品としての利益勘定だけなので悩む要素はありません。「もうちょっと日当たりがほしいなぁ。。」「前の道の交通量がちょっと気になるなぁ。。」とかありません。白か黒です。資金はあらかじめ出どころが決まっているのでイチから審査をすることもありません。

一刻も早く不動産を現金化したい売主は、一般のお客さんの「家族会議」とか「ローン審査」など待っていられないのです。家族会議の結果「やっぱり今回はやめておきます」となり、またイチから他の買い主を探すとか、ありえないのです。

なので、相場より大幅に低い金額であったとしても短い期間で現金に変えてくれる開発業者や不動産業者を買主として選択するのです。


4.だからあなたが目にする物件は相場に近いものばかりになる

掘り出しモノを購入した業者は、入手した物件をお客さんに提供できるようにメンテナンスし、市場に出します。ここで初めて一般の方はその物件の存在を知ります。しかし、その物件がもとは「掘り出しモノ」であったことなどは知らされず(聞いたら教えてくれる場合もありますが)、多くの適正価格物件のひとつとしてネットやチラシで紹介されることになるのです。

ここまで中古物件を前提に書いてきましたが、新築物件だとさらに「掘り出しモノ」を一般の方が目にする確率は低くなります。確実に建物代金などに利益を乗せて相場に合わせた価格設定となるからです。


以上、不動産に掘り出しモノなど無い(厳密にはあるが、一般の方がその情報を入手することはほぼ無い)ことをお伝えしてきました。

「何件見てもいい物件がない」と悩んでいるあなた、原因は予算です。今考えている予算を1.6倍ぐらいにしてみたら、ほぼ希望に叶う物件がでてきます。予算を上げることが難しいなら、広さ・場所・間取り、いずれかの条件を見直す必要があるでしょう。

買わない、という手もありますけどね。


田村でした。



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