羽生くん、東京ドームでアイスショーやったってよ
2023年2月26日。
この日、歴史に名を残したフィギュアスケーターがいた。
単独のアイスショーで東京ドームを満員にするという快挙を成し遂げた人物。
彼の名は、羽生結弦。
ここから、新たな伝説が、幕を開ける……。
(ここで壮大な音楽が流れる)
はい、というわけで、先日行われた羽生くんの東京ドーム公演に行ってまいりました!!!
昨年のプロローグ八戸公演に続き、今回もありがたいことに現地で生の羽生くんを見ることができました。
当日の現地の様子はもちろん、ここに至るまでの経緯を、私の個人的感想とともに綴っていきたいと思います。
例によって長くなると思うので、お時間のあるときに読んでいただければ幸いです。
1.『プロローグ』最終日のビッグサプライズ
話は去年にさかのぼる。
2022年12月5日。
この日は、羽生くんの単独アイスショー『プロローグ』の最終日。
全国の映画館でのライブ・ビューイング、さらにCS放送での生中継もあり、大勢の方々が羽生くんの演技に注目していた。
そこで、とんでもないサプライズが待ち受けていた。
「2023年2月26日、羽生結弦単独東京ドーム公演『GIFT』開催決定!!!」
私はSNSでその情報を知ったのだが、一瞬わけが分からなかった。
『プロローグ』ではチケット争奪戦となり、「もうこうなったら東京ドームでやるしかないじゃん」みたいなことをファンの方々が言っていた。
実際、私も横浜のチケットが取れず、もっと大きい会場でやってもいいんじゃないかと思っていた。
でも、それがこんなに早く実現するなんて思ってもいなかった。
しかも、あの東京ドームで。
東京ドームといえば、野球の試合だけでなく、数々のアーティストのライブが行われてきた場所だ。
AKB48も、デビューしたときから東京ドームでのコンサートを目標に掲げており、2012年に見事その目標を達成した。
それほど、東京ドームは特別な場所だ。
そこで、史上初となるアイスショー、しかも単独のアイスショーを、羽生くんがやる。
さらに、Perfumeのライブの演出などを手がけるMIKIKO先生が、今回のアイスショーの演出に携わるということで、羽生くんのファン以外からも注目を集めることとなった。
「これは東京ドームといえど油断できないな……」と私は思った。
2.チケット申し込み、どうすべき?
チケットの最速先行抽選が始まり、私もすぐに申し込んだのだが、どのように申し込むべきかかなり悩んだ。
今回はSS席、S席、A席、そして車いす席が用意されており、第3希望まで申し込めるようになっていた。
(ここから車いす席については省略させていただく。)
当然のことながら、SS席が一番リンクに近いので、なるべく近くで羽生くんを見たければ、SS席の方がいい。
だが、競争率が高くなることを考えると、遠くてもA席にした方がいいという考え方もある。
今回はSS席単願と勝負に出る方も多かったと思うが、私にそこまでの勇気はなかった。
とにかく東京ドームで羽生くんを見られればいいと思い、A席、S席、SS席の順番で申し込んだ。
果たして、結果はどうなるのか。
ドキドキしながら当落発表を待った。
3.「#東京ドーム全滅」
そして、2022年12月20日。
運命の当落発表の日。
実を言うと、私は先に結果を知ってしまっていた。
八戸公演のときにも書いたが、「クレジットカードの利用可能額が変動したかどうかで当落が分かる」という手法を使ったのだ。
発表の前日にクレジットカードの利用可能額を確認し、朝起きてから再び利用可能額を調べた。
すると、明らかに金額が変わっていた。
控えておいた前日の金額と比較すると、ちょうどA席分の金額と一致した。
これは期待してもいいんじゃないか!?
Twitterをのぞいてみると、同じような手法で当落を確認している方がたくさんいた。
「クレカが動いた!!!」とか「まだ動いてない(泣)」とか、さまざまな声が飛び交う中、とりあえず18時の結果を待つことにした。
そして18時。
思ったより早くメールが来た。
結果は当選。
事前に調べていたとはいえ、100%確定か分からなかったので、ようやくこれで安心できた。
一方、Twitterは大盛り上がり。
当選した方、落選した方、それぞれの思いの丈が綴られていた。
そして出ました、「#東京ドーム全滅」。
なんというパワーワード。
「いっそのこと東京ドームでアイスショーをやってくれ!!!」という言葉が現実になったのに、それでも落選した方がたくさんいるなんて。
横浜や八戸に比べたらいい方なのかもしれないが、それにしてもちょっとこれはレベルが違いすぎる。
羽生結弦、恐るべし。
4.チキって正解?
やはり気になるのは、申し込み方によって当選確率が変わるのかどうかだ。
今回も、くるみっこ様のアンケート結果を掲載させていただく。
あくまで参考ではあるが、これによると、約半数の方が落選という驚くべき結果が出ている。
一応確認だけど、東京ドームですよね?
ちっちゃいライブハウスとかじゃないですよね?
「こうなったらもう琵琶湖凍らせるしかない」というツイートが話題になっていたが、冗談抜きでそれぐらいしないと全員見られないのではないだろうか。
そして、注目すべきなのは席種の希望順による当選確率の違いだ。
例えば、SS席単願で申し込んだ場合の当選確率は約40%と低めなのに対し、A席を第1希望にした場合の当選確率は90%以上とかなり高めだ。
また、SS席やS席を第1希望にしていても、A席を第2希望に入れておけば、当選確率はかなり高くなるようだ。
(その場合、当選するのはA席がほとんどのようだが。)
私はとにかく東京ドームで羽生くんの演技が見られればいいと思っていたので、A席を第1希望にしたのは大正解だったということになる。
もちろん、なるべく近くで羽生くんを見たいならSS席単願という選択もあったと思うが、その場合はかなり危ない橋を渡ることになっていただろう。
この時ばかりは、自分がチキンでよかったと心から思った。
どんなに遠くても、たとえ羽生くんの顔が見えなくても、とりあえず最速先行でチケットを取れたということが何より嬉しかったので、後悔は一切ない。
きっと、落選して悲しい思いをしている方もたくさんいると思うが、行きたい人全員がチケットを取れたらいいな〜と思った。
5.紅白歌合戦の羽生くんについて語らせてくれ
さて、『GIFT』の話とは全然関係ないのだが、去年の紅白歌合戦で、羽生くんが審査員として出演していたのを、皆様はご覧になっただろうか。
もともと、私は毎年必ず紅白を見る派で、たとえ自分のお目当ての歌手が出ていなくても、「大晦日といったら紅白でしょ!」という感じで、最初から最後まで見るようにしている。
そこへ、羽生くんが審査員を務めるというニュースが飛び込んできた。
もともと紅白を見るつもりがなかった人も、「羽生くんが出るなら」と一気に心変わりしたようだ。
私も紅白を見る理由が一つ増えたと思い、とても楽しみにしていた。
そして、いよいよ本番がスタート。
実はこのとき、父が体調を崩して寝込んでおり、母も出勤していて帰ってくるのが遅かったので、私は途中まで一人で紅白を見ていた。
冷蔵庫の残り物を漁って食べるという、年越し感ゼロの食卓だったが、そんなことはどうでもよくて、羽生くんが映るたびに「あっ、羽生くん!」と盛り上がっていた。
袴姿の羽生くんはとても麗しく、私は勝手に「若様」と呼んでいた。
コメントを求められた黒柳徹子さんが、マイクとペンライトを間違えてしまったとき、隣に座っていた羽生くんがすかさずフォローしていたのがバッチリ映っていたし、どんな曲でもノリノリで盛り上がっている羽生くんは本当に素敵だった。
そして、一番盛り上がったのはやはりback numberのときだろう。
1曲歌い終えた後、なんとサプライズで『高嶺の花子さん』を披露したのだ。
そのとき、羽生くんが「マジか」とつぶやいたのを、カメラはしっかり捉えていた。
曲が終わり、コメントを求められた羽生くんは涙ぐみ、うまく話せない状態になっていた。
私は知らなかったのだが、羽生くんはback numberの大ファンだそうだ。
あのサプライズも、さぞ嬉しかったことだろう。
それにしても、普段あれだけしっかり話せる羽生くんがあんなに言葉に詰まるなんて、推しを目の前にしたときの反応はみんな一緒なんだなと思った。
そのときの羽生くんについて私がツイートしたことがちょっとだけ拡散されたので、ここに載せさせていただく。
羽生くんはプロ転向を表明してからも、休むことなく走り続けている。
そんな羽生くんが、大好きなアーティストの演奏を目の前で見ることができて、少しでも元気になれたなら、ファンとしてこれほど嬉しいことはないと思ったのだ。
そんなこんなで、2022年の紅白も無事に終了し、2023年を迎えた。
6.まだまだ続くチケット争奪戦
年が明けて2023年になったが、『GIFT』のチケットを手に入れられていない方はまだまだたくさんいた。
私は幸い年が明ける前に当選することができたので、早々に戦線離脱したのだが、何度も抽選に参加し、落選が続いている方々の嘆きを目にするたびに、なんとも言えない複雑な気持ちになっていた。
私も最速先行で当選していなかったら、落選続きでメンタルをやられまくっていたかもしれない。
これに関しては運の問題なので本当にどうしようもないのだが、なんとかみんながドームに行けるよう、祈ることしかできなかった。
そんな中、3月に宮城県のセキスイハイムスーパーアリーナでアイスショー『notte stellata』を行うことが新たに発表された。
『GIFT』だけではなく、こちらも争奪戦になるだろう。
ちなみに私は、現地参戦は遠慮した。
八戸のときとは違い、会場までのアクセスがそれほど良くないので、遠征初心者にはかなり難易度が高いと思ったのだ。
時間的に見ると新幹線で日帰りも可能だとは思うが、やはり身体的・金銭的負担を考えて、抽選には参加しないことにした。
その代わり、最終日にライブ・ビューイングをやってくれるんじゃないかと勝手に期待しているので、もしやるのであればそちらにはぜひ参加したい。
(追記:その後、ライブ・ビューイングが全公演行われることが決まり、最終日に観てきました。羽生くんの葛藤が伝わってきて苦しくなることもあったけど、とても素敵なショーでした。)
余談中の余談だけど、スペシャルゲスト発表のときの羽生くんの動画見た?
「明日発表です!」って言ってるのに、身体の前で腕を縦に並べるポーズやっちゃってんのよ。
おいおい、それは内村航平さんのあのポーズじゃないか。
羽生くん、それはもはやヒントではなく答えなのよ。
きっとあの動画見た人ほぼ全員分かっちゃってたよ。
で、いざ「スペシャルゲストは内村航平さんです!」って言われても、「ですよね〜」っていうリアクションしかできなかったよ。
羽生くんアレだな、ゲームでヒント出す側になっても、答え言っちゃってアウトになるタイプだな。
私には見えるよ、「ヤバッ、答え言っちゃった!」って慌てる羽生くんの姿が。
……まあかわいいからよしとしよう。
7.グッズが来たどーーー!!!
そうこうしているうちに、注文していたグッズが届いた。
私が一番気になっていたのはボアブルゾンだ。
私はLサイズを注文したのだが、どうやらかなり大きめのようで、「Mサイズでもよかったかもしれないな〜」と一瞬思った。
いざ着てみると、確かに袖が少し長めでダボッとした感じだったが、これはこれでアリだと思った。
モコモコであったかいし、白くてかわいいし、当日はたくさんの人がこれを着て東京ドームに集まるのかと思うと、とても楽しみだった。
そしてなんといっても、公式さんが上げてくれた羽生くんのブルゾン姿が最高すぎて、一人で盛り上がってしまった。
「羽生くんのブルゾン姿が見たい」っていう声はずっと前からたくさんあったけど、このタイミングで出すとか、ファンのツボを押さえてるよね〜。
早すぎず遅すぎず、ちょうどいいタイミング。
この世に「グッドタイミング賞」があったら間違いなく選ばれてるよ。
あと、アフターパンフレットと特別新聞の販売が決まったからすぐに申し込んだけど、案の定アクセスが集中し、けっこう時間がかかった。
アスマートを利用した方が、「なんか重いなと思ったら羽生くんのグッズ販売してるのか」って言ってて、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
そうなんです、ご迷惑おかけしてほんとすみません……。
8.もはや地球規模の羽生くん
今回私が最も驚いたのは、配信の規模だ。
まず全国の映画館でライブ・ビューイングをやるだけでも十分すごいのに(しかもディレイ・ビューイングまである)、私も感覚が麻痺してしまい、この程度では驚かなくなってしまっていた。
いやすごいんだよ???めっちゃすごいことなんだよ???
なのに「ふ〜んそっか〜」ぐらいにしか思わなくなってるのさすがにヤバいでしょ???
しかし、さすがの私でも驚くことがあった。
まず、国内限定だがディズニープラスで独占配信されることが決まった。
ディズニープラスに加入しておけば、当日だけでなく、後からも配信が見られるとのことだ。
ディズニーファンの友達が最近ディズニープラスに加入したと連絡をくれたので、「羽生くんのドーム公演配信するから見て!!!」とゴリ押ししておいた。
しかし、これだけでは終わらない。
なんと、全世界に向けた配信も行うことが決定したのだ!!!
これには世界中のファンが喜んだことだろう。
ただし、中国大陸と北朝鮮は除くとのことだ。
中国には羽生くんの熱烈なファンがたくさんいるのに、世界規模の配信が見られないなんて残念すぎる。
私は大学生のときに上海に行ったことがあるのだが、普段使っているSNSは全くと言っていいほど使えなかった。
Twitterはもちろん、LINE、Facebook、Instagram、YouTubeなど、ありとあらゆるSNSに規制がかかり、見ることもできないのだ。
VPNを使えば何とかなるようだが、そちらへの規制も強まっており、いつ見られなくなるか分からないような状態らしい。
実際私もVPNを使って接続を試みたが、あまりうまくいかなかった記憶がある。
YouTubeやTwitterで中国のファンと思われる方のコメントをたくさん目にする機会があるが、厳しい規制と格闘しながらなんとかアクセスしている方もいるのだろう。
今回の配信も、そんな感じでゴニョゴニョやればもしかしたら見られるのかもしれない。
一人でも多くの方が羽生くんのドーム公演を見られればいいなと思った。
9.いざ、東京ドームへ!!!
本番が近づいてくるほど、ワクワクと緊張も高まっていった。
ディズニープラスのCMでも羽生くんの東京ドーム公演の宣伝をしてくれていて、CMを見るたびに「いよいよなんだな〜」という気持ちが強くなっていった。
最後に東京ドームに行ったのは確か5年前。
Nissyファンの友達に誘ってもらって、彼のライブに参戦したとき以来だ。
しかし、肝心のドームに関する記憶はほとんどなく、トイレがどうだったとかも全然覚えていない。
なので知識はほぼゼロの状態だ。
ただ、Twitterにはドーム公演を何度も経験している先輩方がたくさんいて、有益なアドバイスをいろいろと書き込んでくれていた。
荷物を床に置くときは大きなゴミ袋(なるべく音がしないもの)に入れるといいよとか、トイレはここがオススメだよとか、そういった情報を見るたびに、何も知らない私は「ありがてえありがてえ」とひたすら感謝していた。
やっぱりSNSが発達している時代に生きててよかったと改めて思う。
今までSNSをやっていて嫌な思いや悲しい思いをしたこともたくさんあるけど、こうやってみんなで情報を共有したり、励まし合ったり、喜び合ったりできるところは、SNSの良さだと思っている。
日本中、世界中のファンの方々が、ドーム公演を心待ちにしている。それをSNSを通して見ることができる。
これほど素晴らしいことはない。
なんやかんやで前日は寝るのが遅くなってしまい、当日も朝8時前には起きたので、寝不足ではあったのだが、変なテンションになっているせいか、そこまで辛くはなかった。
「赤飯や餅を食べるとトイレに行かなくても長時間耐えられる」というアドバイスがあったので、その言葉を信じ、家を出る前に赤飯を食べた。
寒さ対策をしっかりするように公式からお知らせがあったので、ボアブルゾンの上にもう一枚着た方がいいと思い、八戸遠征のときもお世話になったユニクロのダウンジャケットを着ようとしたのだが、ボアブルゾンが分厚すぎて入らなかった。
仕方なく荷物として持って行こうと思ったのだが、これまたうまくいかず、結局ボアブルゾンだけで家を出ることを決めた。
私は割と時間にルーズな方で、家を出るのが当初の予定より少し遅れてしまったのだが、なんとか到着した。
ドームに近づくにつれ、人の数も増えていった。
会場の周りには、私と同じボアブルゾンを着たたくさんのファンが詰めかけていた。
これだけの人が、羽生くん一人のためだけに集まっているのだと考えると、一気にテンションが上がった。
あらかじめ指定されたゲートの列に並び(私は30ゲートだった)、荷物検査とチケットのチェックを済ませ、リングライトを受け取った。
果たしてこのリングライトを使って、どのような演出が行われるのか、とても楽しみだった。
入場して驚いたのは、トイレの待機列だった。
赤飯パワーのおかげか、私はトイレに行きたいと思わなかったのでそのまま自分の席に向かったが、「待ち時間40分以上となるおそれがあります!!!」とスタッフの方が声を張り上げているのが聞こえ、耳を疑った。
えっ、40分!?!?!?ディズニーのアトラクションかよ!!!
SNSでも事前に注意喚起があったので覚悟はしていたが、まさか本当にそこまで並んでいるとは。
赤飯食べてきてよかった。
階段を上がり、いよいよ中に入った。
私は2階席だったのだが、リンク全体がよく見える、なかなかいい席だった。
ただ、入った瞬間、あまりの高さに足がすくんでしまった。
会場内は一切撮影禁止のため、写真を貼れないのが悔しいのだが、まず見えたのは巨大な手とオーケストラ。
もしかして生演奏やるってこと???
その下には、綺麗に整備されたアイスリンクが。
いよいよ、壮大な物語が始まるんだ。
そう思うとワクワクした。
さらに嬉しかったのが、マスクをした上での声援や歓声がOKになったことだ。
アナウンスと同時に会場内からは自然と拍手が起こった。
17:00を過ぎた頃、ついに物語が幕を開けた。
10.記憶が追いつかないので整理させてくれ
結論から言うと、私の語彙力ではうまく言い表せないことだらけだし、いろんなことがありすぎて記憶が追いつかなかった。
ディズニープラスに加入して改めて公演を見直し、自分の記憶を補完しながらどうにかこうにか書いていきたいと思う。
(1)前半
まず、オーケストラの方々がスタンバイし、会場内が暗くなると、羽生くんの優しい声が響いた。
それから壮大な音楽とともに、巨大ビジョンに羽生くんのこれまでの軌跡をたどる映像が流れた。
巨大ビジョンとリンクをつなぐように、大きな滑り台のようなものが設置されていたのだが、どうやらそれも映像が映し出されるスクリーンになっているようだった。
その滑り台が徐々に真ん中で分かれていき、隙間から神々しい光が漏れ出す。
次の瞬間、その隙間から羽生くんがクレーンに乗って登場したのだ。
後ろのビジョンには火の鳥のような映像が流れていて、羽生くんも火の鳥をイメージしたような衣装を身にまとい、両手を広げていた。
例えが合っているか分からないが、去年の紅白歌合戦で氷川きよしが巨大なフェニックスに乗って歌ったときと似ていると思う。
羽生くんはただのクレーンに乗っているだけだったが、後ろの映像とのコラボが本当に美しかった。
クレーンが徐々に降下し、リンクに降り立った羽生くんが滑り始める。
リンクには映像が映し出され、近くでは炎が上がる。
まるでジャニーズのコンサートのようなド派手な演出に度肝を抜かれた。
羽生くんがリンクを後にすると、巨大ビジョンに映像が流れ、そこに羽生くんの語りが加わった。
この流れを何度か繰り返したのだが、どの映像も本当に美しかった。
ビジョンだけではなく、リンクにも映像が映し出されることで、全体がまるで一つの巨大なスクリーンのようになっていた。
さらに、リンクの外側にも小さいスクリーンがいくつも置かれていて、そこにも映像が投影される仕組みになっていた。
こんなアイスショーは今まで見たことがなかった。
『火の鳥』、『Hope & Legacy』、『あの夏へ』、『バラード第1番』。
どのプログラムも本当に素晴らしかった。
『あの夏へ』では、ダンサーの皆さんも加わり、幻想的な世界観を作り出していた。
『バラード第1番』では、まずビジョンに大きな羽生くんが現れて滑り始め、その後に実物の羽生くんが出てきて滑るという演出だった。
次にビジョンに映し出されたのは、羽生くんが小さい頃からの歩みをアニメーションにしたもので、『Otoñal』がBGMとして流れていた。
知識があまりない私でも、「この動きはあのプログラムを滑ってるときのやつかな」となんとなく分かるものもあって面白かった。
そして、ビジョンに「2022.02.10 Beijing Olympics」の文字が映し出されると、日付が動き出し、「2023.02.26」になった。
ジャージを着た羽生くんがリンクに登場。
プーさんのティッシュケースも一緒だった。
ビジョンに「6:00」という数字が映し出されると、カウントダウンが始まった。
『プロローグ』のときに行った6分間練習を、ついに東京ドームでもやったのだ。
羽生くんは、「東京ドームに氷を張る男」だけではなく、「東京ドームで6分間練習をする男」にもなっちまった。
そして、羽生くんがジャージを脱ぐと、会場からは大きな歓声と拍手が湧き起こった。
羽生くんが着ていたのは、『序奏とロンド・カプリチオーソ』、通称「ロンカプ」の衣装だった。
去年の北京オリンピックのショートプログラム。
羽生くんはこの曲に合わせて滑ったのだが、冒頭の4回転サルコウに挑んだ際、リンクの穴に足をとられ、ジャンプが1回転になってしまったのだ。
結局、ジャンプのミスが響き、点数は思うように伸びなかった。
羽生くんにとっては因縁のプログラムだ。
それをあえて東京ドームで、大勢の人が見守る中で、もう一度滑ろうとしている。
とんでもなく勇気がいることを、羽生くんはやろうとしているんだ。
頑張れ。
落ち着いて。
私は心の中でひたすら祈っていた。
そして6分間練習が終わり、羽生くんの名前がコールされると、勢いよくリンクに飛び出した羽生くんに、大きな声援と拍手が送られた。
会場が静まり返り、羽生くんがスタンバイすると、曲が流れ始めた。
冒頭の4回転サルコウ。
見事な着氷だった。
会場から歓声と拍手が湧き起こった。
その後もジャンプを成功させ、見事な演技を披露した。
演技が終わると、会場は大歓声と拍手に包まれた。
ビジョンに映った羽生くんは涙ぐんでいた。
リンクを去るとき、羽生くんは冒頭の4回転サルコウを跳んだあたりの氷に触れていた。
オリンピックという大舞台で失敗してしまったプログラムをもう一度滑ることへの恐怖や不安もあったはずだが、無事に成功して本当によかった。
羽生くんがあのときの悔しさや苦しみから少しでも解放されればいいなと、勝手ながら思った。
(余談中の余談中の余談だけど、羽生くんの演技を見て泣いたことがほとんどないんだよね。
去年初めて生で羽生くんを見たときも、もちろん感動したんだけど涙が出なくてさ。
今回もTwitterで「涙が止まらなかった」って書いてる人たくさんいたけど、私は何を見ても全然泣けなかったの。ドライでごめんね羽生くん(笑)。
ドラマとかドキュメンタリー見て泣くことはたくさんあるのに何でだろうね、不思議だよね。
羽生くんがいろいろすごすぎて涙が引っ込んじゃうのかな。)
羽生くんがリンクを去ると休憩のアナウンスが流れたのだが、「40分」というワードに会場内はざわついた。
休憩時間40分はさすがに聞いたことがなく、私も一人で笑いそうになってしまった。
でも、Twitterを見たり、noteを書いたりしているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまった。
(2)後半
リンクに向かって何人か歩いてきた。
ギターを持っている方もいた。
リンクの外側の小さいスクリーンの上に乗ると、演奏が始まった。
曲は『Let's Go Crazy』。
ギターソロのところめっちゃかっこよくて最高だった。
そして羽生くんが登場。
衣装が、衣装がもう最高にかっこよかった。
胸元がざっくり開いてて、DAIGOさんの手袋の白いバージョンみたいなやつつけてて、なんかもうよく分からんけど最高。
衣装のこととか全然詳しくないんだけど、この衣装って初お披露目だったのかな?
とにかくめっちゃよかった。
すぐに次の曲、『Let Me Entertain You』の演奏が始まり、羽生くんが滑り始めた。
すると、私たちが持っているシンクロライトが自動で点灯し、さまざまな色に変わっていった。
客席から見てても本当に綺麗だった。シンクロライトの技術ってマジすげえよな。
あと、ディズニープラスの見逃し配信があって本当によかったと思うのは、羽生くんの細かい動きや表情まで見られること。
歌を口ずさみながらお客さんを煽りまくる羽生くんは本当にかっこよくて、まさにエンターテイナーだった。
最後は膝をつきながら豪快に滑るショーシャンクの空にポーズ(勝手に名付けた)で演技を締めくくった。
電子音のような音楽が流れ、レーザー光線がドームの天井を照らした。
再びダンサーさんが現れ、小さなスクリーンの上で踊り始めた。
「できなきゃ意味がない」とか、「できない自分なんか、存在する意味がないんだ」とか、まるで羽生くんの苦しみを表すような言葉が出てきた。
「こんな僕のこと、誰がわかる?
一生わからない。わからない!」
GAME OVER
「ねえ、あんたわかっちゃいな〜〜〜い!!!」
いきなり流れる音楽。
私もテンションが上がった。
これは、『阿修羅ちゃん』だ!!!
ものすごくファンというわけではないが、Adoさんの曲はいくつか聴いたことがあり、もちろん『阿修羅ちゃん』も知っていた。
「こんな僕のこと、誰がわかる?
一生わからない。わからない!」
からこの曲にいくのはお見事。
羽生くんは赤シャツに青のネクタイをしていた。
羽生くん、あなた本当に何でも似合うのね。
ここの演出ですごかったのは、リンクの周りに3Dの羽生くんの映像がいくつも出てきて、本物の羽生くんと一緒に踊っていたことだ。
今の技術ってほんとすげえなと思った。
途中で羽生くんが寝っ転がって脚をバーンと上げるシーンがあったのだが、FaOIの『レゾン』でも似たようなことをやっていた気がする。
ヴァネさんがYouTubeで興奮気味にそのときのことを話していたので、私もよく覚えていた。
後から知ったのだが、『阿修羅ちゃん』は羽生くん自身が振付を考えたそうだ。
(YouTubeのコミュニティでこっそり訂正してたのも羽生くんらしくて非常にかわいかった。)
ということは、羽生くんはファンの需要を分かっててあの脚バーンの振付を入れたのかもしれない。
……君は天才か?
あと分かる人には分かると思うけど、個人的に好きなのは「仰せのまま」で首をクイッと傾けるところなんだよね。
そして何よりステップが死ぬほどエグい。
これを地上ではなく氷の上でやるのがどれほど難しいか、ど素人の私でも何となく分かる。
羽生くんマジ化け物だな(褒めてる)。
次にビジョンに映し出されたのは、黒いコートを着た羽生くんが一人で話す映像だった。
簡単に言うと、ポジティブなことを言う羽生くんと、ネガティブなことを言う羽生くんが会話をしている感じだった。
映像の中で羽生くんの髪型が2種類あったけど、それぞれの役を表現してたのかな。
左にハネさせてる髪型が個人的にめちゃくちゃ好きだったな〜。
そして二人の羽生くんが向かい合い、手を伸ばすと、映像が切り替わり、仮面をつけた羽生くんが映った。
ここで本物の羽生くんが登場し、少し滑るとまたリンクを去っていった。
曲は『オペラ座の怪人』。
ビジョンにはシャンデリアが大きく揺れる映像が映し出された。
そしてシャンデリアが割れるような音がしたかと思うと、仮面をつけた羽生くんがビジョンに映り、伸ばした腕がビジョンの外にある巨大な手と一体化した。
あの巨大な手は羽生くんの手だったのだ。
まるで羽生くんの手がオーケストラを操っているかのようだった。
見事な伏線回収だ。
そして再び羽生くんがリンクに登場し、オーケストラの演奏に合わせて滑り始めた。
もうかなり疲れているはずなのに、全力で滑る羽生くんは本当に素晴らしかった。
再びビジョンに映像が映し出される。
黒いロングコートを着た羽生くんが何人も出てきてひたすら歩いていた。
リンクの外にある小さなスクリーンにも羽生くんが歩く映像が映し出された。
それと同時に、羽生くんのモノローグが流れた。
「夢は、覚めなきゃ」
この言葉が出てきたときに、次は『いつか終わる夢』を滑るんじゃないかと私は思っていたので、予想が当たって少し嬉しかった。
『プロローグ』のときにも披露したプログラムだが、プロジェクションマッピングとのコラボレーションが本当に美しかった。
後からディズニープラスで確認したところ、長方形になっているリンクのそれぞれの辺の真ん中に赤い点があるのが見えた。
おそらく、羽生くんはこの4つの点を頼りに自分の位置を把握していたのだと思うが、それにしても映像と自分の演技を合わせるのはかなり難易度が高いはずだ。
改めて羽生くんの能力の高さに驚いた。
演技が終わると、再びビジョンに映像が流れ始めた。
ぽつんと置かれた椅子に羽生くんが座り、前を向いて話し始めた。
途中で羽生くんの語りとシンクロするように、客席のライトが光った。
「僕は、独りだ」
そう羽生くんが言うと、「独りじゃない」の声に合わせてライトが光る。
なんて素敵な演出なんだろう。
まるで私たち一人ひとりが星の光になって、羽生くんを照らしているようだった。
羽生くんが椅子から立ち上がるところで映像が終わると、リンクに羽生くんが現れた。
滑ったのは『Notte Stellata』。
羽生くんの演技は、本当に指先まで美しいと改めて思った。
力強さと美しさを兼ね備えた羽生くんの滑りは、唯一無二だと思う。
途中、ビジョンに過去の羽生くんの映像が次々と流れる場面もあった。
あと、これはディズニープラスで確認して気づいたのだが、ジャンプを跳ぶ前に、羽生くんが自分の太ももの横を軽くポンと叩いていた。
おそらく、かなり疲れていたはずなので、そんな中でジャンプを跳ぶために気合いを入れていたのかなと思う。
ここまで一人で滑りきるのは本当に大変だったはずだ。
羽生くんほどの体力がなければできなかったことだと思う。
私が羽生くんのファンになりたての頃、羽生くんの課題は「体力」だと言われていた。
実際、フリーの最後の方でヘロヘロになった羽生くんの姿を何度も見たことがあった。
当時の羽生くんは、フリーを最後まで滑りきる体力さえもなかった。
それが今では、こんなすごい場所で、一人で何曲も滑るというとんでもないことをやってしまっている。
それは羽生くんが人一倍努力してきたからだ。
自分に体力がないことを分かっていて、体力をつけるためにたくさんのことをしてきたんだと思う。
羽生くんがマスクをつけたまま滑るというトレーニングをしていたのをなんとなく覚えているが、それも心肺機能を高めるためだった。
そんな努力をたくさんしてきたからこそ、羽生くんはこれだけの体力を手に入れたのだ。
いや〜、本当にすごいわ。
演技を終えると、再びクレーンが現れ、ビジョンには巨大な翼の映像が流れた。
羽生くんはクレーンに乗り、リンクを去っていった。
最後に、ペンで「Fin.」と書く映像がリンクに映し出された。
会場は拍手に包まれた。
エンドロールとともに、羽生くんがリンクで滑る映像が流れた。
曲はMrs. GREEN APPLEの『僕のこと』。
後から歌詞を見てみたが、羽生くんはきっと歌詞に共感してこの曲を選んだんじゃないかと思った。
「努力も孤独も報われないことがある」とか、まさに羽生くんが言っていたようなことだし。
こんなドンピシャな曲があるとはね。
曲が終わると拍手が湧き起こった。
そして、羽生くんが再びリンクに登場したのだが、なんとグッズのボアブルゾンを着ていたのだ!!!
これには私も大喜びだった。
やっぱりこのブルゾンは羽生くんが一番似合うわ。
羽生くんが協力してくれた皆さんのことを紹介していったのだが、「東京フィルハーモニー交響楽団」という言葉が羽生くんの口から出てきたとき、会場がどよめいた。
あまり詳しくない私でも知っている、超有名なオーケストラだ。
ディズニープラスで確認したら、エンドロールでちゃんと名前が出ていたのに、全く気づかなかった。
まさかこんな素晴らしい方々が演奏してくださっていたなんて、本当にすごいことだ。
そして、羽生くんが最後に武部聡志さんを紹介し、武部さんが「そしてそして、今日までですね、本当に練習を積み重ねて、深夜まで毎日練習を積み重ねて、今日ここまで滑りきりました、羽生結弦!!!」と羽生くんのことを紹介した。
そのとき、羽生くんが「えっ?あれ?」と言っていたのがかわいかった。
まさか自分のことを紹介されるとは思っていなかったらしく、武部さんの紹介が終わったらリンクを去るつもりだったようだ。
そして武部さんが「スタッフに大きな拍手を!」と言うと、羽生くんも拍手をし、「本当にありがとうございます!!!」と言いながら天を仰いでいた。
そして「武部さん、よろしくお願いします」と言うと、羽生くんはアンコールの準備のためにリンクを後にした。
なんと、武部さんはこの日のために『GIFT』という曲を作ってきたそうだ。
武部さんの奏でるピアノにバイオリンやハープの音色が重なり、とても美しかった。
そしてその流れで『春よ、来い』の演奏が始まった。
演奏が終わると、リンクに羽生くんが登場した。
滑る曲はもちろん『春よ、来い』。
こちらもプロジェクションマッピングが非常に美しかった。
一気にピンク色になるところとかすごく綺麗だったもんな〜。
羽生くんが滑り終わると、大きな拍手が湧き起こった。
次の瞬間、会場から大きなどよめきが上がった。
なんと『SEIMEI』が流れ始めたのだ。
アンコールって1曲で終わりじゃなかったのか!!!
しかもどうやらオーケストラの生演奏も加わっているようだった。
こんな贅沢なことがあるだろうか。
ビジョンには、『GIFT』の裏側を撮影したと思われるメイキング映像が流れていた。
そして羽生くんがリンクに登場すると、会場のボルテージは最高潮に達した。
羽生くんは最後の力を出しきるかのように、全身全霊をかけて滑っていた。
演技が終わると会場はスタンディングオベーション。
私もこのときばかりはさすがに立ち上がって拍手を送った。
膝掛けをしていることをすっかり忘れていて、終演後に膝掛けが思いっきり地面に落ちていたことに気づいたのはここだけの話だ。
羽生くんは一瞬だけリンクを去り、ジャージとヘッドセットマイクを身につけてすぐに戻ってきた。
そしてback numberの『水平線』が流れる中、歌詞を口ずさみながらゆっくりとリンクを一周し始めた。
途中でバンドやオーケストラの方々に拍手を送るよう促す場面があった。
そして改めてお客さんへの感謝の気持ちを述べた。
「正直ここまでくるのに、めちゃくちゃ辛かったです。
めちゃくちゃ頑張って練習してきました。
練習したことが、報われねえなって思うこともいっぱいありました。
皆さんの期待に応えられるか本当に分かんなくて、辛い時期もありました。
誰の心にも残らないことも、目に焼きつくことのない日々も……。
でもやっぱスケート好きでよかったです!」
そう言うと、羽生くんはリンクを縦横無尽に駆け回った。
まるで幼い子どもが、原っぱを思いっきり駆け回るようだった。
辛いこともたくさんあったと思うけど、羽生くんは本当にスケートが好きなんだと改めて感じることができた。
「今日は、本当に、ありがとうございました!
今日という日が、皆さんの人生にとって、今日だけでもいいんで、記憶の中に残って、辛い日々の中で、少しでも、帰れる日々となりますように!帰れる記憶となりますように!
本当に、ありがとうございました!」
羽生くんはそう言うと、最後にお決まりの「アレ」をやるために息を整えた。
「ちょっとだけ……、ちょっとだけ、ちょっとだけ静かにしてくださいね。(会場笑い)
頑張るんで(笑)。
(ヘッドセットを外す)
ありがとうございましたーーー!!!」
会場はひときわ大きな歓声と拍手に包まれた。
羽生くんは右手を斜め上に上げながらゆっくりとリンクを去っていった。
こうして、一夜限りの特別なショーは、大盛況のうちに幕を閉じたのだった。
11.羽生くんからのGIFTはでかすぎた
ドーム公演は無事に終了したが、あまりにもいろいろなことがありすぎて記憶が追いつかず、私は必死に頭の中を整理していた。
ドームの外に出て写真を撮り、駅へと向かった。
あ〜、終わってしまった。
羽生くんすごいな、かっこよかったな。
ここまで作り上げるの大変だっただろうな。
私は歩きながらそんなことを考えていた。
本当に夢だったんじゃないかと思うぐらい、贅沢な時間を過ごさせてもらった。
近くを歩いていた人が、「チケット安すぎだよね!」みたいなことを話していた。
本当にそのとおりだ。
何日もかけて東京ドームに氷を張って、セットを組み立てて、光と炎を使ったド派手な演出に、一流のオーケストラの生演奏まであって。
しかも公演はたった一日。
これでチケット2万円台は安すぎる。
グッズの売上や配信のチケット代なども含めれば利益は出るはずだが、現地のチケット代だけなら赤字になっていてもおかしくないレベルだ。
一般的に見れば2万円台のチケットは気軽に買えるものではないし、「金儲けだ」という声も一部ではあったかもしれない。
しかし、今なら胸を張って言える。
これは決して金儲けのためではないと。
羽生くんは、ただ自分が表現したいものを、全力で届けたかったんだと思う。
MIKIKO先生をはじめ、武部聡志さん、東京フィルハーモニー交響楽団の皆さん、スペシャルバンドの皆さん、その他にもたくさんの方々が今回のアイスショーに携わっているが、ここまでできたのは間違いなく羽生くんだからだと思っている。
というか、羽生くんじゃないとここまでできないよ。
『プロローグ』のときも驚いたけど、あれだけの演目をたった一人で滑るなんて、普通のアイスショーではあり得ない。
『SEIMEI』が流れたとき、「えっ、羽生くんまだ滑るの!?」と私は正直思ってしまった。
もちろんたくさんの演目をやってくれるのは嬉しいんだけど、羽生くんの体力が心配だった。
ここまで何曲も滑ってきてしんどいはずなのに。
いくら途中からとはいえ、衣装チェンジのことを考えると、休んでいる暇などないはずだ。
それでも『SEIMEI』の衣装に着替えた羽生くんが登場すると、会場は一気に盛り上がった。
私も手拍子で応援した。
『プロローグ』のときもそうだけど、自分がケガをしたり体調を崩したりすれば、ショーを行うことができなくなってしまうかもしれないという状況で、羽生くんはプレッシャーと必死に闘っていたんじゃないかと思う。
会場は東京ドームで、公演は一日限り。
さらに、日本だけでなく、世界中に生配信されるビッグイベントともなれば、そのプレッシャーは『プロローグ』のとき以上に大きかったのではないだろうか。
それでも羽生くんは見事にやりきった。
こんなことができる人は、後にも先にも羽生くんただ一人だと思う。
とてつもなく大きな、両手で抱えきれないほどのGIFTを、羽生くんは私たちにくれたんだ。
なんならもう受け取る側がキャパオーバーでついていけないぐらいだ。
羽生くんって、すごいよね(小並感)。
12.羽生くんは一人じゃないよ
2次元の世界から飛び出してきたようなルックスに、高いスケーティングの技術。
もちろんそこも魅力ではあるのだが、彼の人柄こそが、人を惹きつける一番の魅力だと私は思っている。
謙虚で礼儀正しく、周囲への気遣いや思いやりを忘れない。
ナルシストな部分もあるとは思うけど、羽生くんぐらいの人がナルシストじゃなかったら逆におかしくない(笑)?
でも、そういう部分はあまり表に出さず、常に上を目指して努力し続けている。
そして、これだけ人気と知名度があるのに、どこか影があり、少しでも手を離したら壊れてしまいそうな危うさも持ち合わせている。
たくさんの人が彼を応援しているのに、彼は孤独を感じ、不安と闘っているように見える。
ドームで見たあの映像。
そして、羽生くんのモノローグ。
どこまでかは分からないけど、羽生くん自身の心の叫びもきっと入っていたと思う。
アスリートへの誹謗中傷が徐々に問題視されるようになってきたが、アスリート自身が声を上げるのはまだまだ難しいのが現状だと思う。
羽生くんも、きっと今までたくさん傷ついてきたはずだ。
どんなに応援する人がたくさんいても、どうしても心ない言葉の方が耳に届きやすい。
それでも羽生くんは、苦しみをほとんど表に出すことなく、常に「羽生結弦」であり続けた。
もしかしたらそれが余計に誤解を招いてしまったこともあったかもしれない。
正直、ファンの方々がTwitterでよく話しているフィギュアスケート界隈の事情みたいなのはよく分からないし、羽生くんが今までどんな思いをしてきたのか、詳しいことは全然知らない。
でも、私は11年前の世界選手権のフリーの演技を見てから、気づいたら羽生くんを応援したいと強く思うようになっていた。
まだガラケーだった高校生の頃、家のパソコンからYouTubeにアクセスして何度も何度も羽生くんの演技を見ていた。
羽生くんがテレビに映ると猛ダッシュでテレビに駆け寄り、釘付けになっていた。
現役時代はテレビ越しにしか応援できなかったけど、羽生くんが滑るたびに手を合わせ、「頑張れ」と祈っていた。
複雑な事情は知らないけど、とにかく羽生くんを応援したいという気持ちしかなかった。
こんなに素晴らしい人と同い年だなんて恐れ多いという気持ちもありつつ、同じ年に生まれたことをとても嬉しく思っている。
私は羽生くんの表面的な部分しか見ていないし、羽生くんが苦しんでいても何もできない。
世界中に大勢いるファンの一人でしかない。
でも、これから先、羽生くんが孤独を感じて苦しむことがあったら、「あなたの味方はここにいるよ」と伝えたい。
そんな風に思っている人は、きっとたくさんいるはずだ。
うまい言葉が思いつかなくて申し訳ないけど、羽生くんは一人じゃないよ。
羽生くんが傷ついていたことに気づけなくてごめんね。
辛いこともたくさんあったはずなのに、ここまでフィギュアスケートを続けてくれてありがとう。
ファンを大切にしてくれてありがとう。
そして、生まれてきてくれて、生きててくれてありがとう。
正直、私は人のことを悪く言うのがあんまり好きじゃない。
羽生くんを傷つけた人たちがいるならもちろんそれは許せないけど、その人たちのことを責めたり、攻撃したりすることは、私にはできない。
それじゃ、羽生くんを傷つけた人たちと同じになってしまうと思うから。
その代わり、羽生くんがもうこれ以上悲しい気持ちにならないように、羽生くんが安心してこれからの生活を送れるように、「あなたは一人じゃない」というメッセージを送り続けたい。
私はちっぽけな存在だし、影響力がある人間でもない。
でも、羽生くんとの出会いは、間違いなく私の人生にとって大きなものだったと思う。
羽生くんと同い年というだけで「この奇跡に感謝!!!」って思えるし、羽生くんのスケートを見られる時代に生きててよかったと心から思っている。
もはや羽生くんの存在自体が私にとっては「GIFT」なのだ。
たとえ羽生くんには届かなくても、ちっぽけな存在として、これからも羽生くんを応援していきたい。
今回のアイスショーを見て、改めてそう思った。
13.まとめ
今回もめちゃくちゃ長くなってしまったが、一言で言うと「羽生くん最高!!!」しかない。
あれだけのことを成し遂げてしまうなんて、本当にすごいと思う。
これから羽生くんがどんなことをやってくれるのか、ますます目が離せない。
とにかく羽生くんがケガなく健康に過ごせるように祈っている。
あと、ディズニープラスさんには本当に感謝したい。
もともと、アーカイブ配信は3月12日の23:59までの予定だった。
私も時間を作って必死に見ていたのだが、配信最終日の12日、突然ディズニープラスで『GIFT』が見られなくなってしまったのだ。
最初はこちら側の問題かと思っていたのだが、ディズニープラスで検索しても『GIFT』が出てこない。
あれっ?これはマズいのでは?
Twitterで検索してみると、他の方も同じような状況になっているらしく、自分だけではないということが分かり、少しホッとした。
しかし、私も含め、最後の最後まで堪能しようとしていた人たちにとっては大問題だ。
なんなら私あと50分以上残ってたんですけど!?
アーカイブが見られなければ、このnoteの続きもちゃんと書くことができないし、フィナーレの感動だって味わえないまま終わってしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。
Twitterは、『GIFT』を見られない方々の嘆きで溢れていた。
しかし、ディズニープラス側の対応は早かった。
復旧作業の進捗や、12日中には復旧できなさそうだという報告をしっかりTwitterでしてくれた。
私は、「騒いだって今すぐどうにかなる問題じゃないし、落ち着いて続報を待つことにしよう」と思った。
そして、後日ディズニープラスから、アーカイブ配信の期限を3月31日まで延長するとの発表があったのだが、もちろん私含めみんな大喜びだった。
復旧作業にあたってくれた方や、対策を協議してくれた方もいただろう。
そんな方々の迅速な対応のおかげで、もう一度『GIFT』を見ることができたし、noteの続きもバッチリ書くことができた。
こんなにありがたいことはない。
私たちの気持ちを汲み取って動いてくださったディズニープラスさん、本当に本当にありがとうございます!!!
しかし、人間とは欲張りなもので、こうなってくると次はBlu-rayがほしくなってしまうのだ。
こんな素晴らしいものを手元に残しておけないなんて悲しすぎる。
関係者の皆様、難しい問題なのは重々承知しておりますが、どうか、どうかご検討いただけないでしょうか。
よろしくお願いします!!!(土下座)
最後までまとまりがないままで本当に申し訳ないですが、いい加減終わりにしようかと思います。
もはやここまでくると論文ぐらいの長さですが、読んでくださった方がもしいたらめちゃくちゃすごいです。
私は手先も器用じゃないし、むしろそういうものから逃げてきたような人生なので、他のファンの方のように何か作るとか、絵を描くとか、そんなことはできません。
こういう風にただひたすら文章を書くのは好きですが、語彙力もないし、簡潔にまとめる能力もないので、いつも長くなってしまうんです。
それでも、細々と羽生くんを応援してきた一人のファンとして、これからも自分の気持ちを文字で伝えていきたいと思っています。
羽生くん、あなたに出会えて本当によかった。
いつもたくさんのものを与えてくれてありがとう。
とにかく健康に気をつけて、休めるときはしっかり休んで、自分を大切にすることも忘れないでね。
来年にはお互い30歳になるけど、ここら辺からいろいろガタがくるらしいから気をつけようね(笑)。
これからもあなたを応援し続けます。
またいつか会えますように。
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