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【百人一首】02.なぜ百人一首のかるたは、持統天皇の絵が表紙になっているのか?

歌番号:002
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春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほてすふ 天の香具山

                  持統天皇

はるすぎて なつきにけらし しろたえの
ころもほすちょう あまのかぐやま

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【現代語訳】
春が過ぎて夏が来たらしい。
昔から夏に白い着物を干すと言われている天の香具山に、純白の着物が干されていることよ。

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【一言でいうと】
 夏の到来を感じる、雄大な景色を詠んだ歌。

【作者】
 天智天皇の皇女。
 つまり、歌番号001の作者の娘。
 百人一首は、山荘のふすまを飾るために書かれた百枚の色紙がそのもとと考えられている。その色紙は、二首一組であったと考えられる。
 藤原定家が一首目と二首目に、天皇の親子を選んだ意図を考えるのも、おもしろい。

【作品のポイント】
 原歌は、『万葉集』の、
春過ぎて 夏来たるらし 白妙(シロタヘ)の
衣(コロモ)ほしたり 天(アマ)の香具山(カグヤマ)

である。これを『百人一首』撰者の藤原定家が改作した。
 違いを簡潔に述べると、

万葉集のもの→直接目で見たこと。写実的。
百人一首のもの→過去推量。伝説的。

で、ある。
 現代なら著作権問題でおおいにモメそうだが、おおらかな時代ならではの改作である。

【語句】
「天の香具山」
→奈良県の橿原(カシハラ)市にある山。大和三山のひとつ。(その中で、最も神聖視されている)
”天の”を冠するのは、天から降り来た山と言われている。山の位置や山容が古代神事にふさわしいゆえに、あがめられたものだとも思われているのだろう。

【★学べる表現★】←本題
①緑と白のコントラスト
→直接、表記されていないが、「山の緑」と「衣の白」の対比が想像できる。初夏にふさわしい。

②「衣ほすてふ 天の香具山」
→ここでも「衣」と「天の香具山」という対比を見つけられる。生活感のある「衣」という語は、「山」という当時の人に畏敬の念を抱かれていた語によって、品格を加えられている。

【雑学】
 持統天皇の札は、こに時代にはまだ存在していないはずの十二単衣を着ているものが多い。また、ほかのどの札より色彩豊かに描かれている。
 これは、札を販売する側の作戦。華やかな持統天皇の札をいちばん上に置くことで、客の購買意欲をそそるため。歌番号001の作者、天智天皇は男性であるため、装飾に限界があったのだ。
 昔の人も、けっこうちゃっかりしているものである。

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【ご注意】
 こちらの記事の内容には、「諸説あります」といったものが多くあります。

【参考文献】
①あんの秀子『マンガでわかる 百人一首』池田書店,2010年
②大岡信『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』世界文化社,2005年
③太丸伸章編『古典で遊ぶ日本 カラー総覧 百人一首』学習研究社,2002年
④吉海直人監修 『一冊でわかる 百人一首』成美堂出版 , 2012年
⑤三木幸信・中川浩文『評解 新小倉百人一首』京都書房,1988年


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