Underdog
起きた。昼の三時。ボロ家の玄関から下品なノック音が聞こえてくる。
大家だろう。俺はそのうち大家に殺されるな。
俺は堕ちた。
勇者に雇われ、戦士として働いたが、俺には特技も魔術も無く、武器を振るうのみ。そんな奴が現代の飛んだり跳ねたり簡単に奇跡を起こす連中に必要とされるはずがなく、洒落た美青年剣士に前衛の役目を奪われ、捨てられた。一緒にいた魔術師のジジイも、花火みたいな髪と声の若い女に替えられた。そりゃそうだ。俺だってそうする。
そういえば下品なノック音に混じり聞こえてくるしわがれた声、魔術師のジジイに似ていないか? 俺は隙だらけの半裸で玄関へ向かった。現役時代の警戒心なぞ、微塵も残っちゃいない。
扉を開けたらやはりジジイだった。酒臭いが、俺もそうだ。ヤツは挨拶もせずに
「おい、酒代稼ぎに行くぞ」
と言い、ボロボロの地図とメモを見せた……いいだろう。大家に殺されるくらいなら、勇者に殺されたほうがマシだ。
【続く】
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