芸術の中でしか
今、朝に「らんま1/2」が放送している。子どもの頃めちゃくちゃハマった作品だ。私の性癖はほぼ全てと言っていい程「らんま1/2」に凝縮されている。らんまのせいで、子どもの頃は他作品でもチャイナ服を着たキャラが登場すれば無条件で好きになってしまうという特殊性癖を持ってしまった。らんまで覚えた単語はいっぱいある。よく使う日常言葉から古い言葉、下ネタまで。親に下ネタの意味を聞いて若干気まずくなった記憶がある。
漫画は数年前読み返したが、アニメはこうしてちゃんと観るのは久々。
シャンプーのかわいさは改めて異常だと思うし、あかねは健気なところあるヒロインだし、今見るとムースも良牙もかっこいい。なびきさんやかすみさんの魅力に今頃になって気づかされる。まだアニメではうっちゃんは登場してないけど、彼女も本当に可愛くていい女の子だ。紅つばさ、漫画だと「ぶす」って言ってたけどアニメだと「チンクシャ」って言ってたのがずっと疑問だった。呪泉郷の呪い、なんだかんだ言ってらんまが一番羨ましいかったな。人間から人間だし。他のメンバーはみんな動物に変身しちゃうから泳げないじゃん。子供の頃からずっと思ってたけど、乱馬って水泳の授業どうしてたんだろう。
大人になったららんまの登場人物みたいに胸大きくなりたかったなぁ。なれたけど。ブラジャーってすごい肩痛くなるから嫌なんだよね。
小学校に入るまでは先生に怒られた時は廊下にバケツ持って立たされるものだと思ってたし、風林館高校へは河川敷に沿って徒歩で通いたかったし、あの可愛い制服に袖を通したかった。黒い子豚に懐かれたり、綺麗な女子更衣室で着替えたり、整骨院に通ったり、猫飯店にラーメン食べにいったりしたかった。チャイナ服を私服にしてあんな靴を履いて屋根の上を走ったり木に登ったりできると思ってた。(流石にそれはヤバすぎ)
らんまやシャンプーのアイラインにずっとときめいていた。
高校生になればもっと自由になれると思ってた。私は高校なんて絶対行くべき人間ではなかったのに高校に入ったのは、らんまのせいかもしれない。ただのしょうもない憧れだった。淡い雲を切り裂けば確かな星が掴めるというくらいの大きすぎる絵空事だった。こんな妄想をしていたことをずっと恥じていた。
現実世界の16歳は地獄だった。毎日毎日とにかく早く時が過ぎてほしかった。こんなに辛いだなんて、誰も教えてくれなかった。もう10年以上前のことなのに、ずっと恨んでる。
らんまの世界は、誰かが誰かを好きだったり好かれたりしてるけど、実際に付き合ったりするところまではいかない。好きだけど付き合わないくらいがラブコメで一番面白い。そう、そこが一番ちょうどよく気持ちいい。実際の人間って本当につまらない。本当にみんな見ていてつまらない。(あくまで“俯瞰で見ている限り”だが。)みんな平気で冒涜してくる。本当につまらなくて残念で醜悪で乱雑で虚弱な生き物。自身も含めて。ここで最後に「だからこそ人間って面白い」って言えたらよかったんだけど、そんなの一切思わない。お前らは何も面白くない。とても脆い。時間が経てば必ず死んでいく。忘れる。時間には逆らえない、結局学ばず破壊と再生を繰り返す。私は何をおいても芸術の中でしか価値を見出せない。
高橋留美子先生が言ってた「体験しなきゃ傑作描けない人は、才能がない」。
音楽を描く際、経験しないと描けないのは才能がないやつの言い訳だと思う。漫画とは違うかもしれないが、自ら不幸な状態をわざわざつくって失恋ソングを書いてるアーティスト。幸せな状態だと曲が描けないらしい。不幸などそこらへんの道を歩けば嫌でもゴロゴロと転がっている。真っ黒な卵の塔が不愉快な音を立てて崩れ落ちたり、静けさの中で細くしなやかに蠢いている。自らが不幸な状態をつくらないと曲が描けないなんて、そんなのあなたの視野が狭いだけだ。この世界はこんなにも最高の不幸で満ち溢れているのに、そこから目を背けているだけ。あなたは、たまたま歌と出会ってしまって…ただ芸術ごっこがしたいだけだ。狭い中の芸術もアリだし私は好きだけどね。
「らんま1/2」は人生で初めて買ってもらった漫画だった。そういえば全巻集めてないな。終わり方は、欲に負けて昔BOOK・OFFで見ちゃったから知ってるけど。
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