永遠のお守り

またロックバンドのひとりが死んだ。最後のツイートが永遠にお守りのようにその人への景色になる。多くの人はその知らせをスマホで知る。その信じられない文字列の衝撃と同時にこびりついて離れないその後にチカチカする脳内、カラフルなのに無味な星空はまるで音楽も聴こえない深海のようだ。もう更新されないのに何度も見に来てしまうね。あの画面を見れば、時間はあの頃から止まったままだから、何度でもあなたが生きた時間に遊びにいける。音楽を再生する。出会った頃のような気持ちで。

廃線跡を泥のような気持ちで歩いた。最初はワクワクしながらだったが、ひたすら歩いてるとだんだんと現実を思い出し、時々振り返って目を細めた。こんな平坦であったらどんなによかっただろう。容赦ない日差しは感情だけは焼いてくれない。こんなに辛いってなんで誰も教えてくれなかったの。純粋さを馬鹿にされるって酷いよね。推しへの怒りを思い出すたびに心が死ぬのだが、客を選ぼうとしてる時点でやる気なさすぎだろ、そんなつもりでもない客すら面白く感じさせろよ、それくらいパワーのある作品を作れよ芸術家を名乗るなら。結局あなたにとって都合のいい人にしか届けたくないんですね。はぁ、そうですか。あなたなら世界を変えてくれると思ったのに。
そんな純な気持ちを蔑ろにされたと手紙でも送りつけてやろうかとiPhoneのメモ帳に書き殴ったが、この人も馬鹿だしこんな人に執着する自分も馬鹿だなぁと冷静になった。
所詮資本主義だし、金銭と自由さの芸術の天秤では常に避けては通れないのだ。

あの夏は本当に辛かった。解像度と相性の悪いまどろみを読書ではかき消せなかった。夏はいつもあの頃のアニメの匂いと共にやってくる。ふんわりとあの頃の大人達の怒声も引き連れながら。また今年も夏が来る。

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