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白馬の王子様の殺し方

それはすごくファンタスティックだった。きっと愛してる女に「死ね」と言う夢を見た。激しく興奮した。一瞬だけだけど。その後は存在が消えていくような感情に犯されて空気がイルミネーションのようにキラキラしていた。風光明媚ならば怠惰になる。草木が揺れると一心不乱に祈る。精神的にきつかった時期に作った人形に囁く。あの頃は素敵な夜を舞い踊っていた。音楽とともに。老婆に会えた頃私は人生を欺けない。どうなってしまうの。音楽だけが友達。それは今でも変わらない。ゆるやかに流れる川に点滅しながら浮かぶ教科書が泣いている。来るべき季節が来ても誰も気づかないから。誰かに分かってほしかっただけ。嘘だけど。

「少女革命ウテナ」を見た。

2周目だとまた見方が変わる。1周目はウテナのこと「その程度の女かよ」と嫌いになったけど、今はそこまで嫌いになれなくてむしろ好き。アンシーのことも理解できなかったけど、今はなんとなく理解できるようになった。登場人物全員が儚くて素直に人間で愛おしい。

お姫様になりたかった。なれなかった。王子様になりたかった。なれなかった。愛は誰にも止められないはずなのに、何者にも制御できないものなのに。自由だから愛なのに。できなかった。自由だから愛なのだけど、愛は自由にはなれなかった。だってあなたは「女の子」だから。でも確かにそこに革命が起きた。少女は革命を起こした。勇敢なる革命の首謀者は群衆に忘れ去られる。身勝手にも、命をかけて守っても。その忘却の果てに、私達は何者にもなれる気がした。でもピングドラムでは「何者にもなれないお前たち」と呼ばれる羽目になるんだけど。

所詮は輪廻するから、というつまらない諦めはやめた。来世はきっと音楽に群がるゴキブリだろうから、今世じゃないとだめだ。この感覚を忘れたくない。光り輝くのは明日からじゃ遅い。今には戻れない。世界を変えるのは夢想じゃないといつか必ず気づく。夢に抱いていたものが蜃気楼だったことを。陶酔を猛毒に変えた事実を泡沫から永遠へ。親愛なるあなたに剥き出しを。

今更気づくなんて遅いよね。もう売り切れちゃったよ。

嫌いな人のアンチスレより好きな人のアンチスレの方がテンション上がるし、破裂音は薔薇色だった。
「そんなバカな」の連続こそパフェの末端をより愛すことよりも人生だし、シュークリームの雲を吐き出す。
浅ましい時雨、叶わないままの寝室、ベッドには花弁のようなお菓子、香水枕、ローズピンクのジェルネイル、濁らない清純なお茶、宇宙の空はまだまだ蒼い。はいはいお姫様アンチですよお疲れ様。

ティーカップを割ってもただの人間には戻れませんでした。

「薔薇の花嫁に死を!」と革命する側である彼らは、純粋無垢な王子様に憧れるウテナに呆気なく毎度やられる。そうか、ウテナって何も知らなかったからあんなに強かったのか。ずっと憧れていたものは崩れ去っていく。途中からご都合主義万歳、主人公だから強い、そんなものは幻想だと。それがお前の成れの果かよ。恨みたくて仕方ないのは主人公側だったと気づかされるから、砂糖菓子はそっと頭上に堕ちていく。騙されるふりはクセになるけど、悦びに対して途端に興醒めする日が来る。だからウテナは少女革命だったのか。気づかなかった側の人間があいつなのか。

手遅れじゃない、終末までは。

白馬の王子様をこの手で殺さなくちゃいけない瞬間、あなたはちゃんとあなたの顔をしていましたか?
親はすぐ「せっかく〇〇したのに」という言い方をするから嫌い。この苦痛も味わっちゃいけないの?

あーあ、お寿司食べたい。


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