DREAMを求めて

「リンリンリンリン」
虫が入ってちゃいけない会社。天井から聴こえる声。なんでおるんよ。ゴシゴシ洗浄する僕に熱唱する虫、応援歌なんだろうか。ゴシゴシゴシゴシ、リンリンリンリン。いいだろう、夜のセッションだ。…仕事がとても捗った。

 フォークリフトで砂糖を上げようか。気だるく歩きながらヘルメットを被る。鍵を回すと下からニョロニョロ。トカゲが走ってきた。なんでおるんよ。
「トカゲいたんすけど。」
手に乗せて防虫班リーダー係長に見せる。
一応見せないといけないルール。
「じゃけーなんなん。逃してこいや。」
なんだこのルールは、言わなかったら怒られて、言っても怒られる。手の中で走り回るトカゲさんよ、外の方が幸せだで。

 深夜も佳境に入る朝7時。ふぅ、トイレキメ込むかぁ、下駄箱へ向かう。僕の靴の前に配線のようなのが落ちている、カエルだ。何故か下半身が踏まれて伸び伸びになっている。口はパクパク。何があったんよ。手に取り河原へ連れて行く。安らかにカエル。

 ネズミが走っている。先週誇らしげに駆逐しましたと業者が言っていたネズミが。タタタタ、なんでおるんよ。食い破った穴は見つからなかった。
「エレベーターに乗ってきたかもしれませんね…」
まじか。こないだは1階の壁の隙間から、2階まで垂直走りして来たというのに。知恵と執念に震える。恐るべしネズミ。

 夜の電灯の下に集まるクワガタ。大人になった今何故か捕獲してみたくなる夏。町中探し回ってもいなかった。諦めるか。
「今日会社にミヤマクワガタおってビビったよ、ガタイでかいのにね。どっから来たんかな。」
数日後に一個上の先輩が話しかけてきた。いやぁ、おるんですね、探し回ったんですけどねぇ。
「僕達は来たくないのにね笑」

 彼らはここがきっとDREAMだったんだろう。結果は違っただろうが、彼らは難所を乗り越えて辿り着いているのである。僕も辿り着きたい。辿り着いて叶えてみせる。DREAM!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?