つみのかじつは夢をみせる【編集版⑧】

　月曜日である。バイトに行ったら午後のバイトの子が私に、とお菓子を用意してくれてたのを上司から受け取った。ありがたや。

　今日は「都合のいい身体」である。これを書いてからもう半年は経とうとしているのだが、またもや「この身体、レンジでチンしたい！」現象が起きている。常日頃こんな感じだ。

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この身体、レンジでチンしたい！～「都合のいい身体」～

　東京事変や椎名のステージでギターを弾く時は「浮雲」、その他星野源とかソロとか須藤寿ＧＡＴＡＲＩ　ＡＣＯＵＳＴＩＣ　ＳＥＴなどで活動するときは「長岡亮介」の二つの名前を持つ彼がフロントマンをつとめるスリーピースバンド・ＰＥＴＲＯＬＺのライブまであと一か月ほどである。まずい。非常にまずい。この身体で彼らの前に行くわけにはいかない。推しの前では常に美しく在りたい。身長はもうどうにもならないけれど、明日の朝起きたら理想の体型になっていないだろうか。せめて脚。脚はもう少し細くなってほしい。そうしたらパンツも綺麗に穿ける。お腹のぜい肉ももう少し落ちてくれたらいつもはゆったりな服を選びがちだけれど身体のラインが目立つようなぴったりサイズのものも着れる。一か月でどうにかしたいところだけれど、ワクチンの二回目の接種も控えていて、そうなると一週間は運動控えなきゃなとかなにかと制約が多い。かといって過度な食事制限で不健康な痩せ方はごめんだ。ああ、すぐに理想の体型になれる都合のいい身体がほしい！
　……というようなことを歌ったのが「都合のいい身体」である。
<終にやって参りました勝負の時　天気は微笑み　役者が揃う>
いざというとき、他のことは全て完璧なのに、身体は完璧からは程遠い。
<しかし堪え難い　「こんなもんぢゃありません」「本当はスゴいんです」なんて言い訳しそうになった刹那　相手の微笑み　役者が違う>
　ああ、今すぐにでもこの身体を完璧にしたい。本当はもっと完璧なのに今日に限って最近の不養生が祟ってしまっている。なんてこった。
<しかし優れたい　「今後、摂生いたします」「どうぞ完全をください」　不養生をちゃらにして！>
　ただしいくらそう願ったとて、すぐに完璧を手に入れることは不可能なのだ。ドラえもんならひみつ道具で何とかしてくれるかもしれないけれど、二〇二一年現在、この世にドラえもんは誕生していないし彼は未だ画面の向こう側でのび太くんに振り回され続けている。つまり自分でどうにかしなければならないのだ。
　美しさは元々持ち合わせている部分もあるけれど、食事に気を遣ったり、適度な運動やストレッチ、時には道具に頼ったりして、努力しなければ手に入らない。世の中にはその人の内面ではなく身体で品定めする人も男女問わずたくさんいる。「ルックスがアドバンテージ」なんて歌っている歌もあった気がする。やめてほしい。しかし生活習慣病その他病気も怖いし何より健康的に生きたい、それにプラスしていざというとき後悔したくない。だから世の中の女性たちは今日も理想に近づこうと努力する。
　一つ問題がある。努力なしで美が手に入るとは思わない。ただ辛いのである。毎日努力しているのに停滞する。その期間がこのうえなく辛い。どうせ変わらないからもうやめてしまおうかとさえ思う。電子レンジで温めてどうにかならないかしら。
<つらい帰りたい　こんな重要なときに限って　今日に限って(わたしに限って)　レンジでチンして　都合のいい身体を>
　こんな気持ちになるのである。多くの女性が避けては通れないのである。レンジでチンしてどうにかなるなら今にでもそうしたい。そういう道具は必要火急で世の中に普及すべきなのだ。
……とここで行ったところで何も変わらないし刻一刻とライブに行く日は迫ってきている。恐ろしい。とりあえず今日からお酒やおやつは控えめに、炭水化物も減らして適度に運動していくことにした。ライブまでに二キロ痩せたい。……この身体、レンジでチンしたい。

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　人が入って、3分後に理想の身体になるレンジを開発した人はご一報を。