つみのかじつは夢をみせる【編集版⑩】

 宴会とてもよかった…星野源が好きだ…(遺言)

 10回目である。もう連載といっても過言ではない(過言)。今日のテーマは「やっつけ仕事」。これは勢いに任せて書いた気がする。勢いに任せなければ書けなかった可能性もあるのでその辺にはそっと目を瞑ろう。

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好きが何なのか思い出せなくなりそうな話~「やっつけ仕事」~

 面倒な役回りを担ってしまった気がする。「誰かがやらなければ永遠に終わらない。やりたくはないけれど終わらないのはもっと嫌だしなあ」と、右も左もわからないどころか面倒くさいしできれば逃げ出したい、私のことは放っておいてくれ、こっちで居心地のいい場所に座って本気で集中してやりたいことをやっているから。どうしても私じゃなきゃダメだって時にだけ呼んでほしい。ああほら、またあなたの言っていること矛盾してる。その言い分だと私はその役はやらなくていい筈なのに。結局やる羽目になる。第一荷が重すぎる。私はその手のことが極端に苦手なのだ。それも伝えたのに何故。どう考えても無理だ。まして一から開拓していくのではなくしっかりできていた人たちから全部引き継いで来年にはまた次に引き継がなければならない。それは余りに無謀だ。多分この役を半ば私に押し付けるように任せたあなた方は近いうちに後悔するだろうに。ああもう嫌だ嫌だ。
 と直接言える訳がないので心の中だけでまくしたてながら、聴いたのは「やっつけ仕事」。
 バイトも講義で出される課題も【やっつけ】になってしまうことが多い。22年間生きてきて、今までどれくらいのことを一度も投げやりにならずにやって来たか振り返ったら、多分今は帰省のタイミングと教室のあるタイミングが重ならなくて行けていないが、小学校三年生から習っている生け花と、高校一年生から始めた朗読くらいだろう。朗読に関しては「これは片手間になってしまうな」と感じたらやらないことにしている。真摯に向き合いたいのだ。
 そんなこんなで自分がどうしてもと拘っていること以外は時々投げやりになってしまう。多分これは人間の性だと思うので仕方がないし何もかもを完璧にこなしていてそれが投げやりでないという人が居たらそれはすごいことだと思う。が、「そんなに常に集中した状態だと疲れてしまわないのかな」なんて思ってしまう。もしかしたら投げやりになってしまうことはあってもそう感じる人は少ないのかなあ。少なくとも私はそう思うので、きっとこれから卒論として書いているこれを全部書き終えて卒業して社会に出て勤め始めたら学生の比じゃないくらいそういうことがあるんじゃないかと思う。〈何も善いと思へない 余り憤慨もしない 今日は何曜日だつた?然して問題ぢやないか〉〈統御して頂戴 退屈が忌々しい 銀座線最終電何時?然して問題ぢやないか〉という歌詞にそれが表れている。投げやりになってきたら時間も曜日も胴でもよくなってくるのだ。とにかく終わらせればそれでいい、とかそういう感じの思考になってきてしまう。だからそこには曜日も時間も機能を失い、存在する意味すらないのだ。
 そうしているうちに、仕事のみならず、日々の生活でさえ投げやりになってしまうものだ。とりあえず生き延びるために最低限の衣食住は保っていても、その他の生活を充実させるための術を疎かにして、張り合いを失くし、ただただその息の根を止めないために……みたいになる。この曲の最後、〈ねえ好きつて何だつけ 思ひ出せないよ〉と椎名は歌う。ああ、この気持ちわかる。日々がやっつけになっていって、その先に在るのは自分が好きな事すらも好きと思えなくなる、枯れた世界である。他人からの優しさも心に響かないし、いつもは聴いて「自分は今最高にかっこいい」って思える魔法のような曲だって、ただの喧騒にしかならなくて、落ち込むとかそういうのじゃなくて多分殻に閉じこもってしまうとかそういう感覚なのだ。もうこれ以上私の邪魔をしないでほしい、関わらないでほしい。そう思うのだ。そうなってしまうのがとても恐ろしい。今まで支えてきてくれたものを自分の手で離してしまうことと同義だ。そんな気持ちをこの曲は表現してくれている気がする。
 フォローはしなければならないが、役目はだいぶ前に終えた、この文章を綴ることに集中できる、どうせまた世間が引き籠り生活しなければならない状態なのだからと思っていた矢先、至極面倒な役をやらなければならないことになってしまった。その上、「他の人はやるけれど本当にやらなくていいの?」なんて他のことまで科されかけてそれはなんとか回避した。私は今この文章に熱を注ぐので精一杯だしこれが楽しい、やりたいって思っていることなんだけどなあ。学生という肩書きが無くなったら好きな事も出来なくなるだろうから今のうちに一つの好きなことに打ち込みたいのになあ。そう思いながら「やっつけ仕事」を聴く。次「どうしてもやらないの?」なんて言われたら―言われない可能性の方が高いが―何も言わずにこの曲をシェアしてその場から身を引きたいと思う。でも小心者だから想像だけで終わる気がする。
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 この話には後日談が在るのだが、この時嫌だと思っていたことは、私の気が変わって結局やることになった。人生はそんなもんなのだ。結果楽しかった、というかやり終えた時点で満足できたので良し。


知識をつけたり心を豊かにするために使います。家族に美味しいもの買って帰省するためにも使います。