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ヨーロッパの鉄道を好きになったとき

 ヨーロッパの鉄道を好きになった原点はどこにあるのだろう。そう考えて思い出すのは、787系つばめのことである。幼いころ南九州に住んでいた私は、旅行の始まりはいつも787系のつばめだった。博多までの約4時間、東シナ海が近づいて来ると一人ビュッフェに向かった。流れゆく車窓を見ながら、客室乗務員つばめレディやサラリーマンの乗客と話をしたことを今でもよく覚えている。実際は家族旅行だったのだけれども、制服やスーツを着た人たちと交じって話をしていると、大人の仲間入りをしたようでとても嬉しかった。

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 それから九州新幹線が開業して、大学生になって自由に海外に行けるようになるとサイクリング部に入ったこともあって、初めてのヨーロッパ旅行は2回生の夏休みに、まさかの自転車でパリからウィーンまで横断するというものだった。旅の途中、偶然見つけた模型店でMinitrixのICE3を購入したり、駅にICEを見に行ったりしたくらいで、今ほど鉄道に興味は無かった。

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 『深夜特急』や『名物!たびてつ友の会』の影響で、大学生になったら休学してバックパッカーになって世界中を旅しようと夢見ていたのに、今度は『行かずに死ねるか!』に夢中になって、幼い頃から憧れていたヨーロッパ中を鉄道で旅するという夢は、自転車で叶えることとなった。

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 それから社会人になって3年目の春、まさかの11連休がもらえる事になって自転車で?いや時間が足りないと、初めて鉄道を利用してヨーロッパを旅することにした。自転車で行かなかった所を周ろうと、コペンハーゲン、ロンドンからユーロスターでブリュッセル、ルクセンブルグ往復してタリスでアムステルダム、ICE3でフランクフルト、ICE1でチューリッヒ、って有名都市と高速列車ばっかりじゃん!今なら絶対こんなルートを旅しないのだけれども、この時は本当に知識が無かった。今も鉄道の知識はほとんど無いけれど…。そしていよいよゴッタルド峠を越えてミラノまで行こうと駅に向かうと、まさかのがけ崩れでベルン経由を案内された。

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 この時はゴッタルド線もレッチベルク鉄道の事も全く知らなくて、とりあえず指定された列車に乗った。指定席に行くと私の席に誰か座っていて、通路側でもいい?と面倒くさそうに言われたが、ずっと憧れていたアルプス越え。もちろん変わってもらった。ていうかそこ私の席!この後素晴らしい絶景が続くとは夢にも思わなかった。この時窓側に座って本当に良かった。しかも景色が素晴らしくて順光だった進行方向左側。

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 どこかで氷河急行とか見れたりするのかな?とか思いながら、ミラノまで夢中で車窓を眺め続けた。いま写真を見返してもあまりピンとこないけど、この時の車窓は本当に衝撃的だった。またヨーロッパに来ることがあったらあの山の奥まで鉄道で行ってみよう。憧れだった氷河急行にも乗れるかもしれない。

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 幹線ばかり乗った初めてのヨーロッパの鉄道の旅。次の旅の目標を胸に、列車はミラノ中央駅に到着した。

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