バルカン急行で東に向かえ!
☆ 陸路の旅へのこだわり ☆
ヨーロッパ周遊やユーラシア大陸縦断をした私にとって、バルカン半島は自分の世界地図の空白地帯でした。世界地図を眺める度に「ヨーロッパからトルコまで旅したらその空白を埋めることが出来る!」といつも想像していましたが、近年まで戦争のことや、ガイドブックなどの情報も少なく、社会人となった今では未知の世界を旅することは夢物語のように考えていました。しかしあるとき、かつてのオリエント急行はロンドンからイスタンブールまで走っていたこと、現在も列車を乗り継げば同じルートをたどることが出来ることを知り、さらに長めの休暇を取ることが出来たので思い切ってチャレンジしてみることにしました。
ドイツのハンブルグから、チェコ、スロバキア、ハンガリー、セルビア、ブルガリアとを通り、トルコのイスタンブールまで7つの国、約3,000キロを9日間かけて列車で横断した話です。
☆ 緊張の旅立ち ☆
これだけの国を9日間で観光しながら周るのはとても不可能です。ドイツのベルリン、初訪問のライプツィヒ、ドレスデンを簡単に観光、以前訪れたことのあるチェコ、スロバキア、ハンガリーは列車で素通りし、ハンガリーのブダペスト東駅に降り立ちました。
いよいよバルカン半島への旅のスタートです。ブダペストからセルビアのベオグラード行きの夜行列車は22時20分発、少し早めにホームに行くと列車はすでに入線していました。
これまでの華やかなヨーロッパの車両とは違い、とてもノスタルジックで戦争映画に出てきそうな雰囲気です。6人部屋に客は私だけだったので、初めて訪れる国への不安も相俟って疲れていたのかいつの間にか眠っていました。夜中に「パスポート!」という声で目を覚まし、時計を見ると夜の2時、ベッドに横たわったまま係員にパスポートを渡し、次に目を覚ましたときにはベオグラード中央駅に到着していました。
パスポートを確認すると、しっかりとハンガリー出国印とセルビア入国印が押されており、どうやら夢ではなかったようです。初めての夜行列車での国境越えでしたが、ゴロゴロしながらという実に快適なもので した。
☆ 食堂車でヨーロッパを食べる ☆
ヨーロッパの高速列車や特急列車では、必ずと言っても良いほど食堂車が連結されています。これらはもちろん観光列車ではなく、日本でいう新幹線やサンダーバードに食堂車がある感覚で、とても気軽に利用することが出来ます。数両しかない列車にも繋がれていたりして、食堂車があることが絶対であるかのようにも感じます。
近年は利用者が減少傾向にあるらしく、暇そうなコックさんが車内を歩いて宣伝していました。「食堂車」何だか良い響きですね。今回はドイツからハンガリーまで走る列車の中で利用してみましたが、10€程で味のレベルもかなり高かったです。
そして何より雰囲気がいいです。その土地の郷土料理を食べながら異国の車窓を眺めることは、この上ない贅沢な時間のように感じました。
続く