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What We Wanted (澳, 2020) - 退路を断つ
※一部、ネタバレを含みます。
不妊治療を続けながらも、結果が出ない日々を過ごすアリスとニクラス。2人は休暇にイタリアのサルデーニャ島を訪れ、心身の疲れを癒そうと試みる。ところが隣の部屋に宿泊する子連れの家族がどうも気に障る。次第に苛立ちを隠せなくなる2人。山登りの山頂でついに2人は感情をぶつけ合ってしまう…
美しいサルデーニャ島の景色とは対照的に、残酷な現実と人間関係が静かに紡がれていく、文学的な作品。キラキラとした華やかなセレブのSNSにあるような世界観とは真逆を行くようなリアリズム。子どもに恵まれ一見幸せの象徴のように見える隣の家族も、反抗期で外界とのコミュニケーションを断つ息子をはじめ、決して順風満帆ではないことが示される。苛立ちを募らせるアリスがその息子の心に誰よりも寄り添って行く流れが秀逸。息子は自殺未遂を試みて一命を取り止めるが、アリスはニクラスからその知らせを聞き、「退路を断つ覚悟だったのに、敗北感でいっぱいでしょうね。私と同じ。」と呟くシーンが、この映画のリアリズムを象徴している。
子連れ家族の凄惨なトラブルを目撃して休暇を終えたアリスとニクラスは、一時は売却も検討した家の改修工事について語るシーンで映画は終わる。この2人がどんな未来を思い描いて改修を語り合っているのかは観る者の解釈に委ねられるが、雨の後で2人が同じ方向を向いているように思えるのが救いだ。
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