The Dig (2021, 英) - 非情な現実の中で生きるということ。

第二次世界対戦直前の英国。裕福な未亡人プリティ夫人がアマチュアの考古学者ブラウンに私有地の調査を依頼。そこには古代の船舶が埋まっていた。世紀の発見を嗅ぎつけプロの考古学者たちが動き出し、ドイツとの戦争へ流れて行く英国の情勢、心臓を病みもはや長くは生きられないと悟るプリティ夫人とともに物語は不安定に進んでいく…

プリティ夫人を演じるキャリー・マリガンの演技が素晴らしい。献身的に亡き夫の墓に花を埋ける妻の顔、ブラウン氏になつき発掘作業や天体観測に夢中になる息子を暖かく見守る母の顔。死期が近いことを悟りながら、世紀の発見が空虚に消費されないように確かに守ろうとする責務に向き合う人間としての顔。プリティ夫人を通じて描かれるドラマを見事に演じきっていました。

サブストーリーとして描かれる、発掘作業を通して芽生えるペギーとロリーの愛の物語も見どころ。愛のない夫と、心で確かに通じ合って行くロリーとの間で揺れるペギーの表情が胸を打ちます。

権威や愛、不条理な現実を生きる中で誠実さを貫くこと、コントロール仕切れない自分の気持ちに向き合いながら生きることの難しさを描いた作品なのかな、と感じました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?