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打ち込まれる広島・栗林良吏。データで見えてくる不調の原因

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開幕から連続して救援失敗。奪三振のペースは大幅に低下

 広島の栗林良吏が苦しんでいる。今季は4月の時点で救援失敗を重ね、27日終了時点で防御率は4.22。29日にも2失点を喫し、防御率は5.56まで悪化。0点台、1点台だった過去2年が嘘のような投球が続いている。WBC途中離脱の原因となった故障は現在にまで影響を与えているのだろうか。今回はこの栗林不調の原因にデータの視点から迫りたい(以下データは4月27日時点)。

 まず確認したいのが奪三振や与四球といった投手の責任が重い指標だ。投手は良い投球をしていても野手の守備や運の悪さで失点を重ねてしまうことも珍しくない。栗林についてもそういった例に該当し、投球自体は悪くない可能性は十分にある。

 ただ以下の表1を見ると、やはり栗林の投球には問題がありそうだ。ルーキーイヤーに40.3%あった奪三振割合K%は、今季は21.7%まで低下。そして与四球割合BB%は10.9%と変わらず平均となる10%弱以上の四球を出してしまっている。フィールドに飛んだ打球がアウトになる割合DERが.600と不運が重なっているのは確かだが、投球内容が悪いのもまた確かだ。失点増は決して不運が重なっただけのものではない。

気になるカウント球の配球変化

 では栗林に何が起こっているのだろうか。

 はじめに確認したいのがストレートの球速だ。故障による不調の投手がいた場合、体調が万全ではないため満足なストレートが投げられていない可能性がある。また報道によると、栗林自身が「真っすぐを取り戻せばもう一度活躍できると思う」とストレートについての課題を口にしている。単にコンディションの問題である可能性もありそうだ。

 だが実際にデータを見てみると、今季の栗林のストレート平均球速は149.6km/h。過去2年が149.2km/h、149.1km/hだったため変わっていない。むしろ上昇している。ストレートのスピードがあからさまに落ちており、それが原因で打ち込まれているというわけではなさそうだ。

 次に確認したいのがPlate Disciplineデータだ。このデータは投球に対して打者がスイングしたか、またスイングした場合空振りしたか、といった打球が発生する前の時点で何が起こったかをまとめたものだ。

 このデータ(表2)を見て気になることが2点ある。1つは、バットに当てられることが非常に多くなっていることだ。スイングされたうちバットに当たった割合を表すコンタクト率は2021年の61.4%から今季は73.6%に上昇。スイング率はそれほど変わっていないが、バットに当てられることが多くなっている。

 もうひとつ注目したいのがPutAway%だ。PutAway%は2ストライクからの投球が三振に終わった割合を表す、決め球の威力を測る指標だ。三振であれば空振りでも見逃しでも構わない。この値を見ると、栗林は2021年が30.6%。2ストライクからの投球のうち10球に3球は三振になっていたが、今季はそれが15.5%と半減している。追い込んでも三振が取れていないようだ。

 次に確認したいのが球種割合(表3)だ。実は今季の栗林には大きな配球の変化がある。2021-22年に45%弱で推移していたストレートの投球割合は今季35.8%に低下。カットボールも2021年に16.4%だったが7.4%に半減している。

 かわりに増加しているのがフォークだ。フォークの投球割合は2021年の29.7%から今季は45.5%まで増加。とにかくフォークを多く投じているのが今季の栗林である。

 この配球変化にもう少し踏み込んでみよう。ここで注目したいのは追い込む前、追い込んだあとの2パターンだ。

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