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化粧せずに人前に出れないわ(ワンオペ介護日記6/18)

誰か家に来るとき母はおもむろに化粧を始める。それは昔からずっと変わらない。半身麻痺だが幸い右手が使えるので、リップをぬりぬりし、パフで粉をはたいて、いつになくシャキッとした顔に化ける。
しかし、元気がなく整える時間がないと人が来るのが気が重い。むしろ来てほしくない。しわだらけのすっぴんも、パジャマ姿も、薄くなった白髪頭も見られたくないのである。

今日はケアマネージャーの月1回の訪問日なのだが、眠剤が効いて午後2時を回っても起きてこない。そのうち、化粧する時間もなくケアマネージャーは到着してしまう。母は顔を見られまいと、布団をかぶって狸寝入りを決め込むことになる。物足りなさそうなケアマネジャーに「こしらえてないから顔を見せたくないみたい」と私はフォローするしかないのだ。

仕立屋だった母はおしゃれにこだわりがある。なんと戦時中の生まれなのに若い頃に両脇の永久脱毛をしたという。当時流行していた袖無しワンピースを着るためには、脱毛の痛みなどへっちゃらなのだ。それなのに、こんな姿に老いさらばいてさぞかし情けないだろう。
介護する側としては、脇の下に何もないと清拭がラク。とんだところで助かっている。