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「隠れ我慢」をなくすための具体的なアクションを提案!【東京都市大学北見ゼミ発表会レポート】

 ツムラでは、心身の不調を我慢していつも通りに仕事や家事を行うことを「隠れ我慢」と呼んでいます。#OneMoreChoice プロジェクトでは、大学生が生理痛やPMSのほか、頭痛などの不調症状による「隠れ我慢」をしない環境づくりを目指し、Carellege Action(ケアレッジアクション)※をスタートしました。
 どうしたら大学生の「隠れ我慢」をなくせるのか——。同アクションに賛同している東京都市大学北見ゼミのゼミ生たちが、今年5月「大学生向け#OneMoreChoice研修」にて「隠れ我慢」の原因や課題を深掘りしました。
 そして、研修を踏まえて具体的なアクションを示すべく、8月2日(水)に「大学生が『隠れ我慢』をなくすアクション」について発表会が行われました。今回はその模様をレポートします。学生たちが考えた創造性に富んだアクションプランを見ていきましょう。


「隠れ我慢」にまつわるデータを基に課題解決

 北見ゼミでは広報・PR戦略、マーケティングの研究を行っています。今回のアクションプランは大学生の「隠れ我慢」を解決するのはもちろん、#OneMoreChoice プロジェクト全体としてのゴールも意識した提案であることが求められました。
 ゼミ生は22名(当日の参加は21名)。3年生と4年生をシャッフルした4チームで構成し、北見先生は「『隠れ我慢』の裏付けデータを基に提案すること」を前提に進めてきたと話します。

東京都市大学 都市生活学部/大学環境情報研究科 北見幸一 准教授

#OneMoreChoice プロジェクトのコンセプト理解度、「隠れ我慢」を減らすことにつながる可能性、実現可能性、企画の独創性・ユニークさ、ターゲットへの影響度・訴求力などを審査項目とし、最後にゴールド賞とシルバー賞の発表がありました。

【Aチーム】対話の場と自分一人でケアできる場をつくる

 AチームはGoogleフォームを利用し、109人にアンケート調査を実施。他学部や別の大学に通う友人などにも声をかけ、「隠れ我慢」の実態把握に努めました。
 その結果、約8割の女性が「隠れ我慢」をしており、そのうち約6割が誰かに相談したいと回答。また、学内に「隠れ我慢」を癒やせる場所があったら利用したいとする人が8割を超えたことから、以下の2つのアクションプランを提案しました。

① 5分で意識改革! ACTALK(アクトーク)
「誰かに相談したい人向けに、ACT(行動)とTALK(話す)を掛け合わせたACTALKを提案します。賛同大学の協力を得て、授業の始めの5分間で最近あったことを話し合うものです」(Aチーム学生)
 
「隠れ我慢」はプライベートな話であり、周囲に気軽に話すことが難しいと思っている人が多いことから、「隠れ我慢」に直結する質問ではなく、おもしろかったことや感動したことなど話しやすいテーマからスタート。最終的に人に悩みを話すハードルを下げることを目的としています。

 ② Care Spot(ケアスポット)
2つ目はCare Spotの設置です。東京都市大学内には学生がくつろげるエリアがあるものの、周囲とシェアする空間であることから一人でリラックスできる空間を作る必要性を提案。具体的には、薄暗い空間にツムラのくすり湯「バスハーブ」を入れた足湯を設置します。

「足湯には睡眠促進効果やストレス緩和が期待でき、実現可能性も考えました」(Aチーム学生)

スマホの利用制限やおしゃべり禁止など、快適に過ごせるよういくつかのルールを設けたほか、学内のどこに設置するかも考慮し、イメージ図による解説も行われました。

 前提として人に相談しやすい世の中にするべきですが、相談したくない人も4割いることがAチームの調査結果で明らかになりました。「相談したくないという4割の人を除くことはしたくなかったので、Care Spotは自分で解決したい人の負担軽減を考えたものです」と話します。

ツムラ側からは「相談したくない人が4割もいたことに驚いた」などの感想が述べられました。

■Aチームへの講評
実現可能性が高いツールだと感じました。きちんと大学生の生活導線が考えられていたことが良かったです。

【Bチーム】「隠れ我慢」は男女共通。体調管理アプリの活用を提案

 BチームもGoogleフォームを用いて、大学生の男女59名にアンケート調査を実施。「日々のストレス(小さな我慢)についての調査」と題し、ツムラが定義する「隠れ我慢」に限らず、日々の小さなストレスを調査しました。
 その結果、人混みや通学などの移動が苦手、自分の気持ちを話せない、人間関係や他人への我慢などが挙げられ、「あまりストレスを感じない」のは1割に留まり、多くの人が何かしらの小さな我慢を抱えていることがわかりました。一方、日々のストレスについて相談したことがある人は約3割と少ないようです。
 「PMS・生理痛の我慢を相談したいと思ったことはあるか?」の問いには、「ある」が4割。「ない」が6割の結果となりました。また、調査から男性でもイライラや不安、疲労感・倦怠感、過食などの症状があり、「隠れ我慢」は性別関係なく皆共通の問題ではないかとの結論に至ったようです。

「アンケートにより、人に相談しづらい、一人の時間を大切にしたい、PMS・生理痛についてあまり話したくない人が多いことがわかりました」(Bチーム学生)

そこで、導き出された大切なことは以下の3つ。

・一人で悩みを抱え込まないこと。
・すぐに問題解決ができる状況にあること。
・自分を見つめ直す時間があること。

上記の3つを意識した「Good Life Routine(グットライフルーティン)」が必要だと考え、男女ともに気軽に相談できる体調管理アプリの活用を提案しました。アプリは、既に女性の健康管理アプリとして普及しているものに新機能を加えるというものです。

男女共有で、パートナーと生理周期を把握する「体調管理機能」、専門家に相談できる「個別相談機能」、X(旧Twitter)のような気軽な「ポスト機能」を設けることを提案。場所を問わずに気持ちを共有できることで、我慢の軽減につながるのではないかとしています。

なぜオリジナルの開発ではないのでしょうか?

「オリジナルでの開発も考えましたが、似た機能を持つアプリを新しくダウンロードするよりも、既に数百万人が使っているアプリに新しいモードを付け加える方が、圧倒的に効果があると考えました」(Bチーム学生)
 
■Bチームへの講評
男性の不調への着目が新しく、既存のアプリを使うことによる浸透のしやすさにリアリティーがありました。

【Cチーム】TikTokを活用し、プロジェクトの認知度をアップ

 Cチームでは「隠れ我慢」の実態に加え、#OneMoreChoice プロジェクトとしての課題に着目。84人に実施したアンケート調査では、「『隠れ我慢』という単語を知っているか?」との問いに8割以上が知らないと回答し、まだまだ「隠れ我慢」という言葉が知られていないことが示されました。また、アンケートとは別にインタビュー調査も実施し、「隠れ我慢」の原因や解決しない理由などを細かにヒアリングしたと言います。

「明らかになったことは、相談することを迷惑だと思っている人が多いのですが、相談された側は信頼されていると感じて嬉しいと思っていることです」(Cチーム学生)

「『隠れ我慢』の認知が低い → 話題にならない → 行動が変わらない」ことを踏まえ、認知度を上げるためにTikTokの活用を提案。「Carellege Tok(ケアレッジトック)」とネーミングしました。

「TikTokを選んだ理由は、10〜20代の普及率が高いこと。動画にハッシュタグも付けられることや知らない人の投稿も見られるため、拡散力があります」(Cチーム学生)

実際に反応が多かった動画を分析し、ハッシュタグや動画の長さ、編集方法など最適なフォーマットを導き出し、実際に「隠れ我慢」についてのインタビュー動画を制作して提案しました。1本の動画でバズることを考えるのではなく、「隠れ我慢」をキーワードに、安定的に動画が提供されているアカウントである必要があると分析しています。

TikTokの運用イメージは以下の通りです。

【ツムラの役割とメリット】
動画の監修と投稿管理
・大学生と一緒に運用するからこそ同世代に届きやすい。
・大学内で活動が広がり、Carellege Actionの追い風になる。
 
【学生の役割とメリット】
動画案の作成と撮影・編集
・TikTokの運用を通じて、マーケティングの実務経験を積める。
・就職活動における“ガクチカ”などに利用可能。
 
学生は、ツムラのインターン生として携わることを想定しています。

TikTokで認知度を上げた後、さらにスケールしていくにはどうしたらいいと考えているのでしょうか?

「TikTokは導線としても優秀です。例えばTikTokから#OneMoreChoice プロジェクトサイト、隠れ我慢チェッカー、note、X(旧Twitter)等に飛んでもらうことで、より#OneMoreChoiceの考えを理解してもらうことができると考えています」(Cチーム学生)

また、相談することを迷惑だと思ってしまっているが、相談される側は嬉しいと感じているというインサイトなどについても、TikTokでの発信を通して伝えていきたいとしています。

「片頭痛持ちの自分は日常生活のなかで我慢することが多くあったけれど、調査を進めるなかで同じ悩みを持っている人がいることを知り安心しました。ありのままの自分を受け入れることが『隠れ我慢』のない社会への一歩。勇気を持って発言していくことが大切だと思います」(Cチーム学生)

■Cチームへの講評
相談されると嬉しいというインサイトが印象的でした。TikTokで悩みを可視化するアプローチが素晴らしかったです。

【Dチーム】「隠れ我慢」をシミュレーションゲームで学ぶ

 Dチームは、大学生が抱える心身の悩みや異性の不調に関する理解度を明らかにすることを目的として、206人にアンケート調査を実施。その調査結果をアニメーション動画にまとめるユニークな方法で発表しました。

【女性への調査まとめ】
不調があるものの、我慢して過ごしている。異性に不調を打ち明けられれば気持ちが楽になると認識。しかし、実際には打ち明けられていないというギャップがある。
・多くの方が、自分自身ないし同性の友人に不調がある際の対応や接し方に悩んだ経験がある。

【男性への調査まとめ】
PMSや生理についての知識が乏しいため、周囲の女性が体調不良に陥っていても気が付かない。

上記の調査結果を踏まえ、“我慢を知って、我慢を感じ取る”をコンセプトに「YOUR CHOICE(ユアチョイス)」と名付けたシミュレーションゲームを提案しました。女性のあらゆる「隠れ我慢」の対処方法を体験・学ぶことができるもので、場面に応じて自身が行動を選択し、適切な対応ができるようになることを目指すゲームです。

例えば、「大丈夫?」という声かけは条件反射的に「大丈夫です」を引き出しやすいため、「どうしたの?」という声かけをおすすめするといった内容が挙げられました。こちらも調査結果と同様に、アニメーション動画を制作し、実際のゲームイメージを共有しています。

 着想を得たのは #OneMoreChoice プロジェクトの既存コンテンツで、コミュニケーション研究家の藤田尚弓先生が監修している「#隠れ我慢画」。漫画の内容をそのままゲーム化できそうなことや、ユーモラスなイラストで親しみやすいことが理由です。

「ゲームの配信はLINEの公式アカウントを想定しています。ほとんどの学生がLINEを利用していることから、ゲームアプリをダウンロードするよりも、LINEからそのままゲームをする方が気軽に参加できると考えました。また、無料スタンプの配布キャンペーンなど、アカウント追加の機会も作りやすいと思います」(Dチーム学生)

普及方法は、「賛同大学に向け講義で紹介 → スタンプ配布などのキャンペーンを実施 → 口コミなどでの拡散」を狙っているとしています。

ここでは寸劇を交えて説明がなされました。会も終盤でしたが、場を盛り上げてくれる発表となりました。

「ゲームの利用者が増えることで、より多くの人が「隠れ我慢」をせずに不調を気軽に相談できるような社会の実現につなげることができると考えています」(Dチーム学生)

■Dチームへの講評
課題から施策への紐付けが上手くなされていたと思います。男性が女性のPMSや生理を学ぶのはハードルが高いかもしれませんが、漫画のキャラクターを使うことでその壁を越えられるのではないかと感じました。

ゴールド賞・シルバー賞の発表!

 最後にゴールド賞・シルバー賞の発表が行われました。どのチームのプランにも素晴らしい点があり、審査は難航……。僅差で賞が決まりました。
 
★シルバー賞は、シミュレーションゲームのDチーム!

「社会全体に広められる施策でイメージがしやすかったです。中長期でのプロジェクトと考えたときに、ゲームが一過性で終わらない継続性のある切り口を見てみたかったので、シルバー賞といたしました」(ツムラ)

★ゴールド賞は、TikTok制作のCチーム!

「『隠れ我慢』の認知に着目しており、私たちと同じ視点で考えてくれたように思います。TikTokの制作という活動に加わっている学生から派生していくことがイメージでき、課題解決を目指したプロジェクトとしてゴールに近い取り組みだと評価しました」(ツムラ)

「隠れ我慢」に向き合ったことに意味がある

 最後に、ツムラそして北見先生に今回の感想を伺いました。

「企画を通じて『隠れ我慢』に向き合っていただいたことに意味があり、きっと皆さんの心に残ってくれたのではないかと期待しています。今回は賞を設けましたが、どのチームも素晴らしかったです。ツムラとしてこの機会を今後に活かしていきたいですし、皆さんにも #OneMoreChoice プロジェクトの考え方を広めていってほしいと思います」(ツムラ)
 
「企業の方と直接コミュニケーションを取れる機会もなかなかないので、学生たちは研修から積極的に取り組んでいたと思います。事前に発表内容を見てブラッシュアップしたわけですが、1週間前とはガラッと変わっているチームもあり驚きました。みんな自信を持ってください!今回、このような場を設けていただいて感謝しております」(北見先生)
 
 Carellege Actionへの賛同について、北見先生は「社会課題の解決に寄与できる人材を育成したい思いがあった」と話します。発表会の終了後には、個別にフィードバックを求めるゼミ生の姿も見られました。これから社会へと飛び出す若者たちが、主体性を持って課題解決へと挑んだ姿は活気に満ちたものです。今後の #OneMoreChoice プロジェクトへの期待も高まります。
 
※ Carellegeは、CareとCollegeを合わせた造語です。