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飛行機に与えられた最初の任務とは?

◆飛行機に与えられた最初の任務とは?

 今日からヒコーキたちのエッセイを連々と投稿していきたいと思います。
 「空を飛ぶ」ということは長年の人類の夢でした。古来、空に憧れた挑戦者たちが、失敗を繰り返していきましたが、気球やグライダーによって空に上がることに成功し、ついに1903年、ライトフライヤーが動力飛行機での飛行に成功します(実は諸説あり)。
 
 最初は、空を飛ぶこと自体が目的だったのですが、その力を一度手に入れてしまうと、何かに使えないかと考えてしまうのは人類の悪いクセ。「空を飛ぶ」ということは、何らかの目的を得るための手段になってしまいました。では、その最初の目的とはなんだったのでしょうか。最初に与えられた任務、それは「偵察」です。

高い場所から遠くが見えるということは有利

◆偵察は飛行機にとっては最良の任務

 空を飛ぶということは、高く上がるということでもあり、それは地上から見るよりも、遠くを見渡せるということになります。
 古来、戦争においては、小高い丘や見晴らしの良い高い場所を抑えると、敵の様子や状況を把握し易く、対策を立てやすいということもあり、戦の勝敗を決めてしまうほどの大きな要因になるものでした。
 しかし、空を飛べるということは、山よりも遥かに高い場所から状況が分かるということになり、これが、どれほど有益な情報を味方にもたらすかは容易に想像できると思います。飛行機たちが戦争にとっていかに有益なものをもたらす兵器になることは自明の理だったのです。
 18世紀末に気球が開発されるや否や、すぐに偵察や観測などの軍事目的で使わたのもそういう理由からです。特に着弾観測が欠かせない野戦砲部隊には、気球の存在はなくてはならないものでした。
 さらに飛行機は、気球に比べてはるかに早く移動できるという点から、騎兵隊の重要な任務である斥候(秘密裏に行う敵地への状況視察)にも使えるということが分かります。なにより馬よりも早く、遠くを偵察できるのですから。最初の飛行隊は騎兵隊から始まったというのもうなずけますね。
 こうして、初飛行から14年後に始まってしまった第一次世界大戦に巻き込まれた飛行機たちは、飛ぶことくらいしかできませんでしたが、それでもその性能やポテンシャルは、気球よりはるかに便利で、敵地への偵察任務に就くことになります。

◆偵察機を撃ち落とす戦闘機の誕生

 こうして偵察機として任務につき、敵地へ飛び立つことになった飛行機たちは、飛ぶだけで精一杯でしたので、当然武器などは搭載しておりません。 なので、敵と遭遇しても、攻撃できる訳でもなく、互いに手を振り合ったりして、それはそれはのどかなものでした。
 しかし、それでは戦争に勝てません。すぐにお互いの偵察行動を妨害するために、色々な手段でお互いを攻撃するようになります。
 最初はレンガを相手の翼の上に落として破壊しようとしたり、自分の拳銃で撃ち合ったり。
 航空機専用の機関銃を搭載するまでには、さほど時間はかかりませんでした。
 敵機を撃墜し、偵察任務を妨害する任務を帯びた飛行機、「戦闘機」なるものが誕生します。
 また、敵情視察のついでに敵陣にも打撃を与えようという発想が生まれます。まずは、手榴弾を敵地に投げてみる、やがて爆弾を搭載して上からばら撒いてみる。これは「爆撃機」の始まりになります。 

イギリスを代表する戦闘機ソッピース・キャメル 大好きなヒコーキです

◆多様な任務を背負った飛行機たちが生まれる

 第一次世界大戦は4年近くにも渡り、人類史上類を見ない多大な犠牲を出しながらもようやく終結しました。そしてすぐに次の戦争に向けての水面下の戦いが始まります。
 各国は表向きは平和を謳歌しているように振る舞い、郵便輸送、旅客輸送と民間転用を行いつつも、裏では更に高性能な軍用開発に必死に力を入れるようになるのでした。
 もたもたしていると、あっという間に大国に飲み込まれる・・・。当時はそんな弱肉強食の世界だったのです。
 第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の「つかの間の平和」といわれる20年が終焉し、いよいよ第二次世界大戦が始まると、軍用機たちの任務は更に広がりを見せます。ざっとみても
・飛行場の建設が間に合わないから水上から離発着したい→水上機、飛行艇の開発
・艦船に甲板をつけて飛行機を搭載して敵地を叩きたい→艦上機の開発
・海上の警戒や海面下の敵艦を見つけたい→哨戒機の開発
・司令部に置いて、馬や車よりも早く部隊に連絡を取りたい→連絡機の開発
・物資や兵士を早く届けたい→輸送機の開発などなど。
 このように敵に勝つためのの要望に伴い、飛行機は様々な任務の種類に分かれて開発・誕生していくことになります。
 それは、まるでひとつの生命の種子から一斉に枝分かれしていったカンブリア紀の生命進化のようですね。 
 さて、このまま飛躍的に様々な種類の飛行機たちが数多く生まれることになるのでしょうか。いえ、実はそうはなりませんでした。ここから飛行機たちの種類は、ある理由にて今度は減少していくことになります。
 その話を次回に。



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