【治療家向け】上肢から体幹機能を向上させる 〜運動連鎖アプローチテクニック〜
Finger Floor Distance;FFD は体幹の柔軟性を評価するのに用いる簡便なテストです。
このテストで制限が生じているとほとんどの場合、腰痛やハムストリングスの伸張性低下が原因と思われがちですが、少し視点を変えて考えてみたいと思います。
体幹を屈曲させることを床までのリーチ動作として考えてみましょう。
リーチ動作において最も重要なことは肩甲骨を前方に引き伸ばすProtractionという動きが必要になります。これを可能にする筋肉は前鋸筋です。この前鋸筋は大胸筋や菱形筋、小胸筋、肩甲挙筋、僧帽筋上部、広背筋など多くの筋によって動きを阻害されてしまいます。
ではこれらの筋肉が前鋸筋の動きを阻害している理由とは何か?普段の姿勢やスポーツ、仕事などたくさんありますが臨床で最も多く見受けられるのは前腕の回内・回外制限です。これらの運動を担当する関節は腕橈関節です。
腕橈関節の機能制限により回内・回外が制限されると肩関節の筋肉で動きを代償します。
前腕の可動域制限と肩関節の代償動作の関係
● 前腕回内制限→ 肩関節外転・外旋・三角筋・棘上筋・棘下筋・小円筋など
● 前腕回外制限→ 肩関節内転・内旋・大胸筋・広背筋・大円筋・肩甲下筋など
不必要に代償動作を行うことで前鋸筋の動きを阻害する筋肉に硬結や過緊張が生まれます。よって腕橈関節の機能を改善させることで代償動作が修正され前鋸筋による肩甲骨のProtractionが生じると床へのリーチ距離が拡大される為、FFDを向上させることが可能になります。
全ての関節には滑液が存在します。関節の動きを滑らかにしてくれる液体ですが、滑液が分泌されるには関節に刺激を与える必要があります。徒手的に腕橈関節にしっかりと軸圧を加えてみましょう。この時、肘関節は伸展・回内位にしてClose Packed Positionにしておくと良いです。
刺激がしっかりと伝わることで腕橈関節の滑液量が向上します。人によっては滑液のキャビテーションによって「パキッ」と音がする場合もあります。
腰痛による可動域制限や前屈運動が苦手な方にハムストリングスや腰部のストレッチを行うことは重要ではありますが、それで改善しない場合やもっとお客様の体幹機能を改善させたい!と思う方は上肢にも目を向けて評価・治療をしてみてはいかがでしょうか?