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郊外の霊園は僕らの他に誰もいない。周りのお墓を見るといろんな大きさや形があって、でもみ…
毎年この時期、中高一貫のミッションスクールに通っていた僕は待降節の準備で大忙しだった。…
花火の夜に目が覚めた聖名は、全てがまだぼんやりとした微睡みの中にいて、病院のベッドの上…
鋏を持つ手が震える。刃物はあまり持ち慣れない。なぜ今こんなことになっているのか、こうい…
八月の終わり、まだまだ暑い日は続いている。 空は抜けるように青いし、日差しは一向に弱…
5階建ての校舎の屋上に建てられたフェンスの向こうに上がった狼煙が爆ぜて、夜空に血の様に…
深淵のほとりに佇んでいた彼女に一報を告げたのは一羽の鴉だった。三本の脚を持つ鴉に導かれ深淵から奈落へ潜ると、光る緑地に鳥籠の様な硝子のテラスが在るだけの、まるで作られた中庭の様な世界が広がった。 そこから先の記憶が無い。 誰が為に在る世界なのか不明だが、奈落にこんな静かで穏やかな場所があるとは。この世界を生んだ神がいるとすれば、余程大切な何かを隠しておきたいのであろうことが窺えた。 目覚めた魑之は、そこが堕ちてきた奈落の底であることを認識した。ひとつ欠伸をして全
遠くで開く花火の音を聞きながら、広がる宙に散らばる星を見ていた。背中のブルーシート越し…
魑之と沖崎は、ソファから移動し、観測所内のテーブルに各々ノートパソコンをセッティングし…
黄昏時に鳴いた八咫の鴉が夕闇を連れて来た。辺りは一層暗くなり、濃密な憂いに満ちた夜帷は…
そっとテーブルの下から這い出してみた。両手で塞いだ耳にはまだ祭囃子が残っている。 い…
気付くと自分の部屋のベッドに横たわっていた。 何だか頭がぼーっとして気だるい感じがす…
初めて袖を通す浴衣は母が縫ってくれた。 浴衣と同じ薄紅梅の生地で作った細いリボンで…
初めて袖を通す浴衣は母が縫ってくれた。 浴衣と同じ薄紅梅の生地で作った細いリボンで、少しウェーブのかかった柔らかい猫っ毛を結ぶ。日焼けを嫌って、日傘と敏感肌用の日焼け止めで守っている白い頸に、後毛が揺れている。いつもは下げている前髪も捻ってピンで止め、形の良い額が愛らしく、弧を描く美しい眉と伏せた瞼にすれ違う人は皆見惚れた。薔薇色の頬に落ちるふわふわの睫毛と薄い唇から覗く白い貝の様な小さな歯。 ゆめふわな美少女の僕は、気付くと自分の部屋のベッドに横たわっていた。