見出し画像

"StayHome"に格差-アメリカの場合

新型コロナウイルス感染の増加が止まらず、各地で自宅待機命令が出ているアメリカ。しかし市民の誰もが自宅にとどまる選択を取れるわけではない。
人々の行動の背景に所得格差があることを、ニューヨーク・タイムズが詳しく報じている。

Location Data Says It All: Staying at Home During Coronavirus Is a Luxury (April 3, 2020)
位置データがすべてを語る:コロナウイルスの間の自宅待機は贅沢

In cities across America, many lower-income workers continue to move around, while those who make more money are staying home and limiting their exposure to the coronavirus, according to smartphone location data analyzed by The New York Times.
ニューヨーク・タイムズが分析したスマートフォンの位置データによると、アメリカ全土の都市で、より収入の多い労働者は自宅にとどまり、コロナウイルスにさらされる機会を制限している一方、多くの低所得労働者は移動を続けている

記事によれば、全ての所得層の人々がコロナウイルス危機以前よりも移動を減らしているが、自宅で過ごしている人々はより豊かな層に多く、またほぼ全ての州で、高所得者は低所得者よりも数日早く自宅待機を開始しているという。
また、ニューヨーク市内では住民の所得が低い地域がコロナウイルスによる最も大きな打撃を受けていることを示す、市の最近の統計を紹介している。


次の記事が取り上げているのは、ニューヨーク市で今でも地下鉄に乗って通勤を続けなければならない人々だ。

They Can’t Afford to Quarantine. So They Brave the Subway. (March 30, 2020)
彼らに隔離の余裕はない。だから地下鉄に立ち向かう。

ニューヨーク市の地下鉄の利用者数は、コロナウイルス危機以前の1日500万人以上から100万人以下となったが、乗客率の減少は地域間で格差が見られるという。"Now the subway has become more of a symbol of the city's inequality"(今や地下鉄は、むしろニューヨーク市の不平等の象徴となった)と伝えている。

記事によると、乗客率が最も急激に下がった地域はマンハッタンで、75%の減少。この地域の世帯収入の中央値は80,000ドルで、ニューヨーク市内の5つの地域で最高額。一方、貧困率が最大で世帯収入の中央値が38,000ドルのブロンクスでは、乗客率の減少は55%だった。

**********

ウイルス感染の危険があっても生きるために通勤を続けざるを得ない人々のこうした状況が、ニューヨークで感染拡大が止まらない一因だろう。

今朝(4/9)のニュースでは、ニューヨーク州の感染者数は14万9316人。「クオモ知事は8日、ニューヨーク州での死者数がこの24時間で779人増えて過去最多の増加となり、合計で6268人に上った」と明らかにしたという。


感染拡大を抑えるためには「自粛」の要請だけでは不十分で、移動を制限しても生活していける補償がなければ効果がないと、ニューヨークの事例から日本の私たちも学ばなければならない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?