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SX〜サステナビリティ・トランスフォーメーション〜(後編)【ONE JAPAN CONFERENCE 2021公式レポート: オープニングセッション】
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SX〜サステナビリティ・トランスフォーメーション〜(後編)【ONE JAPAN CONFERENCE 2021公式レポート: オープニングセッション】

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CO2を出し続ける会社”というレッテルを貼られると融資を受けられない、株を買ってもらえない?――否応なく、世界はカーボンニュートラル待ったなしの状況になっています。欧州に端を発するこのSDGs/ESGの巨大な潮流に、日本の大企業、そして大企業の社員一人ひとりはどう向き合っていけばよいのか?「サステナビリティ・トランスフォーメーション」をテーマに、トヨタ自動車の大塚友美執行役員、パナソニックの楠見雄規社長、国際環境経済研究所の竹内純子理事、経営共創基盤の冨山和彦会長、モデレーターとしてテレビ東京の豊島晋作副編集長に語っていただいた。

【登壇者】 (敬称略)
・ 大塚友美 / トヨタ自動車株式会社 執行役員 Chief Sustainability Officer
・ 楠見雄規 / パナソニック株式会社 代表取締役 社長執行役員 グループCEO
・ 竹内純子 / 国際環境経済研究所 理事 / U3innovations合同会社 共同代表 / 東北大学 特任教授
・ 冨山和彦 / 株式会社経営共創基盤 IGPIグループ会長
・ 豊島晋作(モデレーター)/ テレビ東京 ニュースモーニングサテライト解説キャスター デジタル副編集長

OPENING SESSION_グラレコ_山内

■資源確保のポイントは「分散」と「長期戦略」

【豊島】カーボンニュートラルを進めていく上でもうひとつ問題となるのが資源の確保。一部の国や資源メジャーに資源がかなり集約されてしまっている状況がありますね。

【楠見】確かに、本当にバッテリーの今後の需要に応えるものづくりを進めていこうとすると、最後に残るのが資源の問題です。たとえば原油なら複数の異なる国から産出されていますが、対してリチウムやコバルトは産出国が限られている。最後の最後はそこが課題になります。

【冨山】素材の歴史というのはおもしろくて、鉄やバッテリーの素材であるシリコンは潤沢にある一方で、希少資源をベースにすると経済性が合わないので、実はメジャーな材料にならないという歴史があるんです。その意味で、バッテリーも今はその潤沢な素材を探している状況ですよね。

【楠見】だから、中国ではLFP(リン酸鉄リチウム)など鉄系の素材がバッテリーの開発には使われていますね。ただ、車載用としては密度が上がらず走行距離が伸びにくい。でも、今後は用途によって棲み分けが起きてくることは十分に考えられます。

【豊島】資源の争奪戦という点で竹内さんにも伺いたいのですが、日本としても効率よく安く作るためには、どう資源を囲い込むかが焦点になってきます。課題はあるのでしょうか。

【竹内】もちろん、日本における資源確保戦略はオイルショックの時代から最重要課題の一つです。私が参加している経済産業省の資源・燃料分科会でも、希少資源をどうやって確保すべきかという議論が続いています。ただ、「これをやれば必ず調達し続けられる」という解はないんですよ。なので、そこはもう長期スパンで調達先を多元化、分散化していくことになります。

今も天然ガス価格がこれだけ世界で高騰していますが、実は日本は世界的にもいちばん長期契約している国なので、今のところ影響が少ないと言われています。長期契約というのは市場価格が安い時には「殿様買い物」などと叩かれるのですが、今は長期契約の恩恵をものすごく受けているんです。そういう地道な戦略を立て続けるということですね。

【豊島】金融市場はある種自分勝手に動くようなところがあって、石油などは座礁したのかと思いきや急にマネーが急旋回していて、今ニューヨーク原油市場では1バレル=80ドルを超えてきています。そんな流れの中で、冨山さん、資源の需要供給の状態をどうみればよいのでしょうか。

【冨山】エネルギーがトランジションする際には、ある種のアービトラージ(裁定取引)ウィンドウが開くので、取引価格がバーンと高騰することは当然ありえます。でも、金融市場というのはそんなものなので、しかたがないですよね。逆に、今日いらっしゃっているパナソニック、トヨタも含めた実体経済を担っている主体がそれに振り回されないことが大事です。要はちゃんと哲学、背骨を持って、長期的な戦略を立てることに尽きます。

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■台頭する中国勢とは「コラボレート」の姿勢で

【豊島】資源の確保もそうですが、先ほどのバッテリー技術や EV技術の分野でも台頭を見せてきているのが中国勢です。特にパナソニック、トヨタの両社が向き合わなければならない相手でもありますが、お二方はこの中国勢の技術の進捗をどうみていますか。

【大塚】そうですね。さまざまなプレイヤーが参入してくることは脅威ではありますが、一方ではそれによって競争が活性化することをマーケットも歓迎しますし、新結合が生まれる可能性も広がります。そういう意味では脅威に感じつつも、私たちは私たちでめざしている品質や性能を追求していこう、ということですね。

【楠見】中国では若い方々がどんどん留学しているし、国内の大学も相当な数があります。したがって、技術が進むスピードが私たち以上に進んでいる領域もたくさんあります。そのような動きに対抗するだけではなく、中国勢と協調、コラボレートしようとする姿勢も大事です。

パナソニックでは2019年に「中国・北東アジア社」という社内カンパニーを立ち上げました。そこでは中国の人材に活躍してもらい、中国のスピード感でどんどん製品を進化させていく取り組みも行っています。中国との関係というのは必ずしも対抗するばかりではないんです。

【大塚】楠見さんがおっしゃるように、私たちも中国ではいろんなパートナーの方と一緒にビジネスをやっていますが、そのスピード感の違いや発想には、本当に学ぶことがたくさんあります。


■世界の優秀人材を惹きつける日本企業の魅力

【豊島】人材の話題にも触れましたが、かつて日本企業から優秀な人材が多額のサラリーを提示されて韓国、中国に引き抜かれていく、そして技術も流出してしまうことがありました。「日本企業も相応の年収を提示して人材を日本企業に引っ張り返すべき」という意見もありますが、それは果たして現実的なのでしょうか。

【大塚】それに関して言うと、綺麗事に聞こえるかもしれませんが、サラリーだけではない、たとえば「サステナビリティに貢献したい」という志をもって「トヨタに入りたい」と言ってくれる方が今はすごく増えている気がします。私も社内で若いメンバーと話していると、「上司はサステナビリティを仕事としてやろうとしているけど、私にとっては当たり前なんです」みたいなことをサラッと言われて、こちらが「ですよね……」と襟を正される気持ちになりますね(笑)。

【冨山】でも、トヨタにはギル・プラット(トヨタ・リサーチ・インスティテュートCEO)にジェームス・カフナー(ウーブン・プラネット・ホールディングスCEO)。パナソニックには松岡陽子(常務執行役員 くらしソリューション事業本部長)……。こういったグローバル・スーパースター人材がグーグルにも行かず、トヨタとパナソニックに来ているんです。表現が古いのですが、あの人たちロボティクスの世界の世界の王・長島・張本ですよ。なかなか報道されないのですが……豊島さん、もっと報道してくださいよ(笑)。

【竹内】海外人材もそうですが、もちろん日本の中にも優秀な人材はたくさんいます。ただ、一つの場所にずっととどまっている方が多いですね。海外のエネルギー系のスタートアップは、エネルギー会社で部長まで経験したような、業界や制度の酸いも甘いも熟知した人が起業したりします。一方、日本の場合は若い人が熱意をもって起業する。それはそれでいいのですが、経験値が不足しているので「制度設計をもう少し勉強したほうがいいね……」というケースがけっこうあるんです。

だから、国内でも経験のある人材がスタートアップを支援したり、海外からも人材を受け入れ、海外にも送り出す、といった人材の流動性、循環が、日本でももっと高まるといいですね。


■ESGで取り組むべき課題は「E」だけじゃない!

【豊島】残り時間が少なくなってきましたので、参加者からの質問も紹介していきます。「トヨタやパナソニックのように自社製品が環境問題やESGに直結している企業ではない、たとえば人材派遣会社などの業界、企業ではどのようにサステナビリティの課題をとらえ、進めていけばよいのでしょうか?」。

【楠見】サステナビリティというのは、エネルギー分野に限った問題ではないと思います。究極的には、あらゆる領域で生じているロスを削減していくということ。その判断を遅らせるというのもこれまたロスになります。

そう考えると、結局のところお客様の課題を自分たちがしっかりと汲み取って、その本質を理解するということに尽きるんです。そして「こうすればもっとスピードが上がりますよ」「これをすれば、こういうムダをやらなくて済むのではないですか」ということを、自信をもって提案する。そうして「やらなくていいこと」をどんどん増やしてムダを削いでいきながら、正味付加価値に集中する。これがサステナビリティの本質ではないでしょうか。

【冨山】人材派遣業も、人手が余っていた時代のモデルから、人手不足モデルへの転換をこれからは迫られます。これから日本の社会はものすごい人手不足になりますから。これは相当頭を切り替えていろんな観点からロスをセーブしていかないと、おそらく事業としても厳しくなりますよ。

【豊島】そしてもう一つ。「エネルギーでそもそも不利な国である日本が、レッドオーシャンであるエネルギー政策に議論を傾けるよりも、SDGsの他の目標に貢献する取り組みが必要だと思います」。利権競争の構図とは異なるブルーオーシャンで日本は手本を示すことが必要ではないでしょうか、というご意見です。

【竹内】基本的にすごく賛同しますね。気候変動だけに議論がフォーカスされている現状にはもともと違和感を持っているので。SDGsやESGという概念ができたときに「これでバランスが取れて均等に議論が進むのかな」と期待していたら、結局は“気候変動とその他16の課題たち”みたいな形になって、気候変動にかなりキャピタリズムが集中している。もちろん仕方ない部分はあるのですが、「誰一人として取り残さない」という観点でみると、置き去りにしている足下の課題はまだたくさんあるんです。

【冨山】先ほども言いましたが、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出のScope1(自社)、Scope2(サプライヤー)、Scope3(その他)でいうと、日本は残念ながらScope1の領域では地理的、地勢的条件で圧倒的に不利なんです。そうであればScope2、Scope3に視野を広げていくというのが一つの考え方です。電池などはまさにそうですね。

もう一つは竹内さんがおっしゃるとおりで、企業が社会に与える影響を財務諸表に反映する「インパクト加重会計」も、実は気候変動一本やりではなく、ダイバーシティやインクルージョンといった人的資本投資も重視しています。この背景にはやはり貧困問題、格差問題があるんです。
ESGにはEnvironmentだけでなくSocietyもあるのだから、そのSocietyの観点も含めて広いスコープで勝負することを、日本企業はもっと押し出していったほうがいいと思います。このSocietyは天然条件ではないぶん、自分たちで変えられる領域ですからね。

【楠見】カーボンニュートラルはもちろん取り組むべき課題ではありますが、Societyの領域も「社会をどう良くしていくんだ」と本気で考えれば、日本企業がグローバルに貢献できることはまだたくさんあると思います。

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■多様な幸せを実現するために「頭を使って」考えよう!

【竹内】今、コロナによって世の中が働き方や生活様式を強制的に見直さざるをえない状況に立たされましたが、これはチャンスだと思うんです。たとえば、出社できなくても仕事ができるよう、オンラインツールが普及しました。ただ、政府や企業の上部は規制やルールを変えているのに、下の方が今までのやり方に固執して見直さないところが意外にあるんです。

大企業で働く皆さんが、頭を使って「この仕事ほんとに必要なの?」と少し考えれば、止められるもの、やらなくていいことがけっこうあるのではないでしょうか。だから、もっと頭を使っていきましょう(笑)。

【楠見】竹内さんがおっしゃるように、コロナというのは、いろんなことに気づく機会になりました。パナソニックでいえば、チャットで仕事を進められるということに社員全員が気づいた。余計な会議が減って、自分がいちばん集中できる時間にアイデアを考えることができる。そのアイデアをどんどん積み重ねていける。時間と場所を超えるということが仕事にとっても有効だということが分かったと思うんですよね。

【大塚】ダイバーシティを実現する上でも、デジタルでできる領域がものすごく広がったと感じますね。私たちトヨタでは「幸せを量産する」というミッションを掲げていますが、画一的な幸せではなく多様な幸せを実現したいと考えています。その可能性は  ハードだけでは無く、デジタルにも取り組むことで広がったと思います。多様な幸せを真に実現するためにも、確かにもっと頭を使わなければいけませんね(笑)。

【豊島】あと日本企業は、グローバルに見るとアピール下手というか……。私もロンドンやモスクワでの駐在経験がありますが、海外の企業はあることないこと含めて言うのはうまいですよね(笑)。対して、日本企業は確実にやり続けられることしか言わないところがあります。楠見さんと大塚さん、最後に強いアピールを頂けないでしょうか。

【楠見】確実にやれることだけ言っていても、それこそ将来に対するアンビションを示すことはできませんよね。だから、少なくともやろうと決意したことは積極的に発信していきたいと思っています。

【大塚】同じく、決意したことは発信していきます。でも、同時に行動も起こしています。その「行動」もセットでアピールしていきたいですね。

【冨山】トヨタさんもサプライヤーを含めて550万人の雇用を国内で抱えている会社ですから、あまり地に足がついていないことは軽々しく言えないんですよ。今ここに生きている一人ひとりの人生、生活というリアルがあって、それを破壊するような企業活動というのはありえません。みんなを幸福にしながら未来も幸福にする。そこが現実経営の大変な、そして大事なところですよ。

【豊島】盛り上がっているところで、あっという間に時間が来てしまいました。ご登壇の皆さん、本日はありがとうございました。

前編はこちらから

構成:堀尾 大悟
編集:中川量智、福井崇博     
デザイン: McCANN MILLENNIALS
撮影:伊藤 淳
グラレコ:山内 健

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