見出し画像

ワンインチのロビーイング活動~厚生労働省に要望書を提出~

こんにちは

ワンインチ(以下、弊社)の柴田です。

今回は以前書いた「ワンインチのロビーイング活動—CBD市場を健全に」のアップデートを書いていこうと思います。

※以前の記事はこちら↓

厚生労働省に対して要望書を提出

厚生労働省にへ赴き、要望書を提出してきました。こちらについて可能な範囲で書いていきたいと思います。

CBD(カンナビジオール)を担当する部署の正式名称は「厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課」です。

画像1

要望書の概要

今回、厚生労働省に提出した要望書ですが大きく分けて以下の4点を要望する内容になっています。

・CBD製品の輸入に際しての基準の明確化
・輸入後のCBD製品の検査・公表プロセスの透明化
・CBD製品に関する包括的なルールの整備
・第三者機関による 検査制度等の導入

それぞれ説明していきます。

CBD製品の輸入に際しての基準の明確化(THC基準)

現在、CBD製品の輸入に関して、厚生労働省のHPでは、以下のルールを明記しています。(2020年5月版)詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。

①成熟した茎又は種子から取れた製品であるという証明書
②成分分析表
③CBDの原材料及び製造工程の写真

厚生労働省による一定の基準が設けられたことは、非常に有意義なことだと認識しています。

以前であれば、ルールがなく、事業者及び使用者、輸入業者など関係者合法、非合法の線引きもできずCBDをどのように扱ってよいか判断できない状態でした。

このような意味において、非常に大きな一歩だったのですが、残念なことにこのルールによって、より混乱を招いている状況がうまれているのが現状です。

今回は、この混乱の原因の説明、そして、基準が実情と一致しない点について要望書内で提出してまいりました。

具体的には「THCに対する明確な基準」についてです。

現在、厚生労働省ルール(以下、厚労省ルール)では

「成分分析書上で0もしくは不検出(ND: Not Detected)でなければならない」

とされています。

我々も一般論として、THC成分含有に対し、輸入許否をすることに反対しておりません。

しかしながら、不検出は合理的ですが、完全に0というのは証明も含め現実的ではないと考えます。

実際、普段口にしている麻の実(七味唐辛子などに含まれる)にもごく微量THCは含有している可能性があります。

身の回りにある麻でできた製品のなかにもTHCがごく微量ですが含まれている可能性は十分にあるのです。

世界的にも実績がある検査会社の日本支社の化学技術部の研究員や大学教授などからヒアリングすると、「理論上は茎や種にもごく微量のTHCは含まれるであろう」ということなのです。

こうなると、THCの検出0が問題ではなく、不検出であるかどうかがポイントになることは自明だと思います。

今回の要望でも非常に重要な内容なのですが、「不検出(ND: Not Detected)」とは何をもって「不検出」とするのか、現時点の制度では、基準が曖昧すぎてCBD製品を取り扱うことにリスクが大きいということなのです。

具体的に説明すると、THCの含有に関して、
・検査方法(液体か、ガスか、機器の指定など)
・検出限界値(LOD-Limit Of Detection)
上記によって検出されるかどうかが変わってきます。
(ちなみに話は逸れてしまいますが、麻の実の輸入には「熱処理等によって発芽不能の処理を施したものであることを証する書類」の提出が必要で、成分分析書はそもそも輸入許否の要件に含まれておりません。)

分析会社によって、上記の値はまちまちです。

つまり検出限界値の設定を高く設定している会社と、低く設定している会社の2社に依頼をすると、片方はTHC検出、もう片方は不検出となる可能性があります。

ルール上、不検出の成分分析書を提出すれば、改ざんでも虚偽でもないですから成分分析書上では輸入は可能となります。

しかし、輸入後、公的機関などが改めて成分分析を行い検出される可能性はあるでしょうし、THC含有製品として厚労省から公式に発表される可能性も現状では出てきています。

実際、これまで厚労省では業者2社に対して、「THCが製品に含有しており、製品が大麻取締法に該当しないとは言えない」として発表を行っています。

このTHC検出に関して厚労省は、検査方法と検出限界値についてブラックボックスにしています。

これに対し、以前、問い合わせしましたが、明確な回答は得られませんでした。

このままでは、厚労省が「検出」という基準を明確にしていないため、各事業者はリスクを抱えたまま事業を進めなければなりません。
本来は大麻取締法にある「成熟した茎又は種子という部位による製品であるかどうか」が大前提であり、これに即してTHC含有に対する判定がされています。

しかし、これでは不透明すぎてリスクが大きすぎるとの判断から、今回の要望書「THCの基準」の設定をお願いしました。

我々の方から、特に数値の希望は出していません。大麻草は多種ありますので、その中で、成熟した茎又は種子の検査を総合的に行っていただき、その基準を設けていただきたいとお願いしてまいりました。

輸入後のCBD製品の検査・公表プロセスの透明化

2つめの要望が、「輸入後のCBD製品の検査・公表プロセスの透明化」となります。

先ほどから申し上げているように、輸入段階では問題がなかった製品であっても、輸入後の厚労省関連の検査において、THCが検出された場合に、摘発の対象や、何らかの罰則の対象となる可能性があります。

これはロジックとして矛盾していると思われるので、これに対して、今後どのような形にするか提案してまいりました。

仮にTHCが微量検出されたからとしても、大麻取締法上の大麻には該当されるわけではないと思いますので(法的に重要なのはあくまで部位なので)、厚労省発表では「『大麻』に該当する疑いがある」として公表されるにとどまります。

しかし、この事実は、事業者としては憂慮するべきことで、特に弊社のようにスタートアップは、大きくブランド価値を棄損されることとなります。

この発表による不利益はCBD業界が大きくなればなるほど甚大になると考えられます。さらに、メディアがこれに乗ずることを考えると、そのイメージダウンの大きさは計り知れません。

もしも、このような発表をプレス向けに出すのであれば、事業者が、輸入段階で判断できるように、厚生労働省側から、明確な判断基準を示すこと、つまり、検査方法や検査基準を透明化していくことを要望しました。

CBD製品に関する包括的なルールの整備

上記2つにも被る部分がございますが、現時点での厚労省ルールは、包括的なCBDにおけるルールだとは言い難く、事業者やエンドユーザーも困惑する事態になっております。

現時点での厚労省ルールが、具体性を欠いている部分があるため、以下のような問題が発生していると聞いています。

⚫ 輸入前段階での厚労省向け提出書類の、事業者による改竄
⚫ 厚労省向け提出書類に記載された数値以上のTHCが含有されているCBD 製品の輸入・販売
⚫ 重金属・残留農薬・残留溶媒などの有害物質の CBD 製品への混入
⚫ CBD含有量が表記されている数値に満たない製品の販売

もちろんこれらは厚労省の中でも監視指導麻薬対策課だけの問題ではなく、食品課や、消費者庁など省庁横断的な問題も含まれています。

CBD製品に関して、アメリカ合衆国ではFDAが包括的にこれらの基準を自らが定めようとする動きもあり、合法性や安全性などを総合的に審査し、FDAが独自に市中のCBD製品に対する認証制度の導入を検討しています。

日本も、エンドユーザー側に問題が発生する前に、市場の健全化を、厚労省がイニシアチブをとって包括的なルール作りをしてほしいと要望して参りました。

第三者機関による 検査制度等の導入

ここまでの書いてきた要望を具体化するためには、厚労省もしくは厚労省が承認する機関が、明確な基準をもとに透明性のある検査の実施、認証制度を設けることであるという考えを伝え要望して参りました。

これが実現すれば、現時点でのCBD事業者、エンドユーザーのリスクはかなり減ると思います。

今後、世界のCBD市場を考えると、日本でも大きな市場形成が期待されます。

この成長を阻害しないためにも、透明性・実効性の高い検査体制が確立されることを願っています。

まとめ

今回の要望書以外にも、様々な議論を交わしてきました。具体的な内容はこちらでは書くことができません。

日本におけるCBD事業者は現時点で少なからず存在しています。製品が製品だけに、いろいろな思惑、立場があることをワンインチも承知しております。今回の要望が関わる皆様にとって望まれているかはとても判断の難しいことだとも理解しております。

我々は、現時点でのCBD関連、また、大麻に関する取扱いに対して、賛成・反対についてどちらの立場でもございません。

あくまでも、法に抵触しないことを大前提に、皆が安心して利用できるCBD製品のための活動をしております。

厚生労働省・特定の企業・団体に対して賛成や反対の立場を表明できる存在ではありません。あくまで立場上できることをしてきた、という形となります。

とはいえ弊社はクリーンで安全なCBD企業を標榜しており、法、そして厚生労働省の見解に従う形で真っ当に経営をしていく所存です。

CBDに関するルールは、まだまだ未知数であり、かつ未整備の状態です。

弊社として意見は率直に言うことで、CBDの知識や現状について少しでも皆さんと情報を共有していき、CBD市場がより健全でユーザーの方が安心して製品を使っていただける状況を構築して参ることができればと考えております。

引き続き弊社はロビーイングを大きな柱のひとつと捉え、健全なCBD市場形成のために尽力して参ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?