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非常時に、日常を続けることの大切さ #02

乳腺クリニックで乳がんだとわかった翌日、クリニックから電話がかかってきた。大学病院の予約をとってくれる手筈だったからだ。

「大学病院の予約が取れました、○月○日です」。しかし、その日程は1ヶ月先だった。了承を伝えて電話を切るも、1ヶ月もがんを胸に抱えたまま過ごすことに不安を覚えた。待っている間に進行してしまうんじゃないか、他の病院ならもっと早く受け入れてくれるんじゃないか、と。

大慌てで他の病院の乳がん専門医師や設備を調べ、直接問い合わせてみる。でも、どこも予約は1ヶ月先。どうしようもできないので、大学病院の初診日を待つことになった。(その後、キャンセルが出たとのことで2週間早く受診できた)

GW中日の5月1日、大学病院へと向かう。今まで行った中で一番大きな病院に戸惑いながら手続きを終えて、乳腺外科へ。するとそこには、座る場所がないほど、たくさんの人で溢れかえっていた。

予約時間になっても呼ばれる気配はない。手持ちの小説はなかなか進まないので、乳がんの本をパラパラとめくる。それも頭に入ってこないまま、10分、20分、30分と待つ。35分を過ぎたころ、ようやく呼ばれた。

診察室に入ると、20〜30代くらいの先生がふたり。ざっと乳がんと今後の説明を受けると、まずはエコーを取りましょうと別室へ。胸の再建や妊孕性温存療法の希望を聞かれながら、エコー検査を受けた。

そしてまた診察室へ。現状では、ステージやがんのタイプはわからないことを伝えられる。診察の後に血液検査や心電図、レントゲンなど、一般的な検査を受け、後日CTで他の臓器への転移、MRIで胸のくわしい検査をすると告げられた。

がんを告げられてから気になっていた質問をいくつか先生に聞いてみる。いま考えるとこんなことで…と思う内容だったが、当時のわたしにとっては一大事だった。そんな質問でも、先生は親切に答えてくれた。そして最後に、「突然がんと言われて不安になると思いますが、できるだけ日常生活を続けてください。ストレスもよくないですから」と言われて、ふっと肩の力が抜けた。

がんを宣告されてから、ずっと不安だった。待っている間に進行したらどうしよう、最近胸が痛むけど大丈夫なのだろうか、抗がん剤までやらなきゃいけないのかなと。でも、いまの段階でできることはほとんどない。いつも通りの生活でストレスを抱えないことが大事なのだと思うことができた。

そして、血液検査や身体測定、呼吸器の検査などを終えて帰路へ。ひとまず、治療への第一歩を踏み出せたことに安堵した。

photo - TAKAHIRO HOSHI

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