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『ソニックと暗黒の騎士』のマリーナはペストの擬人化である、という考察

『ソニックと暗黒の騎士』日本での通称は"黒騎士"。
舞台となっている中世ヨーロッパと言えば、人類史上最悪の流行病の一つペストによる壊滅的な被害を受けた時代であり、ネズミを媒介にするその病の別名は"黒死病"
ソニックに王殺しをさせるシナリオはそういうとこまで含めた皮肉なだったり?"黒き死"よ来たれ、なんて

作中で念を押される「今回の行いは一般的に見て"ヒール"である」という事実もあるし、街中で黄泉の騎士達に怯える民衆の姿も嫌というほど見れるし
原作アーサー王伝説に存在しないマリーナ自体がペストの暗喩(そしてその媒介とされかけるソニック=ハリ"ネズミ"だから)と取ると案外しっくりくるのではないだろうか。
黄泉の騎士が街を脅かすのは=伝染病の広がりを具現化した様子。

全クリした後で振り返ると、あの物語においてマリーナがソニックを呼び出したのは単純に考えれば矛盾している行為です。
しかもマリーナにはある程度未来が予知できるような描写もあるのになぜ?
前作のように青きハリネズミの伝承があったという理由付けも特になく、"なぜ呼び出されたのがソニックであったのか、彼でなければならなかったのか"という問いに対する回答が
"彼女がペストの概念で、彼がハリネズミだったから"(媒介とできる存在を呼び出す魔術にたまたま引っかかったのがソニックだった)と考えればしっくりきます。

更に言えば、見逃しがちですがマリーナの姿ってあの世界において完全なる"異形"なんです。
パッと見"ふつうのにんげん"だけど、あの世界に他に同じフォルムの存在は全身甲冑のアーサー王と黄泉の騎士ぐらいで
作中数多く出てくる一般住人は何モチーフなのかわからないコロボックルみたいな容姿をしている…
これも前作とは違う部分。ひみリンにはシャーラ以外にもエッグマンとそっくりなシャフリヤール王も居たし、イレイザージンも典型的な人間型魔神でした。
それが今回はマリーナのみ。エッグマンすら存在しません。本作はシリーズで唯一彼が登場していない作品でもある。
そこに"人型の存在はこの世界では特定の要素を持つもののみ"という必然性があったとしたら?エッグマンはたまたま居なかったわけではなく、"出すわけにはいかなかった"
『実は当たり前に見慣れている人間のカタチこそが、本作の世界では病気を具現化したものだった』という叙述トリック。
序盤では彼女が手に取った花が枯れてしまう描写もある。それも彼女が"病"そのものだから。

毒性が強すぎるウィルスは感染が広がる前に宿主を殺してしまい、結果として広まることができない。
マリーナの永遠への渇望はそこから生まれたものかもしれません。

アーサー王の豹変についても病に冒されてしまったと考えれば簡単に説明が付きます。
かつての名君が、人々に愛されるがゆえに、流行り病を拡散させるターミナルとなってしまった。
「マーリンが作った失敗作」「最初からアーサー王などという王はこの世界に存在しなかった」のに、かつては「名君と呼ばれるにふさわしい人物」であった、という作中マリーナの台詞は、実は結局なぜアーサー王が今の状態になりマリーナを狙うようになったのかという点を一切説明していません。
本当のアーサー王は"豹変"のタイミングで亡くなってしまい、その後は彼が残した病原体が市中に広まる様子が、作中では黄泉の騎士の侵略という形で描かれていたのではないでしょうか。
エクスカリバーの鞘を持つ不死の身体は、強力なウィルスをばら撒き続ける媒介としてこの上なく便利な存在です。
しかしそれも永遠には続かなかった。マリーナに歯向かい出したアーサー王や円卓の騎士達は、その身体に芽生えた免疫や抗体機能の戯画化ととることができます。
そこで新たな媒介が必要となり、呼び出されたのがソニックだった。
あるいはこれはウィルス側の変異と考えても良いかもしれない。
結果としてアーサー王は完全に滅び、三騎士も一度は敗れてしまった。

こうなってくると、マーリンに関する彼女の発言の信憑性も限りなく怪しくなってきます。
作中で一切登場しないマーリン。彼は本当に存在し、アーサー王を作ったのか?その孫娘を名乗り暗躍するマリーナは本物なのか?
そもそも、マーリンは"人間"だったのか?
アーサー王が結局は黄泉の騎士と同じく黒いもやとなって消えてしまったことを考えると、
本編中に存在した人間型キャラクターは完全にマリーナ一人だけ。
ならばマーリンは彼女と似ても似つかない姿をしていたとしても一切おかしくないわけです。
例えば名前つながりでアライグマだったり。

ただソニックもただで操られて終わることはなく、アーサー王から受け継いだ三騎士という血清と共に勝利を収めるわけです。抗体ができるのも音速だったというわけ。
世界を滅ぼさんとする凶悪なウィルスに唯一抵抗することができるソニック…そんな話がつい最近展開していますね?
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