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古ぼけた社務所

前回の記事『大晦日〜真夜中に山に登る〜』にて紹介させていただいた社務所を再訪してみたので、少し書いてみたいと思う。残念ながら座敷には入れなかったが、玄関口より内部を見渡す程度のことはできた。

地元の方のお話によると、この社務所は普段は開かずの間と化しているそうだ。宮司と呼ぶべきか、管理者がここ何年にも渡り不在のようで、近隣の神社関係者の助けを借りて、なんとか存続に繋がっているとのこと。

前回の記事に怠慢な宮司と書いてしまったのだが、このような事情があろうとは思わなかった。むしろ、大晦日に明かりがつていたことに感謝しなくてはならないと感じた。

門戸開放

正月三が日が過ぎ、初詣客の出入りも一段落したのであろう。建屋の窓が全開になっていた。築年数はどのぐらいだろうか? 建屋が若干傾いている。
中を覗いてみると、宮司と思しき男性が掃除に精を出していた。人の出入りがないゆえ、埃も山のように積もっているのだろうか? 


お茶の間

昔で言う、「お茶の間」であろう。部屋の中央にコタツがあって、大晦日には家族みんなで団らんをする。昔ながらの光景が目に浮かぶ。アニメのサザエさんが羨ましく思えた子供時代。所々リフォーム済みであろうが、天井の板張りやふすまは素敵である。


囲炉裏ではないが…

ここは囲炉裏があった場所だと思われる。下が掘られてあるし、天井も高い。煙を逃がしやすいなどの火を扱うための工夫が見られる。ちなみに、画像は薪ストーブであろう。だが、決して興ざめはしない。これはこれで風情がある。


部屋を取り囲む渡り廊下

今となってはお目にかかれない昔ながらの造り。昭和時代までの農家の屋敷がこんな風であったと思う。大抵の家屋の中心には、広いワンルームがあって、その大きな部屋を取り囲むように渡り廊下が張り巡らされている。これだと、前述した囲炉裏の熱も家全体に行き渡りやすい。


柱と障子

柱が剥き出しなっているのが古民家の特徴でもある。美しいが、凹凸のある部屋になりがち。本棚や机など、家具を設置するのに苦労させられた経験がある。
また、スライド式の障子貼りの戸も古民家には典型的である。だが、なぜに障子なのかは分からない。紙で部屋を仕切ることによって、程良い空調環境が維持できるのだろうか? 勝手に想像を膨らませてみた。私の経験上だが、障子の戸を使用するとなぜか部屋も暖かくなったりする。


漆喰と土の壁

グレーの漆喰には年季は入っているが、何度か塗り直しをしているようだ。煤(すす)が付着していないのである。家屋に囲炉裏がある場合、天井や壁は煤で次第に黒くなっていく。残念ながら、この家の全ての部分が昔のままであるとはいかない模様。ところで、漆喰の下はどうなっているのだろうか? 恐らく土壁であろう。ならば漆喰を剥がして確認してみたいところだが…。想像しただけでロマンを感じる。


個性ある屋根

この屋根は和風住宅の代表的のスタイル。一昔前の大工による木造屋敷であれば珍しくないスタイル。木の中に木を組み込むような構造だが、校倉造とはまた違っているようだ。とにかく、ここも観察していて飽きない。


最後に一言

大晦日の深夜にこの場所を訪れて以来、猛烈に気になっていた社務所。不気味で、粗末で、古くさい。こんなに魅力あるお屋敷をこのまま放置してしまうのは勿体無いないというのが率直な意見。できることなら私が住んでやりたいくらい。宮司までは務まらないけど。


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