ドイツの障害者就労とは



OECDの調査では、だいたい人口の10%から20%、障害者としての対象者がいると、障害者の定義が国により異なる背景があっても数値としては捉えられますが、
日本は三障害の障害者数で考えた場合、7.4%ほど。比較した場合、障害者が
狭い定義で捉えられており、雇用率も対象者も世界的に比べても少なくなっていることがわかります。


(身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、各区分における障害者数の概数は、

・身体障害者(身体障害児を含む。以下同じ。)
436万人

・知的障害者(知的障害児を含む。以下同じ。)
108万2千人



・精神障害者392万4千人となっています。

これを人口千人当たりの人数でみると、身体障害者は34人、知的障害者は9人、精神障害者は31人。障害者総合支援法での障害者としての難病患者の数等は含まれません。が、難病患者の中でも、疾患により障害者手帳の取得率は異なりますが、手帳を取得されている方々もみえるため、この人数の中にもふくまれています。含まれる方々と含まれない方がいる。
また、複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないとされつつ、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有していることになる、とされます。出典:平成30年度 障害白書 内閣府)


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ドイツの障害者就労とは?
当事者リーダー・サブリーダートークセッションのなかで、外国、ドイツの就労の様子についてご質問があったため、少し整理しておきたいと思います。


◯就労支援制度改革の概要

ドイツは、
1974年成立の重度障害者開発促進法(Further Development of Severely Disabled Persons Act)により、保護を受ける対象が性質や原因の如何にかかわらず全ての重度障害者を含むようになっています。

◯指針となる原則

障害者の社会への統合に関する社会権については、社会法典(Social Code)の一般の部にうたわれている。
1975年第1回制定の第1巻第10章によると、身体、精神に障害を持つ者、またそのおそれのある者は、障害の原因にかかわらず、以下の目的のために必要な支援を受ける「社会権」を有するとしている。

◯障害の回避・除去・軽減

障害の悪化防止又はその影響の軽減
本人の意向と能力に応じた、社会、特に職業の場での地位の確保
この「社会権」はリハビリテーション政策を裏付ける指針となる原則であり、社会法(social legislation)の解釈と適用の際、法的基盤となる。政策提案の場では4つの原則が強調されている。

第1の原則では、障害者の社会への統合の目的を、できる限り普通に自立した生活をし、できる限り社会手当に依存しないこととしている。さらに、障害者のための特別な施設や規則を回避することも含まれている。

第2に、最終性(finality)の原則では、支援提供の利用要件が異なるいくつかの別個の組織や機関が支援の責任を負っている場合でも、障害者と障害を持つおそれのある者には、その障害の原因如何にかかわらず、必要な支援は提供されなければならない。

第3の原則は、障害の程度とそれによる影響を最小限に抑え、避けがたい影響をできる限りカバーするために、可能な限り初期の段階で介入するというものである。

第4の原則は、障害者あるいは障害を持つおそれのある者1人ひとりのニーズや状況に合わせ個別の支援を作りあげるというものである。したがって、対象者が受ける支援は障害の程度により変わるものではない。

1986年と1990年に改訂されたこの重度障害者法は、現在でも義務雇用の基礎を成している。要約すれば、1974年の法律が、職業関連の障害度30%から50%の障害者を雇用率に含め、

従業員16人以上の雇用主全てに適用するようになった。

雇用率自体は6%で据え置かれたが、4%から10%の範囲内で設定できるよう別規定が設けられた。

◯ドイツの障がい者の定義
身体的、知的、精神的な能力の欠如による障がいの影響 を10単位で判定し、


- 0~20:障がいなし
- 30~40:障がい者として認定
- 50~:重度障がい者

として認定する

2017年までの10年で、雇用率が2.4%⇒5.0% まで増加

それまで、障がいを持っていてもオープンにしていない 人が多かった

障がい者雇用の位置づけ・労働環境が改善され、 障がいをオープンにする人が増えたと

雇用事務所(employment office)の裁量で、特に雇用が困難と思われる者、企業内において訓練を受けている者等を、1名最高3名にまでカウントする

◯登録重度障害者
 公式な統計は、重度障害者法下で登録した障害者、即ち障害の程度が50%以あや
上の者と「同様の立場にある」者の人数に基づいている。
登録をすると、有給休暇の5日追加、交通費補助(travel concessions)、電話料金やテレビ・ラジオ受信料割引、税額控除等のメリットがある。
1993年に旧西ドイツでは、約560万人が重度障害者として認められていた。旧東ドイツでは81万4,000人であった。

全人口に(約8,315万人[2019年9月,独連邦統計庁])占める重度障害者の割合はおよそ9.4%である。表G.1は年齢による割合を示している。(重度障害者のみ、30〜40に該当する障害者の方々が入ると数字はさらに膨らんでいきます)

登録障害者の障害のデータでは、ドイツの重度障害者の約3分の1は、内臓機能に制約があることが示されている(ZENTRAS, 1996)。Winkler(1996)は、これについて「目に見えない」障害の広がりとコメントしている。

若年層では精神障害も多い。


◯就労支援の方向性

連邦労働社会省(BMAS)では、障害者就労を進めていく上で、2つの政策に力を入れているといいます。

◯インクルージョンの推進
・企業にとって1人目の障害者を採用することが障害者雇用の上で大きなハードルとなってい ることから、はじめの一歩を後押しするプログラムを推進している

・企業が障害者雇用率を達成したら政府が報奨金を出すなどの企業の障害者採用に対するモチ ベーションをあげるような施策に取り組んでいる

◯保護就労作業所から一般市場への移行

・障害者のセーフティーネットとして保護就労作業所に戻る権利を認める

・雇用者に対しての補助金や就労コンサルタント支援などを進め、雇用者の負担を軽減する


ドイツ国民の 9.4%にあたる 750 万人が重度障害者

このなかから、生産年齢人口は 270 万人

そのうち保護作業所で働いている者は 30 万 9,000 人

インクルージョン企業というところで働いている方々は1万 2,000 人

また、重度障害者で失業中・求職活動している者は約 16 万人という報告があります。

◯インクルージョン企業とは?

統合企業(現インクルージョン企業)という言葉は 1980 年ごろから使われ始め、

当時イタリアで精神病患者の規制法が改正され、こういう人たちにも働く場が提供されるようなり、この 情報がドイツの病院関係者や学生の間で広まり、精神病者への社会的な救済措置が関心を集める ようになったことから、統合企業がうまれたといいます。

統合企業も、もともとは互助・自助組織と して発生したようで、

家族に障害者を抱えている人々のグループ等がつくっていたのですが、

2000 年の法改正に より州政府が事業所の認可を行うようになり急速に増えた。

ドイツ全体でインクルージョン企業は 850 社ほどあり、

雇用者数は約 2 万 4000 人ほど

うち1万 4000 人が健常者
1 万人が障害者

障害種別の構成は、
知的障害者 22%
精神 障害者 29%
身体などのその他の障害者 49%となっている


インクルージョン企業は、障害者に職場を提供する会社であるが、他の一般企業と同等の競争 力を求められている

位置付けとして、やや日本の就労継続支援A型ともことなっているように感じます、

また、一般の従業員と同じように労働契約を結び、賃金も労働組合の取り 決めに基づき一般と同等の給与で支払われる。


インクルージョン企業は、

従業員数の 30%以上の障害者を雇用し、
また、多くはインクルージョン企業では 50%以上の障害者を雇用しています。

業種は、飲食業(レストラン、飲食店、カフェ、ケータリング)が全体の 10.8%

小売業 11.5%
野外でのサービス作業(緑色整備、パーティー製品レンタル、農業、自 然保護)12.5%
清掃等の施設管理 9.5%


ドイツの一般企業 2,000 社が法定雇用率を守って障害者を雇えば、障害者の失業者はいなくな る可能性があるなか、

実際には未達成で、雇えていないため、インクルージョン企業が役割を担っているようです

様々な背景の違い、表にでにくい情報もある可能性を考えた場合、全体像のなかからは、不十分な情報があるかもしれません。今後もひとつの観点として、他国の情報や状況、学べる点について、学んでゆければと思います。


参照・引用:
障害者就労支援制度の国際比較のための
海外視察(オランダ・ドイツ編)-調査報告書-

障がい者雇用に関する経営・マネジメントセミナー「法定雇用率上昇局面における障がい者雇用」~多様化・高度化する組織の再点検~ -パート2 ドイツ調査報告-

難病患者の就労支援、就活、働く準備、書類作成、使えるサービスや支援機関、整理の仕方等、難病患者の就活について、当事者の皆様をイメージしながら、元難病患者就職サポーター、リワーク支援、医療現場での支援の体験と実践に基づいて書かせていただいています。