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日本はどうなる?政権交代を機に考えてみた(2)〜経済政策の検証〜

安倍政権下のアベノミクスは二重の意味で失敗でした。三本目の矢である成長戦略が不発だっただけではなく、そもそも日本社会がどのような成長段階にあるのかという現状分析が完全に間違っていました。

成熟を越えて衰退の局面にあるのに、高度経済成長期の処方箋をあてたのですから、まったく逆のことをやっていたということになります。インフレターゲットが達成できないのは当然です。

1)産業界、経済界の強者を手厚く保護し、それ以外の平民を冷遇した
(税制と雇用に関する政策に現れています。言い訳として政府が持ち出すのは、市場原理主義や、実際に起きた試しのない「トリクルダウン」があります)

2)冷遇した平民に政府のことを知られないように、メディアをコントロールした
(記者会見や情報公開の貧しさ、不祥事の調査をおざなりにしています)

3)行政の人事に介入し、能力よりも(利己的な動機による)従順さをもって登用した。民間においても、適当なナショナリズムを振りかざして味方を増やし、国民の支持が強固であるかのように演出した
(内閣人事局の活用、検察、日銀、NHK人事の操作といった、権力者のための「政治主導」。安倍明恵夫人の行動の放置、「桜を見る会」の政治利用など)

2)3)は、1)の動機に関係する項目として挙げました。

日本人の意識において「政治」とは何か。安倍総理が辞任を表明すると、政権支持率が上昇しました。管政権が誕生すると、期待する声が大きくなりました。

これって、政治家への評価というより、皇族に対する反応のようではないですか?日本人は、今だに、総理を殿様だと思っているのです。

殿様に望むのは天下泰平。情があるから無体なことはしないだろうという先入観があり、根拠のない信頼を置いています。それは天皇と同様、天下統一した殿様が、日本国を代表しているかのように錯覚するからです。

いわば、象徴としての総理大臣です。何を象徴しているのかというと、「日本すごい」という、くだらない田舎者の虚栄心です。「国際舞台に立って見劣りしない」とりわけメリケン国の大統領とサシで話ができるオラが殿様。外交が社交になってしまっている、機能しない政治の一つの姿です。

「日本すごい」は、ヴァーチャルな「国体」を崇め奉ることで、日本人である自分もすごい人になった気がするという、馬鹿げた気分のことです。そうしたくだらない意識が右派、右翼であるという間違った解釈をされ、深く考えることもせずに右派政権万歳と言っているのが現在の多数派の日本国民の姿です。

これらで示したように、日本人の政治観は今に始まったことではなく、長い長い歴史があることなので、骨の髄まで染み渡っており、そうした思いを抱くのも無理はないことだと思いますが、それは言い換えれば国民の意識が近代化に追いついていないということだと思います。

ヨーロッパと比較しても、時間をかけてゆっくりと成長し成熟し衰退していく彼
の国々にたいし、日本は、あまりにも急激に西欧文明の果実である資本主義、民主主義を受容してきて、それが戦後復興の理想的な処方箋だったために、輝かしい高度経済成長期を謳歌することができたのは事実ですが、その理念はまだ十分咀嚼しきれたとは言えないでしょう。自民党の憲法改正草案の未熟さにもそれが現れています。

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前述した2)3)からは、総理=殿様、前近代的な統治構造であることがわかります。権力者を頂点に頂くピラミッド構造を頭に描き、成長を終え成熟から衰退に向かう社会において、それでもまだ過去の栄光に縋ろうとする、「すごい日本」を手放せない、とするなら、夢を現実に変えてくれた功労者を優遇して頑張ってもらおうとするでしょう。強者を保護し弱者を切り捨てることで、国体としての日本の威信を保つ。国民あっての日本ではなく、実体のないプライドとしてのニッポンが大事なのです。

だから、経済政策も、成長期における処方箋になってしまった、というのが僕の考えです。現実を見るのが嫌、老いを自覚するのが嫌。まだまだやれるという根拠のない空元気。身の程知らず世間知らずの安倍政権の路線を引き継ぐ、と公言した菅内閣には1ミリも期待できません。

このままでは暗い未来しか描けません。アルゼンチンやギリシャのような、突然の財政破綻ではなく、じわじわと嫌ぁな感じが蔓延して朽ちていく経済破綻、社会破綻が起きると思います。

コロナからの復活ができるか否か。これが最後のチャンスだと思います。これに失敗すると、日本は経済も社会も修復不可能なまでに破壊されるのではないでしょうか。菅総理では失敗の可能性、大です。

でもまずは菅政権を少し観察してみてから、次回は、日本の暗い未来の中身と、そうならないためにはこうすればいいのに、という提案について書くことにします。経済政策には処方箋があります。