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みちょぱが30人

会社のBBQイベントに参加した。

入社して約2ヶ月。パソコンがやけに小さく見えるマッチョ先輩も、最近結婚したというショートカット姐さんも、お昼はおにぎり一個しか食べない同期の男の子も、休日の顔を知らない。

チョイ焦げの肉を食べ、生ぬるいビールを飲み合えば、もっとお互いのことを知れるはず。

積極的に交流することで、あわよくばプロテインを大量にいただいたり、あわよくば結婚披露宴で新郎新婦+私の3人でケーキ入刀をしたり、あわよくば「こんなおにぎりは嫌だ」の大喜利で盛り上がれるかもしれない。

そんな期待を胸に、会場の「THE BBQ BEACH in TOYOSU」へと向かった。

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前日の大雨が嘘のような、雲一つない(と言いたいがわりと雲がある)青空が広がる絶好のBBQ日和。肉を焼く前に、肌が焼けそうだ。

会場に着くと、既に受付を済ませたマッチョ先輩がこちらの存在に気づき、「おーい、こっち!」と両手を振って笑顔で迎えてくれた。筋トレに命を懸けているだけあって、その腕はガッチリとしている。ぜひ一度、丸焼きにして、塩を振ってかぶりつきたい。

参加者がそろうと、乾杯の挨拶もそこそこに、皆が思い思いに動き始めた。

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マッチョは見た目に似合わず、丁寧に一枚一枚焼くタイプ。短髪ネキは肉には興味を示さず、自席とビールサーバーを往復している。おにぎり坊やは紙皿や割り箸を用意していて、新入社員としては百点満点だ。

夏日の5月下旬。レインボーブリッジを臨む小洒落た会場で、ふかふかのソファーに座りながら肉を頬張り、お酒を喉に流し込む。文句なし。我々は最高の時間を過ごした。…と言いたいところだが、どうしても一つ気になったことがある。



会場内にみちょぱが30人くらいいた



正しくは、「みちょぱ似の女性が30人くらいいた」だか、この際もう言い切ってしまいたい。あれはみちょぱそのものだ。


健康的な小麦色の肌、金と茶のハーフみたいな長髪、ノースリーブニットに白の薄手の羽織もの、スキニーデニム、紐がジャラジャラしたサンダル。みんなだいたいこんな感じ。


向かいのテーブルには、LDH系彼氏とイチャイチャみちょぱ、


入り口付近で連れ犬と自撮りみちょぱ、


ビールサーバーの列にサングラスみちょぱ、


ゴミ捨て場に子連れみちょぱ、


フォトジェニックな砂場にTikTok撮影みちょぱ、


男子トイレにみちょぱ(流石にいない)


とにかく、行く先々にみちょぱがいた。どのみちょぱが良いなんて、優劣はつけ難い。全みちょぱがみちょぱとしての自覚を持ち、みちょぱとしての行動を心掛けているように思えた。


帰りに豊洲駅まで歩いた時も、3〜4みちょぱに遭遇した。アド街ック天国が「豊洲コレクション」を作るなら、担当ディレクターはさぞ苦しむだろう。みんなみちょぱなのだから、それはもう「みちょぱコレクション」になってしまう。


そんなことを思いながら、帰りの電車でひとつの結論に至った。


「肉焼くところにみちょぱあり」


ここ数年で最も大きな発見をした気がした。半年前に書いた大学の卒論よりも、ずっと公益性があるんじゃないか。


家に帰ってからもみちょぱのInstagramを確認してしまうほどに、みちょぱが頭から離れずにいた。


全体的に茶色めな投稿を下にスクロールしていくと、ある投稿が目に留まった。2021年11月8日。数日前に23歳の誕生日を迎えたみちょぱが、「お祝い集」と題して複数枚の写真を投稿している。


その1枚目が、まさに肉塊を前に笑顔を見せるみちょぱの写真だった。今日訪れたBBQ会場の全ての肉を集めても到底及ばないほどの、大きな赤い塊だ。


やはり、私の考えは正しかった…。



「肉焼くところにみちょぱあり」







今日という素晴らしい日を丁寧に振り返りながら、そっと、「いいね」を押しといた。

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