マーダーミステリーの嘘は何でもよいか否か
先日、マダミス後の雑談に花が咲き、いくつか色んな会話をしていたのですが、ひとつ興味深い話題があったので、備忘録として書きます。
自戒を込めて。
マーダーミステリーの嘘について
議論中の嘘に関しては、おおむね2パターンに分かれます。
・議論中、犯人のみ嘘を吐ける。それ以外は嘘は吐いてはいけない
・議論中、誰でも嘘を吐ける
前者に関してはマダミス初期の作品に多いイメージで、最近では後者が多いイメージです。どちらが良い悪いはまた別の話なので省略します。今回話すのは後者での嘘の範囲についてです。
最近ではさらに
・議論中、誰でも嘘を吐ける。ただし、空想上のキャラクターを創作したり、魔法を使えたりするような特殊能力を創作するような嘘は禁止する
このような注釈がある作品もあります。個人的にはそんな嘘を吐いたこともないので気にしていませんでした。ただ、なぜこういった嘘を注意する文言があるのか、という例を聞き「なるほど!」と思ったのでご紹介いたします。
※これ以降、例に関しては、特定されないように自分がアレンジをしています。あくまで例です。
問題例
例①
密談中
A「その情報を教えてくれませんか?」
B「(見られると犯人とバレるかも)……ちょっと今は教えたくないな」
A「じゃあ、特殊能力(霊視)を使います。この能力は相手のカード1枚を見せてもらう効果です」
B「そうですか……じゃあ、どうぞ」
A「ありがとう(特殊能力なんて無いけどね!)」
例②
C「その情報を教えてくれませんか?」
D「(見られると犯人とバレるかも)……ちょっと今は教えたくないな」
C「でも、それを見せてくれないと、犯人と疑うよ?」
D「いや……これ、見せることができない非公開のカードなんですよ……」
C「……なるほど、わかりました」
D「ごめんね(カードに非公開なんて書いてないけどね)」
この例①と例②に関して、「議論中、誰でも嘘を吐けます」というルールで運用した場合、良いと思いますか?悪いと思いますか?
マダミスの不文律として(それが無いと言えば無いのですが)ルールに干渉する嘘はNGという認識の人もいるでしょう、自分もそのつもりです。逆に、これも嘘のひとつだ(ルール内に乗っ取った行動だ)、と思ってOKの人もいるでしょう。個人的には前者で、「嘘を吐く」のはあくまでキャラクター視点としてなので、それを逸脱するのは違うという認識です。
ただし、実際問題としてOKの人もNGの人もいる可能性があるのであれば、問題が残ります。というのも、NGの人から見たらOKの人の嘘はルール違反になり、OKの人から見たらNGの人はクレームを言っているように感じるでしょう。これを解決するためには、事前にプレイする前に認識を擦り合わせるのがよいのかな……と。NGの人も事前にこれがOKのルールだ、という前提を共有されていれば従って遊ぶことができます。遊ぶ人の中で認識に齟齬があって進行するのは、不幸な結末を生みやすいのではないか、ということを思いました。
改善案
自分としては、ルールに干渉する嘘はNG派ではありますので、NG前提での改善案として提案。
改善案:「ルールで整備する」
冒頭でも説明したように「ただし、空想上のキャラクターを創作したり、魔法を使えたりするような特殊能力を創作するような嘘は禁止する」などといった注意文を明記することで、ある程度は制約することができると思います。他の理由で設定されているかもしれませんが、結果的には良い方向に作用してる気がします。また、この禁止令に関しては無駄な嘘は真相究明をする際のノイズになるので控えるように、という注意喚起と共に提唱できるので、有効ですね。
もしくはシンプルに下記のような制約も良いかと思います。
「ただし、ルールに干渉する嘘は禁止する」
これを記載することで、例示のものは防ぎやすくなると思います。あんまりルールは増やしたくないけど、事前に言った方が良いのかな……;;
GMが管理するということもできると思いますが、密談中に行なわれたら注意できませんし、そもそもGMガイドとして設定されていない場合は判別できません。やろうとしたことを否定する場合は嘘の否定に繋がり、それはゲームに大きな影響も与えてしまう可能性があります。そういう意味でもラインが決まっていないとGMの判断が難しいと想像に難くはありません。
ちょっとした懸念点
もうひとつ懸念点はあります。
嘘ではなく、本当に特殊能力があったり、非公開のカードであったりする場合です。例示をご覧ください。
例③
密談中
A「その情報を教えてくれませんか?」
B「(見られると犯人とバレるかも)ちょっと今は教えたくないな」
A「じゃあ、特殊能力(霊視)を使います。この能力は相手のカード1枚を見せてもらう効果です」
B「そうですか……じゃあ、どうぞ」
A「ありがとう」
例④
C「その情報を教えてくれませんか?」
B「(見られると犯人とバレるかも)ちょっと今は教えたくないな」
C「でも、それを見せてくれないと、犯人と疑うよ?」
D「いや……これ、見せることができない非公開のカードなんですよ……」
C「……なるほど、わかりました」
D「ごめんね」
例③には、きっとキャラクターシートに「特殊能力(霊視):相手の非公開カード1枚を見せてもらう(ゲーム中1回)」とあるのですかね。例④には、きっとカードに「非公開:このカードを他の人に見せてはいけない」とあるのでしょう。
例③が本当だと証明する方法としては「スキルカード」みたいなものを用意しておき、使用する際にはそれを公開すれば解決します。ただし、例③に関しては別のカードを用意することも難しいため、証明をすることは困難です。と考えると、なんでも嘘OKにしてしまった場合、例②と例④を区別することはほぼ不可能になります。それでよいと思うか悪いと思うかはデザイナー次第かと思いますが、そこまで懸念しなければならないのかな……とも思い始めてます。
余談
そもそも「ルール干渉する嘘は禁止」であればある程度は解決しますが、本当にそれが正解かはちょっと時間をおいて考えたいと思います。
他にも嘘の極端な例も考えられます。
例⑤
E「この秘密のカードを取得するためには、アイテムカード『鍵』かスキル『鍵開け』が必要か……」
F「あ、スキル『鍵開け』を持っているので確認するよ(嘘だけど)」
E「そうなの? そのスキル、確認させてよ」
F「いや、キャラクターシートに書かれているスキルだから(嘘だけど)、見せられないよ」
キャラクターシートを見せられないことを利用した高等テクニックです(笑)。嘘という範疇を超えたルール干渉なので、さすがにルール違反だとは思います。
カードゲームでは、ベースのルールは用意されていても、カードごとに記載されているルールを優先するというルールが大抵は設計がされています。たとえば「カードをドローするのは1ターンに1枚」というルールだとします。ただし、とあるカードには「プレイしたらカードを2枚ドローする」と記載があり、それを使用すれば2枚ドローすることができます。本来のベースのルールでは1ターンに1枚しかドローできないはずが、カードのルールがそれを覆しているわけです。「カード=基本より優先されるルール」と言えます。皆さんもある程度、そのようなルールに乗っ取ってカードゲームを遊んでいることだと思いますが、GMレスのマダミスではそれがとても難しくなります。
理由は、非公開領域に自分しか認識できないルールが設定され、それを利用して他プレイヤーに干渉しているから、それを証明する手立てがありません。また、誤解をしてしまって正式な挙動ではない、という可能性も起こりえます。自己責任とはいえ、難しい遊びになりますね……。
実は、キャラクターシート内に記載されてるルールを誤読してしまったため、正しい進行ができないという局面を体験したことがあります。読み間違いなんて誰にでも起こりえるので難しいとは思います。でも、色々と新しい試みを表現したいというゲームデザイナーの気持ちも理解できます。そういった事態を極力避けたい場合、どうしても凝ったギミックを入れる場合などでは、素直にGMレスではなくGMありのゲームにするのが良いかもしれません。
何の話してたっけ?
という感じですが、以上です。ここまで書いておきながら、どうしたらいいだろなぁ……という気持ちもあります。おあとがよろしいようで。
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