昭和先輩と令和先輩

『後輩に「何度も聞くな」という態度をとることは、萎縮させるだけで、必要なことを相談してこなくなるから、「何度でも聞いて。」という態度が望ましい』とツイッターで見かけた。

学生時代、後輩から贈られた卒業のメッセージへ一様に「怖い先輩だったけど・・・」の枕詞を書かれていた私は、怖がられることへのアンテナ感度が高い。妹の夫にも怖がられている。明るく楽しくしているつもりなんだけど、常に機嫌のいいタイプではないことや低血圧、人見知り、豆腐メンタル、またみんながなぁなぁにしようとしていることを見逃さないタイプなので、実際怖い先輩なのだと思う。ダメなものはダメだというし。(けど、人に怖いと直接伝えてくるあんたたちのメンタルが怖いわ。というのが私の感想。)

ちょうどその話を耳にしたとき、精神保健福祉を勉強しだしたり、他分野から異動してくる後輩が増えたりとタイミング的に自分に刺さったのだと思う。後輩にはこう伝えていた。「メモはもちろん取ってもらいたいけど、分からないことは何回聞いてもらってもいいから。こちらの説明がうまくできていないかもしれないし、理解しようとしてくれることはうれしいことなので。」

よし。うまくいった。
会社に何人もいる昭和気質の厳しいだけで中身のない、無駄にいばる先輩にはならないぞ。

こちらの言葉がうまく伝わったのか、ほんとに聞いてくる。何度も聞いてくる。大忙しだった。それでも聞かれることは苦ではなかったし、彼女らの知りたいという気持ちに応えてあげたかった。

それから、1年。

あまり仕事が得意ではない後輩のミスをカバーしたことがあった。
だけど、私は令和先輩だ。頭ごなしに叱ったりはしない。
彼女を傷つけないように、別の後輩に呼び出してもらい、みんなの目に触れないところで話をした。

「今回の件で、ささいなミスでたくさんの人に迷惑をかけるって実感した?私もたくさん失敗をしてきてここまで来てるから、今回のことを責めるつもりはない。だけど、今回のことできちんと何が原因で起きたことか、自分の何がダメだったのか、正直に自分に向き合ってほしい。私はそれだけは自分にうそをつかないでやってきたよ。長く会社にいると、そこをごまかしている人っていつまでも同じ失敗を繰り返していると思うから、こんなことをいうのはおせっかいもはなはだしいと思うけど、これから先のことを考えたら、今回の失敗をきちんと振り返ってほしいと思う。」

完璧。
お昼休みもぶっ飛んで、各部署頭を下げてお願いして、車を走らせてカバーした。「のに」全く恩を着せなかった。完璧だ。

と思っていた。

思っていた。

ところが、それから何日もしないうちに、同じようなミスを彼女は繰り返した。
繰り返したまではまだよかった。それを指摘した時の反応が「やだー忘れちゃったーうふふー」というものだった。

その時、私の中の眠れる昭和先輩が目を覚ましてしまった。
「いや、こないだ私が話したこと少しは考えてくれたのかな?」

なんだその軽い反応は?
ちっともおもしろかねぇよ。
もっと必死に謝らんかい?
こっちがやさしく受け流したからって軽く受けとめてんのか?ん?


全然令和先輩じゃなかった。中2で先輩という立場になってから20年以上。
染み付いた昭和先輩はなかなかの濃度で全然存在している。
(いや、先輩になった時は平成だったけど。)

この件で、自分がいかにフェイク令和先輩だったのかということに気づいてしまった。
そうだ。令和先輩のふりをしていたに過ぎなかった。

だけど、昭和先輩にはもう戻りたくない。
これは、新しい知識・見識をたくさん取り入れて、自分をアップロードしていくしかないのだと思う。

令和先輩と昭和先輩を行ったり来たりしながら、よい人間になれるよう、また日々精進していくしかないのであーる。(昭和)

結局は自分がどうありたいか。と向き合っていくしかないのよね。。。

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