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体を引きずりながら獲得したTIFA2020,Honorable Mention

TIFA(Tokyo International Photo Awards)2020に応募した1点『Ugly Trash』がHM(Honorable Mention)を獲得しました。

実際にサイトへ行くとHMは数多くの写真が入選していることがわかります。私にとってはフォトコンで初めて結果を出せたことになりますが、それ以上にもっと価値があるものなんだということをお話します。

鬱で彷徨ったのがキッカケ

パワハラと自分の仕事能力の無さで度々繰り返していた適応障害(幻聴や極度の倦怠感など)がありました。
それまではしばらく自分の判断で休んで再就職していましたが、ある会社でとうとう課長や部長などから精神科へ行くことを勧められて精神科デビューを果たします。
双極性障害で手帳も申請中です。

極度の鬱というのは薬を飲んだからといってすぐには治りません。休職の申請をして自宅で休んでいても、毎日のように食事やお風呂、帰宅途中の道で勝手に涙が流れていることは続いていましたし、夕方までずっと寝たきりということもありました。

なので精神科へ通うということは初めが1番辛いのです。体をノソノソと動かし、診察中はボソボソと応答する体たらくです。

「まずは朝起きて夜に寝ることから整えていきましょう」

最初の治療はそういうところから始まりました。診察は午前中なので、家に帰ったらたぶん寝てしまうのは確定的に明らか……。お金がかからずに時間を潰せるものはないか?

で、カメラですよ!

休職する少し前に買ったNikon D7100と10-24mm,F3.5-4.5。そこからはじまり35mm,F1.8と70-300mm,F4.5-5.6を揃えました。どれも中古で安いものばかりですが楽しかったです。

カメラリュックを背負って精神科にいるのは私だけ(笑)でもカメラを持つのは正解でした。歩くし、集中して時間を忘れられる。



あの時は雨だった

精神科に通ってはカメラで時間をできるだけ潰して家に帰る日々。お金がないときは雨の中自転車で片道40km漕いで通院していました。
他者から見れば仕事できるじゃんwwwと見られますがふとした瞬間にブラックアウト(色々なことがフラッシュバックして視界がまるで周辺減光を徐々にスライダーでマイナスに動かすみたいに真っ暗になる。怖い)があり
「こんなんで仕事しても迷惑かけるだけだ……」
となっていたのでより撮影に注力しました。

傷病手当の支給が始まり電車で通えるようになると撮影に割く時間を多く取ることができました。
その時は普通程度に雨が降っていました。それでも精神科の最寄り駅周辺をウロついていると、線路の高架下にやってきました。
低く薄暗く、ビチャビチャと水が錆びついた鉄骨を伝って落ちていました。
すると線路と線路の隙間から漏れる光で、捨てられているゴミにふんわりとスポットライトが当たっていました。


自分はゴミか

そんなことを考えながら撮りました。見返してみるとこのゴミの写真は一枚しか撮っていませんでした。
この写真、密かに気に入っていて思い出したら何回も現像をし直しているものでした。
ゴミに思い入れがあったのかもしれません。



自分を受け入れる一枚

まさか自分にHMが来るとは思ってもいませんでした。Twitter上でもHM以上をもらっているのはすごい人たちばかりで、
「自分の腕では擦りもしない。とりあえず出すことに意味があるんだ」
程度の気持ちでした。

鬱状態の最中で撮影した一枚がHM

これは私にとってダメな自分をどこかで肯定されたような気持ちでした。

嬉しい、というより幸福です。

カメラはいいな。私を救ってくれるんだから。
ありがとうカメラ。ありがとうNikon

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