名は体を表す


 「名は体を表す」という言葉があります。
 人やモノの名前は、その本質を的確に表すことが多い、ということわざです。

 たしかに、名前に「優」が付く人は優しい気がするし、苗字が「神崎」の人はみんなかっこいい。

 気がします。

 さて、今回は僕の中学校の頃の友だちの話です。

 太(ふとし)という同級生がいました。
 太は恰幅の良さそうな名前をしている割に体型は中肉中背。クラスで浮きも沈みもしない、ザ・中学生といった感じの中学生でした。
 僕と太は部活が同じで、自転車通学という共通点もあり、すぐに仲良くなりました。部活の帰りはいつも一緒に駅まで自転車を漕ぎました。

 学校から駅まではほぼ直線の道でしたが、道中の布団屋の細道を行くと、やや小さめの公園がありました。自転車で走るとすごく気持ちのいい細道。身の丈に合った心地良い公園。そこで部活やクラスやマンガの話をして、太や他の友だちとで額に風を受けながら帰るのが僕らの青春でした。

 シャーーーー

 そんなある日、僕ら2人は公園でガラの悪い高校生に絡まれました。

 「よォ中坊、邪魔なんだけど?」
 地元では有名なヤンキー校の連中です。4人くらいいました。絡まれた時点でそそくさ逃げればいいものを、少年マンガが大好きな僕らはちょこざいな正義感で立ち向かってしまいます。

「うるせーバーカ」「偏差値40!」

ボゴッ ドガッ ガスッ

 偏差値の割に重いパンチが頬や腹部に刺さります。やめときゃよかった。でもやられたまんま逃げたくもないな…どうしよう…
 そんなことを考えていたとき、隣にいた太が後ろから蹴られました。前に転ぶ太。パンチを構える高校生2人。その角度は危ない、ふとし!!

 そう思った矢先、

 太は転びながらでんぐり返しをし、偏差値40ズの鳩尾にかかと落としを決めました。

 シーーーーン

 1人がボス格だったのでしょうか、空気が止まりました。僕は思い出したかのように別の1人を金的で倒し、太と僕は急いで自転車に乗ります。鈴をチリンチリン鳴らしながら最後の1人を追いかけたり煽りながら、どさくさに紛れて大通りへ逃げました。

 シャーーーーーーー

 自転車は空を切り、僕らは駅へ向かいます。

 シャーーーーーーーーー

 逃げるように、祈るように。

 チリン 
「なあ、」

 太がゆっくり振り返ります。
 遠くから、高校生の咆哮。

「駅前のラーメン、食いに行こうぜ」

 いやおまえ、


 神経図太いんかい!!!



 以上です。ちなみに全部作り話です。ありがとうございました。

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