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「春ピリカグランプリ」朗読配信ウラ話/⑪「ひとさし指の世襲」 作:ヱリ

「春ピリカグランプリ2023」すまスパ賞受賞作品の朗読について、読ませていただいた感謝と作品への向き合いを綴っていきます。

今回は、ヱリさん作の怪作=快作、「ひとさし指の世襲」についてです。

ヱリさんについては失礼ながら、この春ピリカではじめてお名前を知りました。エの字を「ヱ」とされるあたり、庵野秀明っぽくて外連味がありますね。
その個性的なお名前の通り、作風もスパイシーで味わい深い。
安部公房や押井守を思わせるような不条理感が、SF心をくすぐります。
「こいのぼり、ってお母さんいないのよ」のセリフにハッとしました。
大きい真鯉はお父さん、小さい緋鯉は子供たち。なるほど、お母さんはどこにいるのか。このあたりから女の正体の察しは付くのですが、にしても、なぜ上半身だけで踊っているのか。
理由はあるのか、ないのか。メタな世界をどう解釈するべきなのか。

何度も読みたくなる今作を、何度も聞きたくなる朗読にしたいと、以下のような点を意識しました。
・冒頭の一文は強めに打ちだす。
・主人公は女性と思われるが、主人公と女のセリフでのやり取りを生かすために、地の文ではあえて女性らしさをあまり出さないように。
・地の文は気持ち早めに、押し流すようなテンポ感で。全体のスピードは間でカバー。
・オールナイトニッポンの曲(ビタースイートサンバ)は権利の関係で使えなかったので、似たようなサンバ調の曲をチョイス。
・「女」の存在が奇妙でもあり、近しくもある、夢の中のような距離感をイメージ。
・砂丘=指紋のスケール感を思わせるようなBGMとエンディング。

こういう作品を、うまく読めるようになりたいものです。

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