㊉オノマトペテン師
ちょいと見てくれ聴いてくれ。
未成年です。成人してます。
今日はこの楽曲を。
オノマトペテン師/初音ミク
作詞曲、イラスト:てにをは
実際この楽曲に関しては
落語曲のnoteや2018年上半期10選でも語ってはきましたが、
それでも未だ未だ語れる、いや、語りたい。
と思ってしまいましたので、ここに残させていただきます。
1番最初のAメロの詞と、そこに何個の言葉遊びがあるか、そしてその詞の解説だけ付け加えていきます。
「まだ聴いてない!」という方がこのnoteを読んで、少しでも聴きたくなってくれたら、非常にうれしいです。
ただ正直、この界隈ですから「もうこの曲聴いたよ!」という方も多数いらっしゃると思います。そういう方には、「まだ聴いてなさそうな人にオススメしてみようかな」とちょっとでも思わせられるように尽力いたします。
なお、「歌詞より曲を聴く派です!」という方にも是非聴いていただきたい楽曲です。ギターがぎゅいーんってなって、ベースが喋って、ドラムが盛り上げどころをよく知っており、噺(はなし)すらリズミカルです。何卒。
以前も話しましたが、「ネオ落語ファンク」とかいう挑戦的であり自信的である新ジャンルですので、好みかどうかは別として、聴いておいて損はさせません。
では参ります。
まず、1番最初のAメロをごっそり引用します。
坊主が屏風に上手に頬ずり ♭入ったファミレスで
ばれんたいんでい暴れたいんでい 切り捨て御免なちゃい
酔いどれ良い奴隷養老霊火 ♯な味付け味噌らあめん
鮭のべいべぇいくら叫んでも あの子は孵らない
ここに何個、言葉遊びがあるのか。
まずは下にスクロールする前に考えてみましょう。
細かいところや、少々被っているところも含め、僕は以下の「言葉遊び」を発見いたしました。
①坊主が屏風に上手に頬ずり
有名な早口言葉である『坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた』を改変して、韻を重視した詞になっています。
②♭(フラット)入った
擬態語である「ふらっと」の書き文字として、音楽記号の「♭(フラット)」を当てています。
③♭入ったファミレスで
「♭(フラット)」は「元の音より半音低く」を表す音楽記号で、その後に続く単語が「ファミレス」。「ファ」「ミ」「レ」と段々低くなっています。また、「ファ♭」が「ミ」になってしまう「ファ」が、敢えて「元の音」という事で一番最初に登場しています。
④ばれんたいんでい暴れたいんでい
「バレンタインデー」の語感に合わせて、「暴れたい」を江戸風訛りにしてもじっています。
⑤切り捨てごめんなちゃい
「切り捨て」は「キリスト」と掛かっています。
⑥酔いどれ良い奴隷
「酔いどれ」の語感に合わせて、「良い奴隷」を当てています。
⑦養老霊火
「養老」とは『老人をいたわり世話をすること。また、老後を安らかに送る事』。そしてそれと対になっていると思われる「霊火」。「死後に燃え上がる」とでも訳しておきましょう。これらを有名な『ヨーデル』の「ヨロレイヒー」と掛けて並べています。
⑧♯(シャープ)な味付け
外国語で『鋭い、抜け目がない』という意味の「シャープ」の書き文字として、音楽記号の「♯(シャープ)」を当てています。
⑨♯な味付け味噌らあめん
「♯(シャープ)」は「元の音より高く」を表す音楽記号で、その後に続く単語が「味噌らあめん」。「ミ」「ソ」「ラ」と段々高くなっています。また、「ミ♯」が「ファ」になってしまう「ミ」が、敢えて「元の音」という事で一番最初に登場しています。
⑩味噌らあめん
「らあめん」は「アーメン」と掛かっています。
⑪鮭のべいべぇいくら叫んでも
ビートルズの楽曲『Twist & Shout』での歌い出しであり、ジョン・レノンのシャウトがよく光っている名フレーズ、「Shake it up, baby!」をもじっています。
⑫鮭のべいべぇいくら叫んでも
また、「どれだけ」という意味の「いくら」と、「鮭」の子である「いくら」が掛かっています。
⑬鮭のべいべぇいくら叫んでも あの子は孵らない
「どれだけ呼びかけても帰ってきてくれない」という意味で、「鮭」「いくら」と並べて「(卵から)孵らない」が掛かっています。
いかがでしょうか。実にこれだけの言葉遊びが平然と羅列しているのです。本当に末恐ろしい。
しかし一番恐ろしいのは、これらの一見「ただの言葉遊びの羅列」が、ちゃんと意味を持っている、という事です。
ここでもう一度、この詞を載せておきます。
坊主が屏風に上手に頬ずり ♭入ったファミレスで
ばれんたいんでい暴れたいんでい 切り捨て御免なちゃい
酔いどれ良い奴隷養老霊火 ♯な味付け味噌らあめん
鮭のべいべぇいくら叫んでも あの子は孵らない
この詞は裏では、聖バレンタイン氏が処刑に至るまでが緻密に描かれています。
まず下記に、簡単に聖バレンタイン氏の歴史を纏めたので見てください。
当時の皇帝「みんな、戦争行ってきて!」
みんな「えーでも家族や恋人と一緒にいたいしなー」
皇帝「そんなこと言うんだったらしょうがない、『結婚禁止令』出すわ。これでみんな戦争行ってくれるっしょ!」
聖バレンタイン「それは流石にかわいそうだわ、僕、キリスト教の司祭だしみんなの為に内緒で結婚式挙げてあげよっと」
皇帝「おーいバレバレだぞ~!」
こうして聖バレンタイン氏は投獄、処刑されてしまいました。
当然、みんなはこれを悲しみましたとさ。
これを踏まえて、詞を解釈してみます。
①坊主が屏風に上手に頬ずり ♭入ったファミレスで
坊主(=司祭)はみんながファミレス(=家族を失っている)で♭入っている(気が滅入っている)ので屏風(=家にあるもの=家庭)に上手に頬ずり(=バレないように擦り合わせて結婚させる)してました。
②ばれんたいんでい暴れたいんでい 切り捨て御免なちゃい
でも皇帝はばれんたいんでい(=聖バレンタイン氏)に暴れたいんでい(戦争がしたい)といって、キリスト教徒である彼を切り捨て(=処刑)します。
③酔いどれ良い奴隷養老霊火 ♯な味付け味噌らあめん
良い奴隷(=結婚させてもらった兵士)たちは養老(=聖バレンタイン氏を労り)、霊火(=死んでもなお思い馳せ)、♯(=前向き)に彼が戻ってきてくれることをらあめん(=アーメン)と祈っています。
④鮭のべいべぇいくら叫んでも あの子は孵らない
しかし、いくら叫んでも(=祈っても)聖バレンタイン氏は孵らない(=帰らない)。
と、こういう小ネタが並んでいるんですね。
高々四行の詞でこの密度ですよ。本当に凄まじい。
是非、聴いてください。爪先だけではなく、心まで痺れます。
オノマトペテン師/初音ミク
http://www.nicovideo.jp/watch/sm32787490
おあとがよろしいようで。
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