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スタートアップに学ぶ建設DX、AI技術  【燈 x 木内建設】#1 社内DX研修

地方建設会社とスタートアップ企業が手を取り合い、建設業界が抱える様々な課題解決に挑戦する。そんなON-SITE Xのミッションを象徴する取り組みとして、木内建設株式会社と燈株式会社の2社がタッグを組み、木内建設の東京本店にて社内研修を行いました。

この初回記事では、スタートアップが講師を務める建設会社の社内研修とは…??について、その研修模様をお伝えします!第二回の記事では、研修を企画した担当者にインタビューを行い、研修の舞台裏を深掘りする予定なので続編にもご期待ください!

燈株式会社とは?

『日本を照らす燈となる』を使命に掲げ、東京大学/松尾研究室発のスタートアップ企業として2021年2月に創業した燈株式会社。アカデミアで培ったAIを中心とする最先端技術を武器に、DXソリューション事業とAI SaaS事業の二つの事業を展開し、あらゆる産業のDX化に取り組んでいます。

建設会社とも様々なプロジェクトを組成し、『ON-SITE X』のコミュニティ活動にも立ち上げフェーズからご参画いただいています。代表取締役CEOの野呂さんは「Forbes JAPAN 30 Under 30 2022」を受賞し、事業拡大に伴いオフィス移転をするなど、急成長を遂げている大注目のスタートアップ企業です!

木内建設株式会社とは?

木内建設株式会社は静岡県静岡市に本社を構える、静岡県を代表する建設会社です。1921年(大正10年)の創業から事業拡大を続け、100年企業として地域社会の発展に貢献。『ON-SITE X』の立ち上げ企業の一社として、建設業界の変革に向けてスタートアップとの共創にも取り組まれています。

研修概要

研修は全二部構成で、第一部はマネジメント層向けにAIの基礎知識と建設業界への展開可能性についての講義、第二部は若手社員向けにハンズオンでデータ分析に取り組むワークショップ形式の講義を行いました。

研修開始直後の様子

第一部 マネジメント層向け研修スタート!

第一部ではマネジメント層を代表して各部門の部門長の方々、そして最前列には代表取締役の木内社長が座り、研修がスタートしました。

講師を務める燈株式会社の森氏

講師を務めるのは、燈株式会社DXソリューション事業部長の森雄人氏。 東京大学在学中では、日本最高峰のAI研究で知られる東京大学の松尾研究室に関わり、企業と共同のAIプロジェクトに従事。

東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程を修了した後、日本最大のユニコーン企業として知られるAIスタートアップ、株式会社Preferred NetworksでAIアルゴリズムの開発などを担当。そして現在、より現場に寄り添った課題に向き合いたいと考え燈株式会社にてDXソリューション事業に従事しています。

今日は「建設業におけるDXが今後どうなっていくのか」というテーマで話をします。今日の話を念頭に置き、業務効率化の視点を持つことで、皆さんの今後の活動に何らかの変化があるかもしれません。そのような気づきを提供できると本望です。

森氏の冒頭あいさつ

第一部 内容を少しだけご紹介!

講義は燈株式会社の紹介/燈の固有技術の紹介/AIの基本/建設業DXについてという順番で進みました。残念ながら全ての講義内容をお伝えすることはできませんが、内容を一部ピックアップしてご紹介します!

燈さんの特徴としては、業界に特化して、実際の現場を重視しながらサービス開発を進めている点。「Digital Billder」はまさに建設業特化!

世のAIの会社の多くは、自然言語処理、画像認識、動画分析などの技術に特化した形でサービスを展開しています。対して燈は、業界に特化している点が特徴です。お客様の実際のオペレーション、使っているツールを大事にしており、CADやBIMを含めて研究対象としています。ワークフローに組み込んで、実際に使える形で実装しなければ、課題は解決できないからです。そのなかでも、最上級に使いやすさを追求した形がAI SaaSです。その一つが『Digital Billder』で、アカウントがあればすぐに使えるようにしています。

講義では、燈さんが強みとするデジタルツイン技術、BIM自動作成技術、情報抽出技術などの紹介もあり、建設業に従事する参加者にとっては興味津々。

AIの基礎では、AI / 機械学習 / ディープラーニングの位置づけや、分類や回帰といった基礎知識、さらにはディープラーニングをベースとした技術の発展として、画像処理や自然言語処理の話題にも触れました。その中でも印象的だったのは、AIを仕事に組み込むにあたっての考え方!

AIを仕事に組み込むにあたっては、「誤差を許容する」ことが重要だと考えます。簡単に言うと「ざっくりやってくれると楽になる仕事」は、AIに任せやすいでしょう。例えば、協力業者さんからの請求書を工事ごとに自動で分類するような業務です。一部でも仕分けをしてくれると人間は楽になります。自信がないものは「自信がない」と返すように設計すれば、それだけを人間が仕分ければいいので、トータルの業務量は減少します。

アルゴリズムを開発した上で、精度を100%にするためには人間がどう関わればいいか。つまり、誤差の部分に人間がどう関わるべきかを考える、という視点を加えることが重要です。

AIの業務適用に関する森氏のメッセージ

そしてAI技術をどのように建設業に応用し、課題と向き合っていくかについて、実例を交えながら森氏の熱のこもった講義が進みました。

DXとは、様々な定義がありますが、本質はデジタルの力を使ってレバレッジさせること、つまり事業開発・検証の時間を速めて、企業活動のスピードをアップするために行うものです。特に「重たい産業」にとっては、デジタルツインによる高速化がDXの鍵となるでしょう。

現在、建設業界は転換期にあります。DXによって、今まで当たり前だったことが合理化・時間短縮でき、建設業が抱える様々な課題 --課題、時間外労働の上限規制、高齢化に伴う技術者の大量離職問題、資材価格の高騰-- の解決にもつながっていくでしょう。

建設業界のDX化について(森氏)

第一部の最後は、燈さんが描く建設DXの未来図をもとに、参加者から「こんなことできないの?」という質問が飛び交い、時間を超過しつつも大盛況で終了しました。

第二部 若手向け研修スタート!

第一部が終わり、第二部に参加する若手メンバが続々と集まる会議室。20代~30代を中心に、リモート参加者も交えて研修スタート!

第二部の講師は、燈株式会社DXソリューション事業部 AI Engineerの北田敦也氏。なんと現在、東京大学大学院工学系研究科に在籍中の現役学生!東京大学松尾研究室で研究する傍ら、燈株式会社にて建設業界に特化したAIの社会実装に取り組んでいます。

燈株式会社の北田氏(右側)

第二部はデータ分析をテーマに、講習パートと演習パートを織り交ぜながら、Excelを使って若手社員に実際に手を動かしてもらう構成です。

さっそく北田氏の講義が始まりました

最初はこんなケースを想定しましょう。皆さんは、とあるメーカーの工場で働く新入社員です。ある日、上司から、こんなことを言われました。「工場で不良品が出てしまう原因を探りたい。工場内に設置したセンサーデータや曜日、場所など100種類のデータと1日ごとの不良品数のデータを渡すので、不良品が生じる確率を推定するモデルを作ってくれないか」

この場合、あなたなら最初に何をしますか?

北田氏から若手メンバーへの問いかけ

いきなりの問いかけに戸惑う若手参加者。実際のケースを想定したお題をもとに、北田氏が的確な解説を加えることで、データ分析についての理解がぐっと深まります。

このような状況では、いきなりAIモデルを作るのではなく、大量のデータから知見を発掘することが重要です。これをデータサイエンスの言葉では、探索的データ分析(EDA)と呼びます。まずはデータを分析して不良品が発生する原因を特定し、そのあとに初めてモデルの構築にとりかかることで、現場のオペレーションの改善につなげるとよいでしょう。

データ分析の進め方(北田氏)

第二部 ハンズオンの演習パート!

第二部の演習パートでは、大量の数値が記載されたExcelファイルが参加者に配布され、次々と課題が出されました。

Excelのデータ操作を便利にするショートカットや簡単な関数から始まり、統計量を算出していかにデータの全体を掴むか、相関係数をどのように求めるか等の難しい課題にチャレンジしていきます。…むずかしい!

皆と相談しながらワイワイと進む演習パート

演習の合間には、多くの人が陥りやすい「データ分析の罠」の解説もあり、ランダム誤差やバイアス、前後即因果の誤謬など、具体例を示しながらデータ分析を深掘りする講義が進みます。

この後、若手向けにもAIの基礎知識として、AIの一種で中核を担う技術であるディープラーニングの仕組み、パソコンの性能の進化に伴う近年の劇的なディープラーニングの進化、なかでも自然言語処理能力が格段に向上し、直近では『ChatGPT』の登場が話題になっていることなどの話がありました。データ分析とAIの基礎を学ぶ充実した内容の研修でした。

-- 以上が、燈 x 木内建設による木内建設社内研修の講義模様でした!次回#2の記事では、今回の研修に至った背景や狙い、研修の成果について担当者にインタビューしましたので、ぜひご覧ください!

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