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遠い昔の自分と今の自分が融合して地続きになってゆく。

ずつと遠い昔の自分と今の自分が融合して地續きになつてゆく。
前の人生の自分が今の自分に溶け込んで行く。恐らく皆は生まれる前にちやんと融合して此の世界に出て來るのだらうけど、僕は自分が分斷されると云ふ罰を背負つて生まれて來たらしく、ずつとバラバラであつた。
けれども閻魔樣や淺草寺の佛樣に依れば、僕はもう充分に罪を償って終はつてゐるらしい。とある僧に依れば拂ひ終はつたのは去年か今年の話と云ふ事だ。
「もう惡いことをするんぢゃあないよ」
と閻魔樣にも言はれたつけ。赤い御顔でにこにこ笑つて、僕のお尻をぺんぺん叩いて、溜まつた小さな業を祓ってくださつた。

子供の頃から家に居ても「歸りたい」と思つて居たのは、生まれる前の自分に歸りたいといふことだつたのだ。
前の人生を思ひ出した僕はさういふことなんだとやっと氣が付いた。
あの頃に戾りたい。あの續きから人生を始めたい。
その想ひだけが强烈に殘つてゐて、僕はずつと焦つてゐた。
來る筈だつたあの春を。夏を。その次の冬も。
もう一度、その續きを生きたかつた。

歸りたい先を思ひ出せたと云ふことは、行き先が分かつたも同じだ。
實際の所、過去には戾れないけれど、何をして何處へ行けば良いのか明確な指針が出來た。

僕は過去の自分と溶け合つてひとつに成る。

これからはきつと僕は僕の人生を步んで行けるのだらう。迷はずに。

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