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せんちめんたる・なんせんす

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嘘吐きは夜の海を散歩する。嘘吐きの僕の日常のことです。
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#小説家

前の人生を思い出したと云う友人の話(1)

「僕の產まれる前の人生は、明治生まれの男で閒違ひないやうだ」 さう言つた幾野君は手に持つた白いマグカップに口を付けた。 「小さな弟たちが居たり姉が居たりとそんな夢を見る事がある。皆んな着物を着て居たよ」 「突然呼び出したと思つたらそんな話かい?」 僕は首を些か右に傾けて、彼に向かつて歎息とも笑ひともつかない聲を溢す。 「否、それだけでは無いんだけどね。ここ最近、生まれてこの方體驗した筈が無い事を思ひ出し續けてしまひ、氣持ちを持て餘して居るんだ。けれど此樣な事を誰彼構はず話した

僕は嘘吐き。

物心ついた時から自立して一人で稼がなくてはという意識が強く、それならば好きなことで生計を立てて人生を切り開いて行くべきだという意思が強い、僕はそんな子供だった。 僕が幼稚園の卒園文集に書いた将来の夢は「画家・漫画家」である。 当時の僕は絵を描くことが大好きだった。漫画もずっと書いて居た。 そんな僕だから小説を書くことが好きになったら「小説家」になってお金を稼いで自立するべきだと考えるようになった。この夢を抱いたのは11歳か12歳の頃だった。 ・大人になれば一人前に稼いで自