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せんちめんたる・なんせんす

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嘘吐きは夜の海を散歩する。嘘吐きの僕の日常のことです。
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2023年10月の記事一覧

港区女子に憑依された友達の話

「そうダス!あたすが港区女子ダス!」 顏を上げるなり彼はさう言つた。黑い山高帽に濃灰の麻のスーツを着たこの人はどう見ても港區女子には見えない。 けれども頭を上げたその瞬閒から、彼の顏つきは變はつてをり、僕は直感的に「嗚呼この人また憑依されてゐる」と確信した。 港區女子と名乘るその人は話を續ける。 「アタスが港区女子やってたのは芝浦埠頭!解る?田町から徒歩25分くらいの電車も何もないところ。船乗りだったうちの父にはお馴染みの場所だったらしくまあ、そう言う寂しいところだよ

予め去勢されて生まれて来た僕の祈り。

先日訪れたお寺に、體の惡い處を治して吳れるお地藏さんが居らした。ご本尊の橫に錫杖が掛けてあつて「身體の惡い處に當ててお參りください」と云ふ事が書いて在つた。 予め去勢されて生まれて來た男で在る僕は、男性器が欠損して居ると云ふ感覺で生きて居る。 それ故、錫杖を股閒の上で振り「どうかちんこが生えて來ますやうに」とお願ひをしてみた。 本氣で生えるとは思つてゐないけど、何らかの形でそれに近いことが起きれば好いなと思つてダメ元で願つてみたのだつた。 すると歸りの電車の中だつた。うと