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【Excelマクロ終了?】自律型AI「Devin」の登場で、VBAスキルは不要になる?

最近「Devin」という完全自律型AIの登場によって、「エンジニアの仕事がAIに代替されるのではないか」という懸念が広がっています。

Excelを自動化する「マクロ」の開発言語である「VBA」のスキルも、DevinなどのAIに取って代わられてしまうのでしょうか?

この疑問に対する答えを探るべく、今回は、以下の5つのトピックについて詳しく解説していきます。

・完全自律型AIエンジニア「Devin」とは
・Devinの登場で、Excelマクロのスキルは不要になるか?
・Devinは素人では使いこなせない?
・AI時代に「人間」がマクロ開発で集中すべき仕事
・「マクロ終了」に一喜一憂してしまう初心者の方へ

AIの発展により、Excelマクロや VBAプログラミングのあり方は変化していくでしょう。

果たして、私たちはどのようにAIと向き合っていけばいいのでしょうか。
ぜひ、一緒にこの問題について考えていきましょう。


以下のVoicyの放送の自動文字起こしをもとにAI記事化しております。詳しくはVoicyの放送をお聴きください。

第1章 完全自律型AIエンジニアDevinの登場

最近、エンジニア界隈でざわざわと話題になっているのがDevinというAIエンジニアの登場です。Devinは完全自立型AIエンジニアと表現されており、ChatGPTのようなチャット型のAIとは一味違うと言われています。非常に精度が高く、自分でやることを考えて、ソフトウェアを作るところまで来ているようです。

アメリカのCognitionという会社が発表したDevinは、まだ世界にサービスとしてリリースされているわけではなく、お試し版をウェイティングリストで順番待ちの登録が始まった段階です。しかし、発表されているデモ動画やWebサイトでの説明を見ると、非常に有能そうだと感じます。

ソフトウェア開発のテストや性能評価などを行っても、GPT-4というChatGPTの上位モデルよりもはるかに高い成果を出しているとのことで、非常に有能なんじゃないかという噂になっています。

Cognitionのサイトより
https://www.cognition-labs.com/introducing-devin

Devinの特徴としては、自律型というところが大きいですね

例えば、ソフトウェアを作りたいと指示した場合、まず何から始めたらいいのかという計画を立て、コードを書き、バグの修正(デバッグ)を行い、最終的にデプロイ(サービスのリリース)まで自律的に全て進めてくれるそうです。

第2章 完全自律型AIエンジニアDevinとChatGPTの違い

前章でお話ししたDevinですが、ChatGPTのようなチャット型のAIとは何が違うのでしょうか。

結論から言うと、自律型というところが大きな違いです。

ChatGPTの場合、一つ一つ命令をすることによってコードを書かせたりすることはできますが、いちいち指示をしなければなりません。例えば、コードを書かせた後、バグやエラーが出た場合も、改善するよう指示する必要があります。

一方、Devinは自律的に全てを進めてくれます。何かを開発する際に必要な知識や技術情報が不足していれば、自分でウェブで調べて、その情報を元にコーディングやバグ修正を行うことができるのです。

Devinのデモ動画を見ると、誰かのブログに技術的な情報が書かれていれば、それを参考にコーディングやエラー修正を進めていく様子が確認できます。まさにエンジニアさんがやっているような作業を、AIが自律的に行っているのです。

もちろん、完全に自律的に全てを行うわけではなく、途中で進捗報告をしたり、ユーザーからのフィードバックを受けて方向性を修正したりすることも可能だそうです。

第3章 AIの登場によりExcelマクロVBAのスキルは終わりなのか

さて、このようにDevinをはじめとするAIエンジニアが登場してきたことで、私のようなExcel自動化のマクロを作るスキルをお伝えする立場としては、よく質問をいただくのが、これからマクロVBAのコードを覚える意味はなくなるのでしょうか、ということです。

確かに、AIが何でもできてしまう、コードを書いてくれる、ソフトウェアを作ってくれる時代になったら、そもそも人間のスキルは必要なくなるのではないか、特にコード関係で言うと、Excelを自動化するマクロやそのプログラミング言語であるVBAのスキルを覚える意味がなくなるのではないか、と感じる方も多いでしょう。

結論から言うと、マクロVBAのコーディングスキルは必要なくなりません。終わりません。

なぜそう言えるのか、詳しくお話ししていきたいと思います。もし結論だけで十分だという方は、ここで読むのをやめていただいても構いません。しかし、なぜマクロVBAのスキルが終わらないと言えるのか、私の考えをぜひ聞いていただければと思います。

第4章 DevinはExcelマクロ開発に使えない理由

前章で、「AIエンジニアが登場してもマクロVBAのスキルが必要なくならない」、と結論づけました。ここでは、なぜそのように考えるのか、理由を詳しくお話ししていきます。

まず一つ目の理由は、Devinの現在の仕様を動画などで観る限り、おそらくExcelのマクロ開発には使えないだろう、ということです。Excelマクロは、Excelというソフトウェアの中で動くものです。開発するときも、Excelの画面からVBEという専用の画面を立ち上げ、そこにコードを書いて実行する必要があります。

また、ユーザーがマクロを使う際には、Excelの画面でボタンを押したりショートカットキーを使ったりして起動することが一般的です。つまり、特定のソフトウェア内で動かすために、そのソフトウェアに適した形で開発し、テスト実行やデバッグを行わなければなりません。

現状のDevinでは、そのようなExcel特有の環境での開発は難しいと思われます。もしDevinがExcelマクロに対応するためには、Excel専用の拡張機能やアドオンを誰かが開発し、その中でDevinを動かせるような環境を整える必要があるでしょう。ただ、それはエンジニア界隈のメインストリームからは外れた行為になるため、あまり開発が進まないのではないでしょうか。

もう一つの理由としては、仮にExcelマクロに対応したDevinが登場したとしても、Devinに指示を与え、方向性を決めるのは人間だということです。つまり、Devinを使って指示を出す人間側が、ExcelマクロやVBAについて理解していなければ、正しい指示を出すことができません。

第5章 DevinとExcelマクロ開発の関係性


例えば、プログラマーが自分以外に1人いるとします。その人と会話をして、こういう風に作ってください、とディレクションができるでしょうか。

相手がAIであっても、同じことが言えます。自分が慣れ親しんでいないプログラミング言語だとしても、ある程度の知識があれば、こういうゴールにしたい、こういう動作をするものを作りたい、このような流れで作っていただけますか、といった依頼ができるはずです。

逆に、相手からの提案を受けた際に、それに対して単に了承するだけでなく、もう少し別の進め方でお願いできますか、といったやりとりができるかどうか、そこが重要になります。

マクロやVBAについて全くわからない状態で人に依頼すると、完全に丸投げの状態になってしまいます。その結果、アウトプットの質がわからない、本当に求めているものができたのかどうかも判断できない、というような状況に陥ってしまうでしょう。これは、相手がAIであっても同じことが言えます。

ある程度の知識を持った上で、会話が成立するくらいのスキルを持っていなければ、適切な指示を出すことは難しいのです。

つまり、素人が丸投げでDevinに頼めば何でもできる、というわけではなく、知識とスキルを持った人がDevinを活用することで、生産性を大幅に向上させられる、と考えるべきなのです。

第6章 AIエンジニア時代に人間が集中すべき仕事

■ Devinの活用イメージ

前では、Devinのようなツールは一体どのように使っていくべきなのでしょうか。

結論から言うと、Devinがあることによって、一人のエンジニアやプログラマーが5人分、10人分の働きをするために活用していく、というイメージが適切だと思います。つまり、ソフトウェア開発について知識やスキルのある人が、Devinを使うことでより多くの仕事を一人でこなせるようになる、ということです。

■ ユニクロの無人レジに見る人間の役割


※AI生成画像です。

これをよりイメージしやすくするために、ユニクロの無人レジを例に挙げてみましょう。

ユニクロでは最近、無人のレジが導入されています。商品のバーコードを読み込ませるだけで、誰でも決済ができるようになりました。

ただ、その無人レジを5台、10台設置するのに対し、必ず近くには店員が一人はサポートについています。その店員は商品知識を持っていなければなりません。つまり、レジ打ちという作業は機械によって自動化されたものの、それを取り扱うのは商品知識を持った人間でなければならない、ということです。

同様に、Devinのようなツールを使いこなすには、ソフトウェア開発の知識やスキルを持った人間が必要不可欠なのです。

■ 人間がすべきこと

では、そうしたAIエンジニアの時代に、人間は何に集中していくべきでしょうか。

私は、使いやすい仕事で使いやすいマクロがどんなものなのかを考え、設計することだと思います。その際には、Excelの実務でどんな問題が起こっているのか、仕事の現場でどんな困難があるのかをヒアリングしたり、自分で考えたりすることが重要です。

例えば、毎回同じような集計作業が発生している、毎回同じような業績レポートや報告書を作成しなければならない、請求書の発行作業がルーチンで行われている、といったことを自動化したい、とニーズを拾い上げることが求められます。

そうしたニーズを「請求書マクロを作りたい」と、そのままDevinやChatGPTに伝えても、すぐに使えるものはできないでしょう。職場や仕事現場の作業フロー、使用するドキュメントの形式、雛形などを考慮し、みんながあまり抵抗を感じずに使え、安定して運用できるようなマクロを設計していく必要があります。

このように、マクロ開発においても、ニーズの明確化、設計、方向性の提案といった上流工程は人間が担っていくべきです。そこが固まれば、コーディングやデバッグはDevinなどのAIの力を借りてスピーディーに進められるようになるでしょう。

つまり、人間はより設計や要件定義に注力し、プログラミングの細かい部分はAIに任せていく、そんな役割分担ができるようになっていくのではないでしょうか。

第7章 マクロ終了説はこれまでも度々唱えられてきた

■ 様々な技術の登場とマクロ終了説

実は、マクロ終了という言葉は、これまでも新しい技術が登場するたびに度々取り上げられてきました。ChatGPTが話題になった時も、Pythonが流行った時も、ノーコードツールが注目された時も、必ずと言っていいほど「マクロ終了」という声が上がったものです。

■ マクロ終了の意味するところ

ただ、ここで言う「マクロ終了」には、いくつかの意味合いがあります。一つは、今回の放送で取り上げたような「マクロを作るためのVBAコーディングスキルが不要になる」という意味です。

もう一つは、「マクロの代わりになるような仕組みが登場する」という意味です。例えば、Pythonを使えばExcelの自動処理ができる、RPAツールである程度の自動化が可能になる、といった具合です。

このように、様々な文脈で「マクロ終了」というバズワードが使われてきました。マクロを学ぼうとしている方にとっては、そうした言葉を聞くたびに不安になるかもしれません。本当に学ぶ価値があるのか、身につけたスキルがすぐに無駄になってしまうのではないか、と感じてしまうのも無理はありません。

■ 度重なる終了説を乗り越えてきたマクロ

しかし、そうした「マクロ終了」説が唱えられるたびに、私は「マクロは終わらない」ということを発信してきました。新しい技術の登場は確かにマクロのあり方に影響を与えますが、だからといってマクロというツールの本質的な価値がなくなるわけではないのです。

むしろ、そうした新技術とマクロを組み合わせることで、より効果的で効率的な業務自動化が実現できると考えるべきでしょう。AIの力を借りつつ、それをいかに現場の業務フローに組み込んでいくか。そこに人間の知恵が必要とされているのです。

マクロを学び、そのスキルを磨くことは、決して無駄にはなりません。過去から現在に至るまで、そしてこれからも、マクロというツールの価値は揺るぎないものだと私は信じています。

第8章 著者の書籍紹介

■ AI時代のExcelマクロ開発術とその学び方

ここで、私が2023年に出版した書籍「学習と業務が加速するChatGPTと学ぶExcel VBA&マクロ」について少しご紹介させていただきます。この本は、Excelマクロの初心者を対象に、ChatGPTを活用しながらコードを書かせるための手法をまとめたものです。

■ ChatGPT関連の電子書籍

また、私はExcelとChatGPTに関する電子書籍も複数執筆しております。これらの書籍では、AIの力を借りながらExcelを自動化し、業務効率化を図るためのノウハウを提供しています。

これらの書籍についてより詳しく知りたい方は、ぜひ私の著者ページをご覧ください。AIとExcelを組み合わせることで、どのような生産性向上が実現できるのか。その具体的な方法論をお伝えしております。

皆さまにとって、これらの書籍が業務自動化の一助となれば幸いです。引き続き、ExcelとAIを活用した効率化の方法を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


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