トロット②【私が愛する김홍남(キムホンナム)】

こんにちは。トロットやポンチャック、私が愛する音楽について今日も語っていきたいと思います。

最近、私は注目しているアーティストが居ます。
それは、この2024年に突如現れた、期待の新星ポンチャッカー、김홍남(キムホンナム)!!!!
ソンガインが現れ、イムヨンウンが現れ、トロットは今韓国国内で熱狂的なブームになっています。でも! ポンチャックはいまいち関心を向けられない……なんとももどかしいこの時代に、煌々と光を放つ김홍남(キムホンナム)!
まずは彼が何者か?というところから話をしたいと思います。

김홍남(キムホンナム)はポンチャック歌手であり……そして現在も活動を続けるコメディアンです。
分かりづらいので詳しく説明すると、김경욱(キムギョンウク)というコメディアンが演じる、いくつかのキャラクターのうちの一人が、ポンチャック歌手の김홍남(キムホンナム)……という設定なのです。
だから彼は歌手として活動をしてきたというよりは、コメディアンとして、ユーモアを求めてポンチャック歌手を演じている、かなり異色の歌手と呼べるでしょう。
(ちなみに韓国で人気のある「다나카 유키오(田中雪男)、日本人ホストの田中」も実はこのコメディアンの演じるキャラクターの一人です)

『コメディアンのネタにポンチャック歌手』と言うと、ポンチャックを少し知っている人であれば誰もが思い当たる人物が居るのではないでしょうか。そうです、実際に김홍남(キムホンナム)のスタイルを見ると明らかなように、1990年代頃にブームを巻き起こした、あの李博士(イパクサ)のパロディを彼はしているのです。衣装から歌唱法に至るまで、その再現率は凄まじいもので、流行りのK-POPやJ-POPを無理やりポンチャックに置き換えるという編曲のこだわりまで一貫しています。
当時も当時で評価された李博士のスタイルでしたが、SNSのあるこの時代にこそ更に評価を受けるのではないか?と筆者は김홍남(キムホンナム)の凄まじい再生回数を観察しながら感じています。

なんと더트롯쇼(ザ・トロット・ショー)というトロット番組にも黄色い歓声を浴びながら出演している我らが김홍남(キムホンナム)……。

私はこの김홍남(キムホンナム)というアーティストがとても好きです。K-POP&J-POPにほとんど関心のない私が、原曲をわざわざ聞きにいこうという気持ちになるくらい、一つの作品として非常に完成度も高ければ原曲の壊し方も大変上手い(誉め言葉)。また病みつきになる中毒性がある。これは実際に読まれている方も試して欲しいんですけど、料理中にキムホンナムのメドレーを流しながら作業をしてみてください。なんか捗りませんか? 単純作業をしている時にこの感じのポンチャックメドレーがあると何分でも何時間でも作業出来ちゃう気がするんですよね。そういう、ポンチャックの性質として基本的なところを抑えているところも凄く好きなんです。

先程、トロットブームに対してポンチャックは、いまいち盛り上がらない……と書いたものの、今までまるで無かったわけではないのです。ただ、それらの「ポンチャック」という売り出し方をしていた曲達が、果たして本当に「ポンチャックそのもの」であったか?というと非常に難しい部分がありました。多くの場合「ポンチャックの要素は持っている楽曲」であったり、「ポンチャックをサンプリングした楽曲」であったんです。もちろん、私はそうした楽曲たちも凄く好きでした。事実、凄くかっこいい。新しいポンチャックの表現だなあ、と新鮮味も感じました。
けれど「ポンチャック」として売り出すのはやや違和感があったりもしたんです。上手い例えではないかもしれないけど、私はトマトが食べたいのに、トマトソースやケチャップを出されている感覚、というか……。
けれどこの김홍남(キムホンナム)は違う。圧倒的に昔ながら、そのまんまのポンチャックを力強く「ポンチャック」として売ってる。その姿勢に信頼を持たずにはいられなくて、だからこそファンになってしまいました。

ただここで、ポンチャックを愛するリスナーとして少し考えたいな、と思うこともあります。
今までポンチャック歌手として、日本である程度の知名度を持っている歌手というと李博士(イパクサ)・정희라(チョンヒラ)など……なんというか、キャラクター性が濃い歌手が想起されます。また今回の김홍남(キムホンナム)はまだそこまで日本に影響を及ぼしていないものの、李博士を徹底的にパロディしているという点でやっぱりキャラクターが濃い歌手と言えます(元々コメディアンだし)。
私には韓国の、ポンチャックリスナーの生の声は残念ながら聞くことが出来ません。しかし少なくとも日本のポンチャックリスナーの中には楽曲としての評価、音楽性への評価をするリスナーも存在する一方で、キワモノ的なネタとしてしか評価しないリスナーも一定数いるんじゃないかな……と体感として感じる出来事は多かったりするのです(事実、李博士のナムウィキの「日本での評価」項目は過去版を遡ると、韓国文化を愛する日本人としては非常に複雑な気持ちになることがたくさん書いてあったり)。
もちろんその楽しみ方が誤ったこと、全く正しくないことだとも思わないのですが(私もチョンヒラの19禁ポンチャックとか聞くと爆笑するし)、ジャンルの聴き方として、もっと多面的な見方があってもいいんじゃないかなとか、あれこれもやもや思いつつ……。例えば李博士(イパクサ)の編曲を担当したキムスイルは、技巧的にも凄まじいことをやってるんだよと、分かりづらいかもしれないけど知ってほしいなあとか、そんなことを考えたりするのです。

ポンチャックという名で売りながらポンチャックでないものが出たり、ポンチャックを売りながらそのネタ性ばかりが評価されたり。
じゃあ熱心なポンチャックのコア層以外のリスナーに、「ポンチャック」とは本質的に何を求められているんだろう?と私はたまに、うーんと考え込んでしまいます。

そして! だからこそ、そういう意味でも私は김홍남(キムホンナム)が大変興味深い存在に思えてならないのです!! 彼がどのように大衆に受け入れられるか、これからどのような道を辿るか。それは「ポンチャック」を求める人々の、心の動きの一つとして関心を持たずにはいられないからです。

長々と書いてきましたが、ともかく、K-POPとK-PON(ponchakではなくppongjjakなので正確には表記が違うけど)を繋ぐ架け橋として、彼はとても貴重なアーティストだと思います。同じ国の音楽ジャンルなのに、ここまで交わらなかったことが不思議ですね。出発点こそ李博士のパロディという位置付けであるものの、彼自身が一流のコメディアンであること、今という時代の流れ、確かな編曲技術、K-POPへの積極的なアプローチ、そしてSNS。今までになかった多くの要素は、김홍남(キムホンナム)という新星ポンチャッカーをどこまでもスターにするような、そんな可能性を秘めていると言えるでしょう(これは筆者の願望も含めて)。
김홍남(キムホンナム)というアーティストが、更にはポンチャックが、もっともっと人々に愛されるように願いながら、今日も私は彼の音楽を聞いています。今日の夕食はキムチチゲにしようかな、やっぱり料理中に聞くのが最高なんですよ!

……김홍남(キムホンナム)の「Standing Next to You」の前奏が李博士(イパクサ)の「カンウォンドアリラン」の入りに似ているように聞こえるのは私だけですか? リスペクトだったら嬉しい。

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